アップルやグーグルなど欧米優良企業が、脱「短期利益&株主至上」志向鮮明…日本企業と逆
しかも、単に株主にとってのリターンだけに目を奪われていては、真の企業価値を高めることはできない。企業は顧客、従業員、サプライヤー、コミュニティ、そして社会全体にとって価値を創造することなくして、存在し、成長することはできない。株主への価値還元は、それら多様なステークホールダーに対する価値創造の結果でしかないのだ。
ユニリーバやノボノルディスクファーマなどの欧州の超優良企業は、この20年近く「トリプルボトムライン」を経営の主軸に据えている。企業は経済価値のみならず、環境価値、社会価値の向上に配慮すべきとする理念である。また、最近アメリカでも、米ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授が提唱する「CSV経営」(Creating Shared Value:共通価値の創造)が注目されている。企業が競争に勝ち抜き、成長し続けるためには、経済価値と社会価値の双方を高めることが必要だというのである。
日本が「欧米型株主至上主義ガバナンス」の導入に躍起になっている間に、当の欧米の先進企業は、あらゆるステークホールダーを見据えた21世紀型のガバナンスの確立に踏み出している。このままだと、日本企業はまたしても世界の潮流から取り残されかねない。
日本型CSV
しかし、思い返せば日本は300年以上前から、近江商人の「三方よし」という心得を継承してきた。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という理念である。また、日本資本主義の父・渋澤栄一は、「論語と算盤」の両立を説き続けていた。
日本企業は伝統的に、幅広く社会全体に配慮した経営を心掛けていたはずである。ここにきて、周回遅れのガバナンスモデルに翻弄されるのではなく、この日本の伝統的な企業理念こそ、世界に誇り、世界をリードできる経営モデルであることに、日本の経営者は早く気づき、自信と使命感を取り戻すべきである。
もちろん、「社会に貢献しているから、低利益、低成長でもいいではないか」ということにはならない。利益が出なければ、再投資して、より大きな社会価値を生むという好循環は生まれない。また成長しない企業は、株主のみならず、従業員やサプライヤー、コミュニティなどのステークホールダーにも成長機会が提供できない。
日本企業は、社会価値を高めつつ、経済価値も飛躍的に増大させることに、もっと知恵を絞るべきである。そうすることによって、昨今の株主至上主義型ガバナンス論を超え、さらに欧米型のCSV経営をも凌駕する最先端の経営モデルを、確立することができるはずだ。