カシオ計算機
カシオ計算機は、創業者の「樫尾4兄弟」の三男、樫尾和雄社長(86)の長男・和宏取締役専務執行役員(49)が新社長に就く。6月26日に行われる定時株主総会後の取締役会で正式決定する。和雄氏は代表取締役会長に就任し、引き続きCEO(最高経営責任者)を兼ねる。社長交代は実に27年ぶりだ。
和雄氏は1957年、4兄弟の長男・忠雄氏らと共にカシオを創業。シリーズ累計1000万台を売り上げた電卓「カシオミニ」のヒットに貢献した。競争が激しい携帯電話事業から撤退し、近年はデジタルカメラ、デジタル腕時計、電子辞書など事業を多角化してきた。
新社長に就任する和宏氏は慶應義塾大学理工学部卒業後の91年4月にカシオへ入社し、米国販売会社に赴任、新規事業の立ち上げに汗を流した。経営戦略担当、DI事業部長などを経て、14年5月に取締役専務執行役員コンシューマ・システム事業本部長に就いていた。
カシオは08年3月期に売上高6230億円を上げていたが、携帯電話事業の失敗で業績はジリ貧に陥り、一時3000億円を割り込むまでに落ち込んだ。事業多角化で再建に取り組み、15年3月期の連結売上高は前期比5.2%増の3383億円、営業利益は38.3%増の367億円と2期連続の増収増益となった。
和宏氏の経営課題は、新3カ年計画の最終年度である18年3月期の売上高を15年期比1.5倍の5000億円、営業利益を2倍の750億円にすることだ。和雄氏は「新社長と二人三脚で全力を尽くす。1年間でメドをつけ、新社長の体制に完全移行させ、その後の経営は新社長に任せる」と述べた。一方、「代表権の返上については、1年後の様子を見て考えたい」としており、経営への意欲は衰えていない。
久光製薬
貼り薬「サロンパス」でおなじみの久光製薬は、中冨博隆前社長(78)の長男、一栄前副社長(42)が5月21日付で新社長に就任。実に34年ぶりの社長交代だ。博隆氏が社長就任当時に大卒で入社した社員が、そろそろ定年を迎えるという異例の長さだ。
博隆氏は代表権のある会長に就いた。一栄氏は帝京大学経済学部卒。創業家の4代目だ。15年2月期の連結売上高は前期比4.1%増の1567億円、営業利益は7.3%増の205億円と増収増益だった。経営体制の若返りを図り、後発薬の利用促進や薬価の改定など製薬業界をめぐる環境変化に、新体制で対応する。ドル箱である湿布など「貼る治療薬」の海外展開の加速が一栄氏の経営課題だ。