国内外で人権侵害をなくすための活動に取り組む認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウが3月3日、女性が成人男性向けビデオへの出演を強要される被害の調査報告書を公表し、対策を求めた。これに対し、そうした映像作品に出演する現役・元女優たちが反論したことで、波紋が広がっている。
報告書によれば、タレントやモデルのスカウトを受けた女性が出演させられる被害が相次いでおり、自殺に追い込まれた実例も確認されているという。同団体事務局長・伊藤和子弁護士は、4日付のTwitterで「社会的注目が集まり、ぜひ大きな動きにつながれば」と訴えた。
これを受け、現役女優かさいあみが4日、「無理やり出されてる人一人も見た事ない」「今や出たい人が出てるのに関係ない人が金儲けのために色々やっててワロタ」などとツイート。同じく現役の天使もえも「大抵のスカウトさんって断ればスーッと消えていくものなのに、そんな怖い人たちとまずどこで出会っているのか」と疑問を呈し、初美沙希も「(業界は)『とてもクリーンです』」と主張した。
さらに5日には、元人気女優で現在作家の川奈まり子がFacebookを更新。団体が求める改善策には概ね賛成したが、主張の一部にはむしろ女優自体が取締り対象になりかねない矛盾があると指摘し、「女優の人権には、伊藤氏らは本当は興味すら無いのかもしれませんね?」と批判。また、「女優を保護するようなことを言いつつ」「職業差別を助長してもいる」と反発した。
この議論は、一般ユーザーの間でも賛否両論が飛び交う事態に。伊藤弁護士らに賛同する者もいれば、被害者とされる女性たちの危機意識を問う者も。5日には実業家・堀江貴文が「メンヘラっぽい女子はこういうの(被害)に巻き込まれやすい」とツイートしたのに対し、被害者を“メンヘラ”呼ばわりしたとして一部ユーザーから問題視された。
7日、伊藤弁護士は一連の反論に触れ、「でも一方私は、現に強要されている人をみてきた」「業界潰しのためにやっているわけではない」などとツイート。また、8日には川奈が伊藤弁護士とやり取りを行ったとして、その内容をFacebookで公開し、「まず、AV業界の実情が報告書から受けるイメージとは乖離している旨を伊藤弁護士に伝えました」「伊藤弁護士にはAV業界を潰すつもりは無く、ただ、雇用側の問題点を炙り出し、AV出演の雇用者の被害を無くすことが目的だというご回答をいただきました」と報告。
さらに、4日のツイート以降、多くの反響を呼んでいたかさいも、9日に「私の言いたい事は川奈まり子さんが大体伝えてくれていた」とした。
「今回は報告書の“偏り”に女優たちが反論したかたちですが、被害を訴えている女性がいるのもまた事実。AV業界でなくとも、15年には芸能プロダクション社長らが東京・原宿でモデルのスカウトを装って女性の着替えを盗撮し、インターネットに配信したとして逮捕された。AV業界でも、小さな事務所では事件が起きる可能性は否定できません」(週刊誌記者)
世間でもブラック企業が問題視されるなか、業界は本当にホワイトで「クリーン」といえるのか。そうでないとしたら、悪徳業者を排除する対策は必要だろう。
(文=編集部)