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こうした各ケースのうち、実質経済成長率が24年度以降0.4%まで低下する場合、財政安定化に必要な一般政府のPB改善幅(対GDP)は、ケース2では9.78%(=消費税率換算で19.5%の追加増税に相当)だが、ケース1では11.12%(=同22.2%の追加増税に相当)となることを示している。
これは、20年度のPB均衡が実現しない場合、財政安定化に必要な収支改善幅は消費税率換算で約3%も上昇してしまう可能性を意味する。また、急増する社会保障費を抑制できず、消費税率引き上げで財政再建を行う場合、最終的な消費税率はケース1で約32%、ケース2で29%に設定する必要があることを示唆する。
政府は15年6月末、新たな財政再建計画を盛り込んだ「経済財政運営と改革の基本方針2015」(いわゆる骨太方針2015)を閣議決定したが、その最初の試金石に位置づけられる16年度の予算案が来月12月に固まる。
骨太方針2015では、20年度までに国・地方のPBを黒字化する従来の目標のほか、18年度のPBの赤字幅を対GDPで1%程度にする目安を盛り込んでいる。このため、16年度予算案を含め、当面は歳出改革および17年度4月の消費税率引き上げ(8%→10%)の判断が大きな政治的争点となる。
その際、国・地方の債務残高は対GDP比で200%を超えており、中長期の視点でみた場合、「20年度にPB均衡を達成しても、日本財政は非常に厳しい」という現実を直視する姿勢が最も重要である。
この点で、骨太方針2015に盛り込まれた18年度や20年度のPB目標は極めて重要であり、まずは16年度の予算編成を含め、政府・与党の財政再建に向けた努力が試されている。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)
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