ネット選挙解禁でIT業界が売り込み開始! ヤフーにツイッター、LINEなど各社の特色は?
企業には新たなビジネスチャンスだ。巨大な経済効果を生み出すとの見方もある。ネット選挙の成功のカギを握るのは、いわゆる対策ビジネスにある。他人が候補者を装う「なりすまし」や、候補者へのネットでの中傷が予想されるからだ。これを防ぐ対策ビジネスがIT企業に商機をもたらす。
ネット検索大手ヤフーは、ネット選挙に向けた取り組みを発表した。ソフトウェアの不具合を洗い出すデバッグ事業を手掛けるデジタルハーツとの協業で、政党や候補者のホームページの“乗っ取り”を防止する「サイバーセキュリティサポート」を開始した。国会議員や政党を対象に、ウェブサイトのセキュリティホール(システムのセキュリティ上の弱点)の有無や脆弱性を調査。セキュリティに関する課題を抽出し、レポートを提出する。
ネットのデータ管理サービスのパイプドビッツ(東証マザーズ)は、政治情報サイト「政治山」とデジタルハーツのセキュリティサービスを融合した「政治山ネットセキュリティ・サイバーセキュリティ診断」を始めた。同社は政治・選挙プラットフォーム「政治山」で有権者意識調査「政治山リサーチ」を実施している。
ネットサービス会社、GMOインターネットグループのネットセキュリティ会社、GMOグローバルサインは、政党、候補者のホームページや電子メールに貼り付ける「電子証明書」の発行を始めた。有権者がクリックすれば同社による認証情報が表示され、本物と確認できる。「なりすまし」を防ぐ対策ビジネスである。
無料のグループチャットとメールサービスのLINE(非上場)は、全政党にLINEの公式アカウント(使用する権利)を無償で提供する。LINEは若者世代を中心に圧倒的な人気を誇り、国内で4500万人が利用しているといわれている。
簡易投稿サイトを運営するツイッターは、全政党のツイッター公式アカウントの認証を終えたと発表した。有権者は自身の選挙区の候補者をツイートで追えるほか、場合によってはツイッターを通じて政策等について候補者とやりとりできることになるかもしれない。ちなみにツイッターの日本における運営会社は、Twitter Japanだ。
株式市場では政治と関わりが深い銘柄が物色された。動画共有サイトを運営するドワンゴは、政治家が登場する「ニコニコ動画」で知られる。12年12月の総選挙公示前には、党首討論会も行った。ネット選挙の解禁で、同社の動画サービスを利用した政治家の情報発信が増えるとの期待が大きい。
富士通の子会社、ニフティ(東証2部)は政党の公式ページ、党首のブログ、フェイスブックのページなどに簡単にアクセスできる、政治情報の提供に特化したアプリの提供を始めた。新サービス「ポケット政治」では各党の公式サイトやツイッターへの党首の投稿などをまとめたページを用意。自民党、民主党など10党の一覧から党名を選ぶと、政党や党首が情報を発信しているサイトなどが表示される。ユーチューブに投稿された各党の動画も視聴できる。
まずiPhone向けから提供を始め、6月にはアンドロイド搭載端末にも対応する予定。アプリは無料で利用できる。参院選後もアプリの運用は続ける方針だ。
インターネットモールを運営する楽天(ジャスダック)は、献金サイト「楽天政治LOVE JAPAN」を通じて有権者の政治参加を促している。ネット経由のクレジットカードによる献金で政治家を応援するサービスだ。このほか、子会社が投稿分析やメディア政策を指南する事業を展開しているネット広告のオプト(同)や、ネット調査のマクロミルが買われた。オプトは電通の傘下で、マクロミルにはヤフーが出資している。
ネット投稿を監視するポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス、サイバーエージェント(東証マザーズ)やセプテーニ・ホールディングス(ジャスダック)のネット広告会社も株価は一時、上昇した。
ネット検索大手、グーグルは5月末、都内で政党や候補者向けに「Google活用セミナー」を開催。グーグルの各種サービスの活用法を、具体的な事例を交えて紹介した。
IT企業は、さまざまなネット選挙対策を打ち出している。だが、ネット選挙は初めての試みで、話題だけが先行している。ネット選挙関連銘柄という言葉が定着するかどうかは、中長期的に収益改善につなげられるかどうかにかかっている。夏の参院選に向けて、ネット選挙狂騒曲が続く。(なお、上場している株式市場を文中で明示していない会社はすべて東証1部である)
(文=編集部)