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高橋篤史「経済禁忌録」

あのテレビCMでおなじみの法人で不祥事・トラブル続出 委任状捏造の疑いも

文=高橋篤史/ジャーナリスト

モラルハザード

 裁判はつまるところ「言った、言わない」の水掛け論に終始する可能性が高い。係属中の裁判でもあり、ここでは予断を避けるためその点については論じない。むしろ現時点で注目したいのは別のところにある。仮に新宿事務所の主張どおりだったとしても、ではなぜ、依頼者にとって経済的利益がまったくないような案件を受任したのかという点だ。

 前述の請求書兼明細書によれば、問題の案件の収支は次のとおりである。和解で返還されたのは計8万8000円。それに対し新宿事務所が受け取る基本成功報酬は1社2万9800円×4社で11万9200円。それに歩合成功報酬が8万8000円×26.9%の2万3672円。さらに通信費と精算手数料が計9000円。総計15万1872円が報酬及び経費である。明細書上、費用倒れの分は値引き処理がなされていた。それで差し引きの清算金額はゼロ円というわけである。

 それら報酬の計算式は件のご依頼書に明記されてはいる。それでも首を傾げざるを得ないのは、問題のケースはどう転んでも初期の段階で費用倒れになることが明白だった点である。これまで明らかになっている3社分の返還率は50%前後。残り1社分も同様の返還率とすれば、最大でも戻ってくる過払い金は18万円弱だ。これに対し、新宿事務所の報酬体系を当てはめると、男性にとって損益分岐点となる返還額は約17万5000円。現下の状況を鑑みれば、全額戻ってくることはあり得ないから、取引履歴が開示された時点で費用倒れになることは明白だった。

 男性側が裁判で主張していることでもあるが、日本司法書士会連合会が4年前に定めた指針によると、訴訟によらない場合、報酬の上限は回収額の20%が上限と定められている。それを当てはめれば適正な報酬額は2万円弱。社会通念上、依頼者にとってメリットがなく、代理人だけが儲かる構図など許されるはずもない。新宿事務所は着手金をとらず、無料相談を前面に押し出している。その一方でこれまで述べてきたようなことを平然と行っているのなら、たとえ裁判での主張どおり依頼者の承諾があったとしても、モラルハザードといえないだろうか。

前代未聞の判決

 じつは今年1月、新宿事務所は自らが原告代理人を務めた過払い金返還請求訴訟をめぐり東京簡裁から前代未聞の判決を下されている。訴えそのものが却下されたのだが、その理由は衝撃的なものだった。原告が阿部代表らを代理人に選任したとする委任状について「本人の意思に基づかないで作成されたことをうかがわせる」とし、「(阿部)司法書士らが提起している(中略)多数の不当利得返還請求訴訟について、原告本人の意思に基づかずに訴えが提起されていることを疑わせる」とされたのである。結果、阿部代表らは裁判所から無権代理人とみなされた。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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