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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

ソフトバンク、深刻な経営危機的状況…巨額現金流出超過、大型買収が失敗

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

 それどころか、足りない資金を補うために、追加の借入が必要にさえなってしまいます。

 ソフトバンクGの場合、このような状況が4年も続いています。これをいかに克服するかが大きな課題です。

問題3:13年度以降の投資CFのマイナス幅が大幅に拡大している

 さらにもうひとつ深刻な問題は、13年度の大型買収が行われたあと、投資CFのマイナス金額が大きくなっていることです。その内容を詳しくみると、下記の表のようになっています。

ソフトバンク、深刻な経営危機的状況…巨額現金流出超過、大型買収が失敗の画像4

 この表は、13~15年度におけるソフトバンクGのCF計算書のうち、投資CFと財務CFの詳細を示したものです。これをみると、投資CFのなかで「有形固定資産及び無形資産の取得による支出」が、3期連続で1兆円を軽く超えてしまっていることがわかります。これは各々の年度の営業CFを軽く上回る水準です。

 ちなみに、12年度の投資CFはマイナス8741億円でしたが、そのうち「有形固定資産及び無形資産の取得による支出」は5893億円でした。つまり、13年度のスプリントの買収では、単に投資額が大きかっただけではなく、そのあとにおいても重い投資負担が乗っかり、資金負担がますます重くなってしまったのです。
 

スプリントの財務状況

 ここで、近年におけるスプリントの主要財務状況を確認してみると、次の表のとおりです。

ソフトバンク、深刻な経営危機的状況…巨額現金流出超過、大型買収が失敗の画像5

 これによると、損益は赤字続きであり、事業活動のCFも11年度以降はマイナスになっており、さらに有利子負債が増加傾向にあります。なぜかスプリントではソフトバンクGによって買収された前後より、財務状況が悪化しています。

まとめ

 ソフトバンクGは、創業者である孫氏の強いリーダーシップのもとに急成長してきました。スプリントの大型買収にあたっても孫氏なりの深謀遠慮があるのでしょうが、インターネットビジネスに暗い筆者などは、財務データを頼りにして企業を分析するほかはありません。その分析によれば、スプリントの買収は大失敗にしかみえないのです。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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