ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(HD)と楽天は7月6日、インターネット通販で提携を強化すると発表した。発表会見には楽天から三木谷浩史社長、ヤマトHDからは山内雅喜社長が出席し、意気込みの強さを示した。
「楽天市場」出店事業者に対して、ヤマト運輸が「YES」という受注管理・配送・決済を一括で管理・支援するシステムを提供する。YESを導入した出店者の商品購入客は、コンビニエンスストア2.1万店とヤマト運輸の営業所4000カ所で商品を受け取ることが可能になる。
私は7月9日に出演したテレビ番組内で、本件について次のように解説した。
「プレイヤー・セオリーで考えると、この提携劇に登場するプレイヤーは、楽天、ヤマト運輸、既出店者と出店希望者、そしてコンビニです。それから表面に現れていないが、ヤフー・ショッピングがいます。2013年10月にヤフーが出店料を無料としたことで、楽天市場との競合関係に激震が走りました。出店事業者数で見ると、それまで1万数千店台で推移していたヤフーは、1年の間に10倍以上となる19万3000店を達成して、15年6月末時点では28万店を超すに至っています(ヤフー広報公表数値による)」
楽天の出店料は月額1万9500円からとされているが、種々のオプションなどを付けると年間出店料は実質58万2000円に上るという報告もある(5月29日付サイト「楽天出店で失敗しないために<楽天逆転プロジェクト>」記事より)。
一方、それまで4万2000弱の出店事業者を誇っていた楽天ではそれがピークとなり、15年3月末では4万589(ネットビジネス・アナリスト横田秀珠氏の推計による)と漸減しつつある。楽天としては、どうしても既出店者や出店希望者を誘引する、目新しいプログラムが必要となったのだろう。
YES導入による商品受け渡し場所の拡大は、出店料に不満を抱える楽天市場出店者たちに対する付加価値的なものとして位置づけることができる。
物流システム構築に失敗した楽天
楽天やヤフーへの出店者には、個人や零細規模の事業者が多い。そうした出店者にとっては、フイルフィルメント(受注管理システム)、在庫管理、発送業務を含む物流業務、決済システムなどの問題は頭の痛いところだ。
楽天はかつて出店者の要望に応えるため、ひいては新規出店希望者を増やすため、08年に楽天物流サービスを立ち上げた。そして物流拠点も3カ所整備し、将来的に8カ所へ増やす予定としていたが、14年にこれらの拠点を突然閉鎖し、同社を同年7月1日付で吸収合併してしまった。今回のヤマトHDとの提携により、物流業務については専門のヤマト運輸に任せる。