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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

あの名門金融機関でまた不祥事!隠蔽された重大な事実 内部の派閥抗争激化

文=鷲尾香一/ジャーナリスト
あの名門金融機関でまた不祥事!隠蔽された重大な事実 内部の派閥抗争激化の画像1多摩信用金庫本店(「Wikipedia」より/QBK)

 また、あの信用金庫で不祥事が発覚した。東京都立川市に本店を置く多摩信用金庫だ。多摩信金が八王子市と昭島市から販売委託を受けていたプレミアム商品券を、販売前に職員が購入したり店舗外で優先販売し、利益を得ていたとされる。プレミアム商品券とは、政府の掲げる「地方創生」の一環である地域振興策で、各自治体や商工会などが発行し、購入者は額面以上の買い物ができるというもの。

 多摩信金は全国信用金庫協会の副会長金庫を務め、東京都信用金庫協会の会長金庫を兼務する東京の名門信用金庫でもある。今年5月に当サイトでは、その多摩信金前理事長の佐藤浩二・現会長が暴力団組長の葬儀に出席していたことが発覚し、金融庁が1年以上にわたる検査を行い、「コンプライアンスに問題あり」「経営のガバナンスが効いていない」などと指摘されていることを追及した。

 その多摩信金で、再びの不祥事である。8月14日、多摩信金は八王子市のプレミアム商品券を職員らに優先的に販売していた問題で、昭島市の支店でも職員に優先的に販売していた事実が明らかになったと発表した。発表の内容はすでに広く報じられており、多摩信金のホームページにも開示されているので、詳細はそちらをご覧いただきたいが、会長と理事長が経営責任を取り報酬をそれぞれ1カ月分、全額返上するなどの処分を行うとしている。

 今回、多摩信金の心ある有志、関係者、金融庁当局への取材を進めるうちに、多摩信金がいかに悪質な行為を行い、それをひた隠しにしてきたのかがみえてきた。

内部監査すらも派閥抗争に利用

 八王子市の支店におけるプレミアム商品券不正問題を多摩信金が明らかにしたのは、7月28日だ。八王子の問題を受け、多摩信金ではこれまでにプレミアム付商品券販売を終了した全店舗を対象に監査室による実態調査を徹底的に実施した、と発表している。その結果、昭島市の支店でも同様の不正が発覚した。

 実は、昭島市のプレミアム商品券不正は7月6日販売分であり、八王子の問題が発覚する前の事案なのだ。つまり、プレミアム商品券不正問題は、八王子から始まったのではなく、昭島から始まっているのである。しかし、多摩信金の8月14日の発表文には、この事実は一切公表されていない。この事実を表に出さないという方針なのだ。

 多摩信金では、「これまでにプレミアム付商品券販売を終了した全店舗を対象に監査室による実態調査を徹底的に実施した」としているが、実際の監査は、監査室と価値創造事業部が手分けをして行っている。多摩信金が始末に負えないのは、この全店を対象とした内部監査すらも、派閥抗争に利用されたという点だろう。

 内部では、佐藤会長、八木敏郎理事長の権威・求心力は失墜し、いずれはその地位の禅譲が行われるとみられている。これに対して、今回の問題に対する内部監査を受け持った監査室と価値創造事業部を所管する役員が、次期経営トップを狙って、この内部監査の成果を手みやげにしようとしたとの指摘が内部から寄せられている。

 また、今回の問題は多摩信金に止まらず、大きな悪影響を及ぼしている。近隣の信用金庫では同問題の発覚以降、「おたくもやっているのではないか」との取引先などの声が寄せられ、中には、「次のプレミアム付商品券を販売する時には、事前に裏から売ってほしい」との嫌がらせまで寄せられている。

 当事者となってしまった八王子市と昭島市では、市役所に対するクレームはもとより、市議レベルにまでクレームが寄せられており、八王子市では市議会でこの問題を徹底的に追及すべきとの声まで上がっている。

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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