「白戸家」シリーズでおなじみのソフトバンク(旧ソフトバンクモバイル)のCM。CM総合研究所が発表する「銘柄別CM好感度ランキング」で8年連続1位を記録した人気CMである。
人語を話す白い犬の「お父さん(白戸次郎)」を中心に、独特なキャラクターが登場する同CMは、そのユニークな設定などが話題を呼んだ。しかし、昨年12月に発表された15年度の同ランキングで、ソフトバンクはKDDI(au)に首位を奪われて2位に陥落した。
さらに、ライバル企業に9連覇を阻止されただけでなく、小泉今日子を「元セーラームーン役」で起用するなど、名作アニメの主人公のその後を実写化した新CMに対して、視聴者から批判が殺到してしまった。
かつて好感度ナンバーワンを誇ったソフトバンクのCMは、なぜつまらなくなってしまったのだろうか。
逆効果に終わった、ソフトバンクの「KDDI挑発CM」
そもそも、ソフトバンクCMの迷走は昨年5月に放送された「岡山編」から始まっていた。これは、白戸家の父と母が桃太郎ゆかりの地を巡っていると、大きな桃が上流から流れてくるという内容だったが、この設定はKDDIのCM「三太郎」シリーズと非常に似ていたのである。大手広告代理店関係者が語る。
「昨年1月に放送を開始し、現在もオンエアされているKDDIの『三太郎』シリーズは、桃太郎と浦島太郎、金太郎の“三太郎”を中心に、日本人になじみの深い昔話の登場人物たちが夫婦や友達になるといったものです。その目新しさが話題を呼び、高い評価を受けました。しかし、そこにライバルのソフトバンクが白戸家の『岡山編』で桃太郎を登場させたため、多くの視聴者は『三太郎』のイメージを重ねてしまったのです」
しかも、ソフトバンクの「岡山編」では、桃はおばあさんに拾われずに鬼ヶ島に流れ着いてしまい、ラストシーンでは鬼が桃に刃物を振りかざしている。これについて、インターネット上では「KDDIを挑発する意図はわかるが、日本の昔話をバカにされた気がする」「ラストの後味が悪すぎる」「ライバル意識がむき出しでいいのでは?」など、賛否両論が巻き起こった。
「ソフトバンク側にどういう意図があったのかはわかりませんが、このオチを不快に感じた視聴者が多かったのは事実です。海外の場合、ライバル会社を挑発するCMをつくることもありますが、日本ではあまり例がないため拒否反応が起きたという背景もあります。CMに対する反応のなかには『ソフトバンクのケータイを解約したくなった』という声もあり、広告効果という面でも疑問が残ります」(同)