8月23日、韓国ソウル警察庁国際犯罪捜査隊と中国マカオ特別行政区の司法当局は、マカで売春していた韓国人女性80人を在宅起訴しました。ブローカーが韓国国内で売春婦を募集してマカオに連れて行き、一流ホテルなどで売春をさせていたのです。中には、4カ月で3億ウォン(約3100万円)を得た売春婦もいたといいます。また、日本女性を好む中国人を相手にするため、着物を着て日本語を話すなど日本人を演じていた女性もいたようです。
韓国では、2004年に売春特別法を制定して売春を厳しく規制し始めました。その結果、売買春の取引回数は02年の1億7000万回から07年には9395万回へと大きく減りました。韓国の人口はおよそ5100万人ですから、おおまかに成人男性が約2000万人と考えても、1人当たり年間5回買春している計算です。
売買春の取引回数が減ったとはいっても、売春婦が減ったわけではなく、海外へ活動の場を移しているだけだったのです。
韓国の国家行政機関である女性家族部の国政監査によると、海外で売春に従事している女性は約10万人もいるようです。ここ数年、カナダやアメリカ、オーストラリアなど、世界的に韓国人女性の売春が問題視されるようになりました。特に日本には5万人いると推計されており、「韓流デリヘル」などは根強い人気があります。その様子を韓国メディアが「人身売買」などと批判していますが、問題の根幹は韓国にあります。
女性家族部の調査によると、韓国の風俗産業の経済規模は国家予算の約6%に上ると試算されています。また、韓国国内の風俗店で働く女性は150~190万人に達するとみられています。この数字が事実であれば、10代後半~30代の女性の5分の1から4分の1に相当する人数です。ちなみに、韓国の風俗は日本とは異なり、ほぼ売春の場となっています。
韓国に売春婦が多いワケ
なぜ、これほどまでに韓国人女性は性を売るのでしょうか。
ひとつには、国内での女性の地位の低さがあります。女性が就ける仕事の範囲は狭く、得られる給与も多くありません。高収入を得るための選択肢のひとつとして、風俗があるのは確かです。
また、結婚すると多くの場合は家庭に入ることが求められ、仕事は辞めざるを得ません。そして家庭に入った女性は、非常に理不尽な扱いを受けます。それは虐待と呼べるほどです。事実、韓国では夫や姑から暴力を受ける女性が非常に多く、それによって死亡する事件も毎年一定数発生しています。そのような扱いに耐えられず離婚する夫婦は昨今、急激に増えています。ところが離婚した場合、女性の再就職は極めて困難です。その結果、生きていくために風俗で働く女性も多くいます。
さらに、ヤミ金融の存在も大きいです。銀行など大手金融機関は、融資の条件が極めて厳しく、大企業に勤めているなど高収入の人しか相手にされません。また、町金融でも、安定した職業に就いていなければお金は貸してもらえません。そうなると、生活に困窮した女性はヤミ金融に助けを求めることになります。
韓国では融資の際の法定利息は上限39%ですが、ヤミ金融では100~500%という高利で貸し付けています。そして返済できないことを理由に、女性に売春を強要するということが横行しています。13年の韓国日報の調査では、少なくとも300万人以上がヤミ金に手を出していると報じられています。
生活のために一度ヤミ金融に手を出したために売春を強要され、どんなに働いても借金は増え続けるという負のスパイラルにはまる女性は増え続けています。11年、ある売春街を強制撤去した際、撤去に反対して焼身自殺した売春婦もいました。売春しなければ、生きていけない女性たちの姿があるのです。
韓国政府は、国際的な非難を受けて売春を取り締まろうとしていますが、その背景にあるヤミ金融や売春を斡旋するブローカーを野放しにしているため、実効は得られない状況にあります。売春を減らすために、女性の生活を安定させるための施策を打ち出してほしいものです。
(文=林秀英/ジャーナリスト)