6月、ソフトバンクグループ(G)では孫正義社長の後継者と目されていたニケシュ・アローラ氏が退任し、もうすぐ60歳になる孫氏が社長を続投すると発表されました。
筆者は、2014年度に165億円、15年度に80億円の高額報酬でアローラ氏が招聘されたことについて「相当な高額報酬だ」と驚きましたが、そのアローラ氏がたった2年で退任することに、より驚かされました。
「いったい、ソフトバンクGでは何が起きているのだろう」と思った筆者は、ソフトバンクGの会計情報を分析してみることにしました。結論からいいますと、現在の同社は大変な経営危機に直面しています。以下、これについて解説します。
有利子負債の増加の著しさ
まず紹介したいのは、ソフトバンクGの有利子負債の水準です。ここ数年のうちに、同社の有利子負債は激増しています。
4年前は2兆6899億円だった有利子負債が漸増し、15年度末にはおよそ12兆円にも上りました。この4年度ほどの間に4倍以上にもなっています。これは、主として13年度におけるM&A(合併・買収)の結果生じたものです。13年度にソフトバンクGは次の大型買収を行っていました。
・米国携帯電話事業者スプリントを子会社化
・フィンランドのゲーム会社スーパーセルを子会社化
・米国携帯端末卸売会社ブライトスターを子会社化
このなかでもっとも大きな買収劇が、スプリントの買収でした。スプリントは米国では3位の携帯電話事業者でしたが、ソフトバンクGは約2兆円の資金を投入し、これを子会社化しました。このとき、ソフトバンクGはこれを長期借入金による資金調達で賄うとともに、スプリントが有していた有利子負債(約330億ドル)を引き受けたことで、一挙にグループ全体の有利子負債が膨らんだのでした。
ところで、下記の表とグラフは、近年度のソフトバンクのキャッシュ・フロー(CF)のデータを掲載したものですが、これをみると最近の同社には3つの深刻な問題が生じていることがわかります。