しかし12年8月10日、韓国の李明博大統領が竹島に上陸したことをきっかけに、日韓関係は急速に悪化しました。同日、開催中だったロンドンオリンピックで日本対韓国のサッカーの試合後に、韓国選手が「独島(竹島)は韓国の領土」と主張するプラカードを掲げてグラウンドを駆け回り、世界的な注目を浴びる問題となりました。
竹島の領有権は、日韓関係を論じる上で慰安婦問題と並ぶ最大の懸案事項となっています。7月7日付本連載記事『韓国のトンデモ思考回路 証拠なき慰安婦強制連行を“常識化”』において、慰安婦の強制連行に関する疑問を提示しましたが、今回は竹島問題を取り上げてみます。
そもそも竹島の領有権問題が浮上したのは、1952年が最初です。当時韓国大統領だった李承晩が、一方的に日本海上に軍事境界線を設定し、同線内の広大な水域の漁業管轄権を主張しました。その内側に竹島は含まれています。この軍事境界線を「李承晩ライン」と呼んでいます。
日米両国はこれに対し、「国際法上の慣例を無視した措置」として強く抗議しました。しかし、当時日本は第2次世界大戦の終局的な条約であるサンフランシスコ平和条約に署名はしていたものの、発効前であったため、日本の主権は回復していなかったのです。また、李承晩ラインはサンフランシスコ平和条約違反であるが、韓国は同条約に調印していないため、効力は及ばない状態でした。
その後、韓国は沿岸警備隊の駐留部隊を竹島に派遣し、現在に至るまで事実上支配しています。この李承晩ライン設定時点では、日本の海上自衛隊の前身組織である海上警備隊・警備隊はまだ存在していなかったため、対抗する術はありませんでした。
歴史的見地では
つまり、実質的には韓国が不法占拠している状況ですが、韓国が領有権を主張する根拠はどこにあるのでしょうか。
それは、1145年に編纂された『三国史記』において、512年に于山国は新羅(朝鮮)に服属していると示されていることに由来します。そして、この于山国に含まれる于山島が竹島であるというのです。ちなみに、日本側の史料上確認できる領有権の根拠は江戸時代の1600年代のものがもっとも古いため、仮に于山島が竹島と同一であれば、韓国の領有権主張は筋が通っていることになります。
しかし、于山島は明らかに現在の鬱陵島です。竹島とは90キロほど離れた別の島です。『三国史記』においても「于山島は一説に鬱陵島ともいう」と明記されています。また、他の文書においても、于山島の生態や自然描写が明らかに竹島と異なっています。韓国の領有権主張の根拠は「于山島=竹島」の上に成り立っているため、これが崩れると主張の正当性がなくなってしまいます。
このように、竹島は歴史的資料から見ても、国際法上の正当性に照らしても、韓国側が不利な状況です。そのため1960年以降、日本側は重ねて国際裁判にかけることを要求していますが、韓国は拒否し続けています。つまり、客観的に見て分が悪いことを認識しているのです。アメリカも李承晩ライン設定以降、幾度となく竹島を日本に返還するように韓国政府へ圧力をかけていますので、日本の領土であると認識していることは明らかです。また、昨今急速に韓国との距離を縮めている中国も、竹島の領有権は日本にあると公式に認めています。
資料の上で不利な韓国は、既成事実を積み重ねて対抗する姿勢を見せています。竹島の実効支配強化もそのひとつです。また、韓国で18年度から使用される高校の歴史教科書では、慰安婦問題や竹島問題に関する記述を強化する方針が打ち出されました。さらに今年4月には、日本の中学歴史教科書において「韓国固有の領土である独島(竹島)に対する不当な主張を強化し、明白な歴史的事実を歪曲」しているとして韓国外交省が日本を非難する声明を出しました。
外務省は、「韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠であり、韓国がこのような不法占拠に基づいて竹島に対して行ういかなる措置も法的な正当性を有するものではありません」と、韓国が不当に占拠していると指摘しています。
その上で、「日本は竹島の領有権を巡る問題について、国際法にのっとり、冷静かつ平和的に紛争を解決する」との考えを示していますが、韓国が国際裁判に応じない以上、国際法にのっとり平和的に解決できる日が訪れるのかはあやしいものです。
(文=林秀英/ジャーナリスト)