アップルやグーグルなど欧米優良企業が、脱「短期利益&株主至上」志向鮮明…日本企業と逆
しかし、数字合わせが目的化してしまうと、きわめて危険だ。分子のリターンを大きく見せるためには、現業からできるだけ利益を絞り出すことが手っ取り早い。また、分母を小さくしようとして、自己株買いに走りやすい。その結果、将来に向けた必要な投資に金が回らず、負のスパイラルをますます加速させてしまうことになる。
「グローバルな投資家」のなかには、それを望んでいる勢力も少なからず存在する。低迷している株価を一時的に高めることで、売却益を得ようとする投資家である。アクティビストに代表されるこのような短期投資家は、企業の持続的成長になど、関心はない。
株主資本主義のメッカであるアメリカですら、このような投資家に翻弄されて企業経営者がショートターミズム(短期利益志向)に陥ることに警鐘が鳴らされている。事実、アップル、グーグル、スターバックスなどのアメリカの超優良企業は、ROEを経営の目標指数にはしていない。ROEをグローバルスタンダードであるかのごとく振りかざすことは、短期投資家の思うつぼであり、日本企業の持続的な競争力をますます弱める陰謀とすら思えてならない。
企業価値を本質的に高めるためには、現在生んでいるキャッシュを再投資することで、将来より高いキャッシュフローを生むことを目指す必要がある。もちろん投資にはリスクがつきものだ。このリスクとリターンのバランスを読み切る力が、経営トップにも社外取締役にも求められているのだ。
トリプルボトムライン
東レは今でこそドル箱となった炭素繊維が採算に乗るまで、50年間投資をし続けた。競合する米デュポンやダウ・ケミカルのトップは、アメリカ型株主資本主義のもとではまず不可能だと羨ましがったという。「おもしろおかしく」を社是に掲げ、研究者が自分の研究に思い切り没頭できる堀場製作所には、欧米の研究重視型企業からぜひ自社を買収してほしいという話がもちかけられるという。
長期的・持続的な視点に立った日本型ガバナンスのもとでこそ、破壊的なイノベーションが生み出される可能性が高いのだ。非連続なイノベーションが求められる時代に、4半期ごとの1株当たり利益や毎年のROEの数字に一喜一憂するような欧米型ガバナンスをもちこむことは、自殺行為に等しいといえよう。