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一方、最近のすき家は「深夜のワンオペ」に代表される労務管理の問題などで、ブラック企業の代名詞のような扱いも受けている。このテーマだけでも本が1冊書けてしまいそうだが、筆者はすき家が犯した最大の過ちは、「リーダー企業としての定石破り」だと思っている。
すき家は、経営学者のピーター・ドラッカーやフィリップ・コトラーのいう「リーダー企業の使命」の中で、もっとも大切な部分を守らなかった。それは、「業界規模の拡大」である。
ひとつの業界を見る時、その構造は必ずしもゼロサム(一方の利益が他方の損失になり、全体としてはゼロになること)ではない。むしろ、魅力的な企業同士による健全な競争がイノベーションを生み、市場が拡大されていく。
ファミレスのロイヤルホストなどを運営するロイヤル創業者の江頭匡一氏は、「ライバルの存在がなかったら、自分はとてもここまで来ることはできなかった」と述懐しているが、それはファミレス業界全体についても当てはまるだろう。
リーダー企業の使命は、業界規模を拡大し、ゼロサムゲームを忌避する点にある。そのためには、企業のみならず、業界のイメージ向上が強く求められる。そして、業界拡大の成果として、不毛な価格競争を回避することができるのである。
チャレンジャー企業がなりふり構わず価格競争を仕掛けるのは、ある意味で仕方ないともいえる。そして、デフレスパイラルの中で業績を伸ばしてきた、ゼンショーHDの小川会長の決断力を貶めることは、誰にもできないだろう。
しかし、すき家が業界規模の拡大というリーダー企業の使命を守らなかったツケは、牛丼、ひいては業界全体のライフサイクルの短縮化という悲劇を招いたようにも見え、哀惜の念に堪えないのである。
(文=横川潤/文教大学准教授、食評論家)
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