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中西孝樹「自動車産業リサーチ&レポート」

VW規制逃れ、なぜ簡単には許されないほど「悪質な不正」なのか?

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フォルクスワーゲン・ザ・ビートル(「Wikipedia」より/Mario)
 独大手自動車メーカーフォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排気ガス規制をめぐる不正問題が発生した。自動車業界史上最大のスキャンダルともいえる。

 9月18日、この問題が米環境保護局(EPA)から公表されて以来、VWの株価は30%も下落、世界中の株式市場に悪影響を及ぼしている。今後の成り行き次第では、欧州メーカーの強みであるディーゼルエンジンの将来をも左右しかねない大事件となった。

 ことの発端は、ディーゼル乗用車の排ガス数値について試験数値と実走行時との間に大きな乖離があったことへ、欧州委員会が調査を強めたことにある。非営利団体である国際クリーン交通委員会(ICCT)に調査を依頼したのだ。

 その調査を受託したウエスト・バージニア大学の研究結果が、VWの不正を暴く契機となったのだ。調査結果を元に、カリフォルニア州大気資源局(CARB)、米環境保護局(EPA)とVWとの交渉は実に1年以上に及んだ。最終的にVWは不正を認め、9月18日に正式に公表された。VWは米国で2009年モデルイヤー以降の48.2万台をリコールし、問題のあるエンジンを搭載した「ジェッタ」「ビートル」「パサート」等の米国販売を停止した。

「ジキルとハイド」のエンジン


 EPAの指摘によれば、問題の「EA189タイプ」のエンジンには「ディフィートデバイス」と呼ばれる無効化機能ソフトが組み込まれていた。このソフトは、ハンドル操作、スピード、圧力などを検知し、室内での排ガス試験の走行と判断したら、排ガス規制モードで走行し、窒素酸化物(NOx)の排気を規制通りに抑える。通常走行だとソフトが認識すると、ディフィートデバイスにスイッチが入り、排ガス低減制御機能を停止させ、規制の40倍ものNOxを排出していたという。まさに、「ジキルとハイド」を地でいくエンジンだ。

 欧米では、かなり以前からディフィートデバイスは禁止されている。ちなみに、これを用いた違法ケースの摘発が過去にもある。1998年にフォードがディフィートデバイスを用いた大気浄化法違反により780万ドルの賠償金を支払った。日本でも大型トラックの排気ガス量が、試験走行と一般走行に大きな差異が生じていたことから、11年に車両総重量3.5トン超のディーゼル重量車にディフィートデバイスの一般走行での使用禁止を取り決めた。

 高い走行性能と環境性能を両立してこそのクリーンディーゼル技術である。VWは、この技術を「ブルーモーションテクノロジー」と冠を付け、06年から欧州、08年には米国へ幅広く展開してきた。日本市場へも導入直前であったが、この一件で再検討される公算が高く、国内消費者への実害は限定的に留まる見通しである。