先週末(11月13日)、ついに高速増殖炉「もんじゅ」に最後通牒が突きつけられた。原子力規制委員会の田中俊一委員長が馳浩文部科学大臣に勧告したもので、運営主体の交代か、廃炉を含む抜本的見直しかの二者択一を安倍政権に迫っている。
もんじゅは、使った分よりも燃料を増やせる「夢の原子炉」というのが売りの次世代原発だ。資源小国・日本の福音とされてきた。だが、完成から24年間、トラブル続きでほとんど運転していない。加えて、東京電力福島第一原発事故の発生で、2050年以降の商用化を目指す高速増殖炉の必要性や、国産技術の開発という大義名分がすっかり色褪せた。
原子力事業を所管する政府機関がもんじゅの廃炉を含む抜本見直しを提言するのは、今回が2度目だ。時を同じくして、河野太郎行政改革大臣が指揮する行政事業レビューも、もんじゅの多額の無駄を指摘した。今度こそ、民意と見識を汲み取るのが安倍政権の責務ではないだろうか。
この高速増殖炉の名称が「もんじゅ」に決まったのは、1970年のこと。知恵の象徴とされる文殊菩薩にちなんで命名したことが、これほど皮肉に聞こえる結果になるとは、誰も想像できなかっただろう。それほど現実は厳しかった。核燃料サイクルの中核技術として50年以上前から実用化を目指してきたものの、95年の発電開始からわずか4カ月でナトリウム漏れによる火災事故を起こしたうえ、事故隠しで世間を揺るがせた。運転再開に漕ぎ着けた2010年も、直後に機材の落下事故を起こして再び運転停止に陥った。
12年には、重要機器を含む約1万点の点検漏れが発覚。3段階で重要度の最も高い「1」の機器のうち15点を92年から点検していなかったり、「1」の機器を「3」に分類するミスが確認された。民間の電力会社から「1点でも点検漏れは大問題。我々の常識ではあり得ない」と失笑が漏れた。呆れ果てた原子力規制委員会は13年5月、運営主体の日本原子力研究開発機構に対して、運転準備の凍結を命じた。その後も日本原子力研究開発機構は、一向に信頼を回復できなかった。
一方で、もんじゅの総事業費はすでに1兆円に達し、維持費だけで年間200億円を費消している。大変なカネ食い虫なのだ。
政府は、05年に閣議決定した「原子力政策大綱」で、もんじゅの成果を踏まえて、高速増殖炉の「50年頃から商業ベースでの導入を目指す」としていた。しかし、12年末になると、原子力政策の司令塔だった旧原子力委員会が「今後の原子力研究開発の在り方について(見解)」をまとめ、「年限を区切った研究計画を策定・実行し、成果を確認の上、研究を終了すべきである」と、出口戦略づくりを求めた。福島第一原発事故を受けて、従来の政策を転換し、「(使用済み核燃料を含む)廃棄物の減容や(原発の)有害度の低減等を目指」すほうが社会的なニーズが大きいと判断したからだ。