成人向け映像作品に出演することを生業にする女性たち、AV女優。
1990年代までは“訳あり”の女性がその職業に就くなどダーティな印象が強かったが、2000年代に入ってからそのイメージは急激に変化。閉鎖的なイメージから開かれたポジティブなイメージに変わっていき、ごく普通の女の子が興味を示すことも少なくない時代になった。
そうして変遷してきた業界だが、毎年1000人~2000人のAV女優が生まれているという。当然「AV女優になりたい」と考える女性全員がデビューできるわけではなく、志望者のうちの7割は面接で落とされているともいわれている。
また、デビューできたからといって、すぐに多くのファンが付きアイドルのような活躍ができたり、月収数百万円以上の収入が得られるかといえば、もちろんそうでもない。
一般的にAV女優は上から「単体女優」(通称:タンタイ)、「企画単体女優」(キカタン)、「企画女優」とランク分けされている。特定のメーカーと専属契約している「単体女優」や、専属契約はしていないものの自身単独で作品をリリースできる「企画単体女優」であれば月収数百万円以上も珍しくないが、AV女優の大半を占める「企画女優」は1本出演で手取り額が5万円以下というケースも珍しくなく、決して裕福な暮らしができているわけではないのだ。
さて今回は、12年末にタンタイとしてデビューし、現在はキカタンとして活躍しているAV女優・伊藤りなのお宅に訪問した。
好立地の都内デザイナーズマンション
【お宅訪問の動画はこちら】
伊藤の自宅マンションは、都内の主要ターミナル駅から徒歩十数分、最寄りの地下鉄駅から徒歩3分の好立地にある築5年のデザイナーズマンション。7階にある自宅は、約5畳の部屋と約5畳のダイニングキッチンを備えた1DKである。22歳のひとり暮らしの女性としては程よい広さといえるだろう。
カーテンやベッドカバーが同じ花柄で統一された女の子らしい部屋だが、「ここに引っ越してきたのは1年ぐらい前。入居早々、当時付き合ってたカレシと電話でケンカしてて、腹立ってドアにパンチしたら穴が空いちゃいました……(苦笑)」とのことで、ドアの一部が破損していた。
だが、それ以外はインテリアや間取りはよくも悪くも“かわいらしいごく普通の女性の部屋”であり、特筆する必要はなさそうだが、意外なのは彼女の金銭事情であった。
月収は20万円
実は現在、AV女優としての活動は「プチ休止中」とのことで、2カ月ほど前からAV撮影はしていないが、「引退」ということではなく来年には「活動再開予定」とのこと。
そのため、現在はAV女優と掛け持ちしているキャバクラ嬢としての収入のみとなっているようだが、その給与額が意外と少ないことに驚かされた。
ここで伊藤の月収額とおおまかな支出額の内訳を紹介しよう。
【月収額:20万円前後】
キャバクラ嬢としての収入
【支出額:30万円前後】
・家賃:約11万円
・食費・交際費:5~10万円
・被服費:5~10万円
・水道光熱費:約1万円
・ケータイ代:約1万5千円
まず気になったのは、意外と収入が少ない点。22歳の女性の収入と考えれば適切な金額に思えるが、休業中とは言え元タンタイであり、現在もキャバクラ嬢として働いていることを考えると、少ない額という印象である。
「キャバには週3回ぐらいしか出勤してないんです。それに、バリバリ稼いでる他のキャバ嬢さんたちみたいに細かい気配りをして接客してないし、マメに営業もしてないから。私、そもそもキャバの仕事、向いてないんですよね」とのことで、あくまで当面の生活費を稼ぐための勤務ということのようだ。
しかし、気になることがもう1点。20万円前後という収入額よりも支出額が30万円前後と大きく上回ってしまっていることである。
「AVでためた貯金がけっこうあって、それが今は毎月毎月減っていってる状態。今の貯金は100万円ぐらいになっちゃいましたね。今の収入だったらもっと節約しなくちゃとは思ってるんですけど……。昨日も勢いで16万円もしたジミーチュウのトートバッグを買っちゃいました」
「もっともっと輝きたい」
ちなみに、AV女優としていちばん収入が多かった時期は、「撮影するのは月1本というときもあったし、月5、6本撮ったときもありましたね。撮影1本のマックスのギャラは、私の場合は40万円ぐらい。でもその作品によってギャラはまちまち。絡みの撮影があっていちばん安いときは8万円だったし、たとえば胸を出すだけの簡単な撮影のときは1万円しかもらえないときもあった」とのこと。月収ベースでいうと100万円を超える月もあったそうだが、平均では数十万円といったところ。
キャバクラ勤務はこれからも続けていき、今後はストリッパーの仕事もこなしていく予定だというが、そんな伊藤、今後の自分の人生に大きく悩んでいる時期とのこと。
「やっぱりAV女優としてもっともっと輝きたいんです。でも、毎年たくさんの女優がデビューしてきて、たくさんの女優が引退していくのを見ているし、この業界が簡単じゃないこともわかっていて。だからAV女優としてがんばりたいけど、私を求めてくれる人(業界の関係者やファン)はどれだけいるんだろうって思うし。それに女の子として、結婚もしてみたいっていうのも本音としてあるので」
20代前半の女性ならば将来への漠然とした不安を抱いていることはごく自然なことだろうが、AV女優として脚光を浴びてしまっている伊藤は、その不安が一般の女性よりも大きく膨れ上がっているのかもしれない。
いずれにしても伊藤を始めとしたAV女優たちが、AV業界に足を踏み入れたことを後悔することなく輝かしい自分の過去の一部として受け入れ、これからも幸せな人生を歩んでいくことを切に願うばかりである。
(文・動画製作=昌谷大介/A4studio)