相模鉄道の車掌の仕事を紹介する動画が、本来の意図とは別の意味で注目を浴びている。動画は働く人に密着して、働き方やライフスタイルを描き出す職業紹介のYouTubeチャンネル。そのなかで相鉄の女性車掌の働く様子が紹介されると、コメント欄は大荒れ状態になった。書き込まれたコメントを見ると、「1カ月で249時間残業」「60連勤」「6カ月以上連続で残業100時間超え」など、内部の関係者らしき告発が散見される。多くの鉄道会社は慢性的に人手不足に陥っているとの指摘もあるが、相鉄に実情はどうなのか。直接問い合わせてみたが、回答は拒否された。
YouTubeチャンネルの「しごとリーチ!」は、社会で働く人に1日密着し、多様な働き方やライフスタイルを映し出す、職業紹介をメインとした密着ドキュメンタリー番組。「ビズリーチ」「ヤンマー」「UCC」「マイクロソフト」「ファンケル」といった名の知れた企業の社員から、マジシャン、書道家、アーティストのマネージャーなど普段の仕事ぶりが見えにくい職業の方々まで、幅広く密着して働き方やオフタイムの過ごし方を紹介している。
そのなかで11月13日に公開された動画「仕事も子育ても全力!相鉄線 女性指導車掌の1日」では、相鉄の女性車掌に一日密着している。子どもを保育園に届けてから出勤、9時から乗務を開始し、17時に乗務終了。その後は帰宅という、いたって普通の勤務状況だ。紹介されている車掌さんは、「(時間的に)融通が利く」「子育てしやすい職場」と語る。
だが、この動画の視聴者が紹介している内容に「介護や育児など事情がある人用の特日行路」だと、疑問を投げる。続けて「これしか公開できませんよね。他が酷すぎて」と批判。その理由を「慢性的欠員、残業100時間、会社に3泊4日が当たり前の会社」「おそらく国内鉄道会社の中で最悪の労働環境」と告発。詳しすぎる状況説明に、内部の人の書き込みではないかとみられている。
別の人も、相鉄社員から聞いたとして、「運転士20欠車掌15欠ぐらいで毎日回しているようです。恐ろしい話ですが、1カ月で249時間もの残業をした乗務員もいるそう。他にも60連勤や6日月以上連続で100時間超えの残業、8~10徹、100時間超えはかなりいる」との書き込みもある。
これらが事実であるとすれば、乗客の命を守るべき鉄道会社として、かなり危険な状態で運行している可能性もある。
相鉄、事実上の回答拒否
そこでBusiness Journal編集部は相鉄の広報部に、これらのコメントに書かれているような勤務状況が事実なのか、問い合わせた。
「弊社としてはYouTubeのコメントに対してアナウンスすることはございません。問題があるようでしたら社内で調査して対処してまいります」(相鉄広報部)
100時間超の残業が常態化しているのか、大量の欠員が生じているのか、という事実確認だけでもさせてほしいと頼んだが、断られた。
そこで、関東の大手私鉄の社員に、相鉄に関する書き込みをどのように感じるか、聞いてみた。
「私鉄は関東近郊でも人手不足が深刻になっている事業者が増えています。東急、小田急、京王、東武は比較的財政も安定しており、人手不足が問題視されるような状況でもありません。また、JR東日本や東京メトロも他社より給料が高めなので人が集まりやすいようです。しかし相鉄は特に経営事情が悪くもないのに給料は低めなので、関東圏で鉄道会社への就職を希望している人たちの間では積極的に応募する対象ではないのが現状です。また京急と相鉄は残業が多く、仕事がきついという話は耳にします」
書き込みされているような労働環境が事実であるか否かは確認できなかったが、大きな事故が起きないように、特に運転士や車掌の労働環境には配慮をしてもらいたい。
(文=Business Journal編集部)