ファミリーレストラン「ガスト」は21日、フランス料理のコースメニュー「至福のフレンチコース」(1990円/税込)を発売した。フレンチレストラン「Restaurant L’allium」(東京都港区)の進藤佳明シェフの協力を得たもので、前菜・スープ・メインディッシュ・デザートの計4品にパンかライスが付くという構成だが、実際に食べた専門家は「食べ終わった後の残念感が強い」「同じ金額を出すならロイヤルホストのほうが満足度が高い」という感想を口にする。
1246店(24年10月31日現在)を展開するガストは、2位の「サイゼリヤ」、3位の「ジョイフル」、4位の「ココス」、5位の「バーミヤン」を抑えて国内ファミレスチェーンとしては1位(店舗数ベース)。「バーミヤン」「しゃぶ葉」「ジョナサン」「夢庵」などを運営する「すかいらーくグループ」の顔といえるブランドだ。「チーズINハンバーグ」(700円/店舗によって異なる、以下同)、「鉄板目玉ハンバーグ」(600円)、「マルゲリータピザ」(790円)、「山盛りポテトフライ」(400円)などが人気メニューだ。
ガストは公式モバイルアプリ上でクーポンを配布するほか、ガストの公式X(旧Twitter)アカウントをフォローしている人を対象に、抽選で食事券が当たるというキャンペーンをしばしば実施。こうしたお食事券やクーポンを利用すれば低価格で食べることが可能となる。
「サイゼリヤは格安な価格で人気ですが、一品当たりの量は少なめです。サイゼリヤよりガストのほうが高価格帯という印象がありますが、うまくクーポンや食事券を使えばガストのほうが低価格でより大きなボリュームの料理を味わえることになります」(外食チェーン関係者)
サービス面での付加価値に課題
そのガストがフランス料理のコースメニューを投入。メニュー構成は以下となっている。
・3種の前菜盛り合わせ(サーモンマリネのグジェール、アンディーブの柚子ビネグレット和え、帆立のバターソテー)
・カリフラワースープ~カリカリパンチェッタとクルトン添え~
・ビーフ100%ハンバーグ ペリグーソース~ごぼうのチップをのせて~
・ブランマンジェプラリネ
・パンまたはライス
監修した進藤シェフは記者発表会で「このメニューを提供するとしたら4000~5000円はする」と語っていたが、実際に店舗で実食したフードアナリストの重盛高雄氏はいう。
「構成する料理一つひとつの積み上げで考えると、1990円という価格は妥当とはいえますが、ハンバーグの付け合わせのほうれん草しかり、どの料理も“ガストの味”で、ガストの単品料理を組み合わせてコースに仕立てたという印象です。そのため、あえてコースで食べる必要性が感じられず、単純に食べたい料理を単品で複数注文したほうがよいと感じる人もいるでしょうし、食後には残念感が残りました。
フランス料理のコースメニューというのはサービスの特別感も重要な要素ですが、ガストでおなじみの猫型配膳ロボットではなく店員が配膳してくれるとはいえ、ナイフやフォークは通常どおりテーブルに備え付けのカラトリーボックスのものを使い、スープのお皿の下に置かれたソーサーも温められていなかったりと、サービス面での付加価値はありません。また、各料理が提供される時間の間隔が長く、コースをすべて食べ終わるまで1時間以上かかるため、それを知らずに注文して不満を感じる人もいるかもしれません。総合的に考えると、価格相応とはいえますが、お得感や特別感、いい意味での驚きなどが感じられるレベルではないといえます。
たとえば同じ価格帯だとロイヤルホストの『黒×黒ハンバーグ&牡蠣とほうれん草のマカロニグラタン』が2178円ですが、店の雰囲気や“くつろぎ感”、1度で全ての料理が提供される点などを考えると、個人的にはロイヤルホストのほうを選択したほうが高い満足感を得られるかなと思います」
お客の来店動機をつくる
では、ガストがフランス料理のコースメニューを発売した狙いはなんなのか。
「ガストはファミレスチェーンのなかでは比較的低価格帯のお店ですが、価格の低さという点ではサイゼリヤには勝てません。そのため、割高でも特別感のあるメニューによってお客の来店動機をつくるという目的があるのではないでしょうか。また、原材料・人件費が高騰するなかで、より高価格帯のメニューを増やしていくことで利益率を向上させ、ガストの主要顧客層である低価格志向の顧客以外の層も取り込んでいくことが、さらなるチェーンの成長には必要だという背景もあるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=重盛高雄/フードアナリスト)