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受験生に悲報…有名私大、約3千人の合格者削減?より狭き門に

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早稲田大学・大隈講堂(「Wikipedia」より/Arabrity)
 うだるような酷暑のなか、世間はすっかり夏休みモードに包まれているが、来春の栄冠を目指す受験生は机に向かっているのだろう。ただ残念なことに、ストイックな日々を耐えている受験生にさらなる試練が加わりそうだ。特に合否のボーダー線上でせめぎ合っている数多くの受験生にとっては過酷な現実だ。

 先月20日、全国紙各紙で報じられたように、文部科学省は来年度から定員を上回る学生を入学させているマンモス私立大学に対して、補助金の交付額を削減することを決めた。

 具体的には、定員数8000人以上の大規模私大の場合、定員の1割を上回る学生を入学させると、大学の補助金を全額カットするというものだ。従来は2割以上であっただけに、基準が大きく引き下げられることになる。来年度から段階的に引き下げられ、2018年度には1割ルールを適用するという。

 首都圏の大規模大学関係者が「痛いところをいきなり突かれました」と語るように、該当する私大側も動揺を隠せないようだ。もともと関係者の間では、大規模な私立大学が定員を上回る学生を入学させていることは、よく知られていた。自治が広く認められている私立で、学生の受け入れ数は裁量の範囲内であること、また行き場を失う受験生を少しでも減らしたいという温情もあって、これまで黙認されてきたとみられる。ただ、現状を考えると弊害が大きくなっているのも事実だ。周知の通り、少子化を無視した大学の乱立に伴って、ブランド大学と無名大学の格差は著しく拡大してしまっている。

 文科省の狙いは、投網を打つようにして受験生をさらっていく大都市部のマンモス私大、すなわち有力私大の膨張を抑止しようとするものであろう。ゆとり教育の蹉跌に始まり、最近では新国立競技場の巨額建設費問題まで失策続きの文科省だが、今回の補助金抑制策は一定の妥当性がある。

受験生だけが損する?

 しかし、この施策は文科省、大学、受験生の三方のうち、受験生にとってデメリットが大きい。

 文科省からすれば、片手で毎年少なからぬ補助金(税金)をもらいながら、もう一方の手で定員を大幅に上回る学生を集めて懐を肥やしている強欲な私大に鉄槌を下すことができる。

 大学側にしても、必ずしも悪い話ではないようだ。「かねてから、学生数が多すぎることを問題視していた教職員は少なくない。教育環境の向上の意味からは望ましいことではないか」(前出大学関係者)との声も聞かれる。

 だが、肝心の受験生にとってはメリットがない。現状でも高止まりしている一流私大の合格ラインがさらに上昇するからだ。

 文末のデータは、「早慶上智」(早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学)、「MARCH」(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)、「関関同立」(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)と略称されるトップクラス私大の総定員超過率である。いずれも大規模大学に該当しており、1割ルールを厳密に適用されれば、現時点では12大学中9大学が補助金ゼロの憂き目に遭う。

 返済不要、使途自由の補助金を拒否する大学はまず存在しないから、基準に沿って合格者数は絞り込まれるだろう。仮に1割ルールを超過している9大学が110%未満に学生数を抑えた場合、削減数は合わせて約2700人にもなる。少なくとも従来であれば合格していた3000人近くの受験生が涙をのむことになるわけだ。もちろんこれは最低限の数字であり、監督官庁の意向を配慮して、それ以上に合格者数が削減される可能性は十分にある。

 1990年代初頭の第二次ベビーブーム世代の受験期を境にして、少子化の進行に反して大学や学部学科は増え続け、競うように門戸を広げてきたが、こと有力大学に関しては再び狭き門の時代に回帰しつつあるようだ。
(文=島野清志/評論家)

【トップクラス私大の直近総定員超過率】
早稲田大学119%、立教大学119%、青山学院大学116%、上智大学116%、明治大学114%、立命館大学114%、中央大学114%、同志社大学113%、慶應義塾大学111%、関西大学110%、法政大学107%、関西学院大学105%