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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

東京圏、通勤時の混雑率が高い鉄道路線・区間…1位は京浜東北線、2位は中央線

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
東京圏、通勤時の混雑率が高い鉄道路線・区間…1位は京浜東北線、2位は中央線の画像1
京浜東北線の車両(「Wikipedia」より/MaedaAkihiko

 国土交通省では、毎年三大都市圏の都市交通の混雑率の調査を行っています。これから住まいの場所選びから始めて、本格的にマイホームの購入を考えている人にとっては、どの路線が混雑しているのか、どの区間が空いているのかをチェックしておきたいところではないでしょうか。

出社が増えて混雑率がやや高まりつつある

 国土交通省の「都市鉄道の混雑率調査」の2022年度の実績は図表1のようになっています。2020年度までのコロナ禍以前には、東京圏が160%台、大阪圏が130%前後、名古屋圏が120%台半ばだったのが、新型コロナウイルス感染症の拡大が始まって2020年度には三大都市圏ともに100%台までダウンしました。密を避けて、在宅勤務が急増、出社する人が大幅に減少したためであるのはいうまでもありません。

 それが、2023年には新型コロナウイルス感染症が結核、中東呼吸器症候群(MERS)などと同様の2類から、季節性のインフルエンザ並みの5類に引き下げられ、コロナとの共存が始まりました。在宅ワーク中心だった企業でも出社を基本とする企業が増え、教育機関も対面授業が当たり前になってきました。そのため、通勤・通学に都市鉄道を利用する人が増え、混雑率は東京圏では123%、大阪圏は118%、名古屋圏は109%に高まりました。

東京圏、通勤時の混雑率が高い鉄道路線・区間…1位は京浜東北線、2位は中央線の画像2


 001619671.pdf (mlit.go.jp)

 ただ、それでもコロナ禍以前に比べれば、まだまだ低い水準にとどまっています。国土交通省によると、混雑率の目安は次の通りです。

・100% 定員乗車で、座席につくか、吊り革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる
・150% 広げて楽に新聞を読める
・180% 折りたたむなど無理をすれば新聞を読める
・200% 体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める
・250% 電車が触れるたびに体が斜めになって身動きできず、手も動かせない

 混雑率が高まったといっても、平均的には100%台の前半ですから、座ることはできなくても、吊り革や柱につかまって、ゆったりと時間を過ごすことができる状態です。

いまでも混雑率が150%近い路線・区間もある

 ですから、通勤や通学時のストレスは、まださほど感じることはないでしょうが、これからポストコロナの動きが定着してくれば、混雑率が一段と高まるはずですから、路線によってはたいへんなストレスを感じるようになるはずです。いまでも混雑率が150%に近い区間もありますから、早晩、150%を超えて、200%に近くなるような路線、区間が出てくるかもしれません。

 反対に、いまはまだ100%を切っている路線、区間もあります。そんな比較的空いている路線であれば、本格的に出社が増えても混雑率は100%台の前半程度でおさまるのではないないでしょうか。これから、場所選びから始めて、本格的にマイホーム探しをしようと考えている人なら、混雑率のデータを参考にしてみるのが、いいのではないでしょうか。

大阪圏、名古屋圏の混雑率が高い区間・路線は?

 東京圏の都市鉄道で、混雑率が高い路線・区間は図表2にある通りです。最も混雑率が高かったのは、JR京浜東北線の川口-赤羽間の142%でした。よほど運が良くない限り席につくことは難しいでしょうが、押し合いへし合いするほどではなく、新聞などを広げて読むことができるレベルです。最近では新聞を読む人はさほどいないでしょうから、立ったままですが、スマホでネットの情報をチェックしたり、簡単なゲームを楽しんだりできる状態かもしれません。

 混雑率が高い2位はJR中央線(快速)の中野-新宿間と東京メトロ千代田線の町屋-西日暮里間の139%で、4位は東京メトロ東西線の木場-門前仲町の138%、5位が都営三田線の西巣鴨-巣鴨間の135%となっています。ちなみに、大阪圏の混雑率トップは阪急神戸本線の神崎川-十三間の134%、名古屋圏は名鉄本線の神宮前-金山間の132%ですから、平均値と同様に、混雑率の高い路線・区間の混雑率は首都圏に比べるとやや低めになっています。

東京圏、通勤時の混雑率が高い鉄道路線・区間…1位は京浜東北線、2位は中央線の画像3

001619624.pdf (mlit.go.jp)

混雑率には最大61ポイントの差がある

 一方、東京圏で混雑率が低い路線・区間は図表3のようになっています。一番空いているのはJR中央線(緩行)の代々木-千駄ヶ谷間の81%でした。定員未満の状態ですから、ほぼ座って通勤・通学できる状態です。そのほか、京成本線の大神宮下-京成船橋間など、4位までが混雑率100%未満でした。5位の都営浅草線の本所吾妻橋-浅草間が105%となっていますが、場所を選べば、いまならゆとりをもって座って通勤・通学できるエリアがあるわけです。

 もちろん、今後はポストコロナが本格化すれば、これらの路線でも混雑率が100%を超えることになるでしょうが、それでも最も混雑率が高いJR京浜東北線の川口-赤羽間の142%と、最も混雑率が低いJR中央線(緩行)の代々木-千駄ヶ谷間の81%との間では、61ポイントの差があります。どこに住むかによって、通勤・通学にかかるストレスには大きな違いが出てくるのではないでしょうか。

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新線や新駅開業で混雑率が低下する可能性も

 ただ、この混雑率、新線・新駅の開業などよって低下する可能性の高い路線・区間もあります。たとえば、東京メトロ東西線の木場-門前仲町間は混雑率138%とかなり高くなっていますが、ここには東京メトロ有楽町線の延伸計画があります。2030年代半ばの開業予定ですが、東京メトロ有楽町線の豊洲駅と東京メトロ東西線の東陽町駅の間、東陽町駅と都営新宿線の住吉駅の間に新駅が開業することになっています。これまで豊洲駅や東陽町駅、住吉駅まで長い時間をかけて歩かなければならないエリアに住んでいる人は、新駅を利用できるようになり、東西線ではなく有楽町線、新宿線を利用できるようになります。当然、東西線の混雑率の緩和につながるはずです。まだまだ先のこととはいえ、そうした将来性にかけてみるのもいいかもしれません。開業が近づいてくれば、資産価値の向上が期待できるといったメリットもあります。

快速が走る路線で緩行を利用すれば混雑率緩和

 いまひとつ、路線によっては快速と緩行が並行して走っている路線があります。たとえば、JR中央線(快速)の中野-新宿の混雑率は139%ですが、同じJR中央線でもJR中央線(緩行)の代々木-千駄ヶ谷間の混雑率は81%です。ですから、JR中央線を利用して、吉祥寺、中野方面から都心に向かう場合、時間短縮のためには快速を利用するのが得策ですが、JR中央線の緩行・各駅停車を利用して新宿や都心方面に向かうこともできます。時間はかかりますが、ゆったりと座って通勤・通学できる可能性があります。

 そのためには、20分、30分と早起きする必要があるでしょうが、その分、座って仮眠することもできるでしょうし、読書にいそしんだり、ネットで最新の情報を取得する時間などに充てることができます。そのほうが、会社員、学生としてより充実した時間を過ごせるかもしれません。現在の混雑率の数字にとらわれるだけではなく、そうしたプラスα情報も加味しながら、混雑率のデータを住まいの場所選びに活かしてみてはどうでしょうか。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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