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名和高司「日本型CSV確立を目指して」

アップルやグーグルなど欧米優良企業が、脱「短期利益&株主至上」志向鮮明…日本企業と逆

文=名和高司/一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授
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 例年、6月後半は株主総会の季節だ。私が社外取締役をしている4社中3社(デンソー、味の素、NECキャピタルソリューション)も、この時期に株主総会が集中するため、襟を正す思いが続いた(なおもう1社のファーストリテイリングの株主総会は11月)。特に日本版コーポレートガバナンス導入の2年目にあたる今年は、「社外取締役からみて、当社のガバナンスは正しく機能しているか」といった質問があるのではないかと壇上で身構えていたが、幸か不幸か空振りに終わってしまった。

 それにしても、社外取締役への注目度は、ここのところうなぎ上りだ。特に社外取締役が実力経営者のやや強引な意思決定に待ったをかけたり、逆に立派な社外取締役がいながら企業ぐるみの不正事件を防げなかった事案などが、社外取締役への期待と不満を煽り立てている。このような事態にこそ、社外取締役が監督機能を発揮することが望まれているのは確かだ。

 しかし、ブレーキを踏むことだけが社外取締役の本来の役割ではない。そもそも日本企業の多くは、この「失われた30年間」に、リスクを避けて縮小均衡の負のスパイラルに陥ってしまったのではなかったのか。この「不作為のリスク」に目を光らせ、「計算されたリスク」を取るように経営陣の背中を押すことも必要になる。なぜなら、企業価値を高める意思決定を促すことこそが、社外取締役の究極の役割だからである。

 残念ながら日本の社外取締役には、そのような意味で企業価値を向上させる知恵をもった人材は、数少ないのが実情である。そもそも学者に、そういった高度な経営センスは期待できない。また企業のトップ経験者には、実務センスはあっても、先を読んだり、新しい事業モデルを構想できる人材はまれだ。そのような力があれば、日本企業がここまで低迷することはなかっただろう。日本の実情を見る限り、社外取締役に救世主としての期待を寄せるのは、はなはだ筋違いといわざるを得ない。

誤ったROE信奉

 企業価値そのものについても、大きな勘違いがまかり通っている。その代表例がROE(自己資本利益率)信奉だ。企業は株主のものだから、株主に対してのリターンを最大化することが企業経営者の最大の責務だという理屈である。2014年に経済産業省が出したいわゆる「伊藤レポート」が、グローバルな投資家と対話する際の最低ラインとしてROE8%を目指すべきだと提唱したことは、よく知られている。

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