6月中旬からの株式暴落でバブル崩壊が叫ばれている中国だが、8月11~13日に人民元の対ドル切り下げを行ったことが話題になった。
これは、中国政府が実体経済の悪化を懸念し、国際競争力を高めるために採った施策だが、予想以上に売り圧力を招いてしまい、人民元は政府がコントロールできない状態になってしまった。そのため、政府は膨大な額の外貨準備を使って為替介入を行っている。
中国の外貨準備は3兆5600億ドル(約425兆円)で世界最大だが、外貨準備というのはあくまでも、「外貨をいくら保有しているか」にすぎない。また、中国の場合は日本などと違い、政府と中央銀行の保有分に加え、国有銀行の保有分も含まれている。
そして、国有銀行の保有分には、企業などの決済用資金などが含まれるといわれている。つまり、外貨準備のうち、いくら使えるかはまったくわからないのである。
さらにいえば、中国の米国債保有額は、約1兆2000億ドルしかない。3兆5600億ドルの外貨準備のうち、米国債は3割程度ということになる。日本は外貨準備の9割以上を米国債が占めているが、これは米国債の換金性の高さと安全性を重視した結果である。
9月下旬、日本の国債市場で海外投資家による中長期債1兆1904億円、短期債3兆4602億円、合計4兆6506億円という大量の売り物が出た。日本銀行の国債買い入れにより市場で売り物が少ない中で、このような大量の売りが出ることは珍しく、市場関係者は「中国が売ったのではないか」と言っている。
この時期、米中首脳会談があり、中国は米国の手前、米国債を売れない環境にあった。代わりに、換金性が高い日本の国債を売ったと考えられる。
人民元売りを規制する中国
このような状況から、人民元の信用が損なわれ始めているわけだが、中国政府は対応策として、人民元売りに対する規制を行っている。将来の為替取引を予約する「為替予約」において、銀行が顧客の取引残高の20%をドル建てで中国人民銀行に1年間預けないといけないという決まりをつくったのだ。
これにより、人民元売り・外貨買いを抑制するというものだが、事実上、人民元の先物売りを禁止したのである。
中国では、中国人の外貨の両替を年間5万元に制限しているが、これは実際には守られていなかった。実は、中国銀聯(ユニオンペイ)の銀聯カードを利用して外貨調達が可能だったのである。