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横川潤「外食万華鏡」

牛丼業界、不毛な価格競争&疲弊の戦犯は、「リーダー」すき家である

文=横川潤/文教大学准教授、食評論家
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牛丼業界、不毛な価格競争&疲弊の戦犯は、「リーダー」すき家であるの画像1すき家の店舗(「Wikipedia」より/Mr.ちゅらさん)

 牛丼チェーンの価格競争が再燃している。

 すき家は、9月29日~10月8日の期間限定(後に10月22日までに延長)で、牛丼並盛を350円(税込み価格、以下同)から290円に、吉野家も西日本限定で10月1日~7日の1週間、牛丼並盛を380円から300円に値下げした。松屋も、10月15日~22日の1週間限定で、380円のプレミアム牛めし並盛を330円で販売する。

 一時、牛丼はデフレの象徴として激しい値下げ合戦を繰り広げていたが、最近は原材料費や人件費、家賃などの高騰で価格競争は鎮静化していた。しかし、再びその狼煙が上がったようだ。

 ただ、すき家は期間を延長したが、値下げはそれぞれ1週間程度という短さで、「できれば、値下げなどやりたくないなぁ……」という逡巡が透けて見える。

 あるいは、“値上げ”した結果、集客に苦労したことで、新たな適正価格を模索しているのかもしれない。

 業界的にはよく知られた話だが、すき家を運営するゼンショーホールディングス(HD)の小川賢太郎会長と、松屋を運営する松屋フーズの瓦葺(かわらぶき)利夫会長は、共に吉野家で働いた経歴を持つ。そのため、3社はライバルでありながら、比較的仲間意識が強いとされる。

 実際、吉野家の関係者に話を聞くと、すき家に対して、少なくとも敵愾心のようなものはまったく感じられない。むしろ、同じ業界で生きる者同士のシンパシーさえ感じられる。しかしながら、3社の熾烈な値下げ合戦は、骨肉の争いといった様相も呈しているのが現状だ。

 このあたりの微妙な消息は、部外者にはなかなかうかがい知ることができない。

 ちなみに、筆者は「ファミレス大競争時代」の1980年代半ば、某ファミリーレストランでアルバイトをしていた。近隣のライバル店とは、集客を競い合う一方、混雑時に使用する米が尽きると、釜を持って借りに行くという牧歌的な風景もあった。

すき家が犯した最大の過ち

 牛丼チェーンにおける価格競争の仕掛人は、間違いなくすき家である。2003年にBSE(牛海綿状脳症)問題でアメリカからの牛肉輸入が停止する以前、すき家は吉野家という帝王を追う少壮気鋭の挑戦者にすぎなかった。

 しかし、同騒動で吉野家が長期の牛丼販売停止に追い込まれる中、すき家はオーストラリア産の牛肉使用によって一時停止した牛丼販売を早期に再開、さらに値下げ戦略とバラエティに富んだメニュー展開などで、結果的にファミリー層の需要を開拓した。そして、ゼンショーHDがM&A(企業の合併・買収)を繰り返すことで、連結売上高は外食産業でトップを記録した。

横川潤/文教大学准教授、食評論家

横川潤/文教大学准教授、食評論家

文教大学国際学部国際観光学科准教授。1962年、長野県生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。ニューヨーク大学経営大学院にてMBA取得
横川 潤 亜細亜大学

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