「アイドルなどと同様に、AV女優にも旬があります。デビューしてから熟女になるまで現役を続ける人もいますが、かなりの少数派。ある程度稼いだら辞めて、違う仕事に就くのがベストなのですが、女優時代は高額な収入を得ていたのでついついお金の使い方も荒くなって、なかなか貯まらないものなのです。そんな時に、あるプロダクションの人から『うちは終身雇用のシステムがあるけど、専属にならない?』と持ちかけられたのです。それで『長く働けるならいいかな』と思って……」
「ある程度女優を続けた後はスタッフとして雇ってくれるのかな」と思っていたMさんが、そのプロダクションから聞かされた“終身雇用”の中身とは、予想とは大きく異なるものだった。
「当初専属の女優として作品に出演したあとは、その看板を持って、プロダクション系列の別会社が経営している風俗店へと斡旋され、そこでもう一稼ぎするというものでした。いわば、女優のリサイクルみたいなものですよね。私は10本ちょっと作品に出演した後に風俗店に所属することになりました。ほかの子よりも3割増しの特別価格で、お店からのバックもいい契約になっていたので、ファンが通ってくれて結構稼げると思ったのですが……」(Mさん)
だが、そんなMさんの目論見は、すぐに覆されることになる。
「当初はたくさん指名が入っていたのですが、強引に本番行為を行おうとするお客や、『技術がない』というクレームも多く、何度もトラブルになりました。他にもAVの世界から風俗へ流れてきた子の中には、心を病んでしまった子も多いようでした」(同)
Mさんは、そんな客との温度差に加え、特別価格という待遇のせいか同じ店の子たちに白い目で見られ距離を置かれるなどして、結局その店を辞めた。今は資格を取るために貯金を切り崩しながら学校に通っているとのことだが、どの業界でも終身雇用という“甘い蜜”をなめることは難しいようだ。
(文=平良/ライター)