ガラパゴス日本の象徴になるかも
4月1日、平成に代わる新しい元号「令和」が発表された。過去247の元号はすべて中国の古文献に由来していたが、今回、初めて日本の古典(最古の歌集『万葉集』)に依拠したという。ただ、「令和」の出典となった『万葉集』巻五の「梅花の歌三十二首」の序文は、後漢王朝前期に学者・張衡が著した『帰田賦』からとられたものだという指摘もある。
日本人の寿命が延びたので、大正、昭和、平成、令和と4つの元号を生きることになる人も少なくない。その親、祖父・祖母世代を考慮に入れると、戸籍や土地台帳の手続きでは、慶応、元治、文久、万延といった江戸末期の元号は、まだ完全に「過去」になりきっていない。
21世紀に入って20年、社会・経済がグローバル化したネット時代、本家本元の中国も廃止した元号を日本だけが使い続けることの是非について議論は深まらないまま、メディアでは「祝改元」騒ぎが満ちている。「和を令する」という響きに違和感があると言う人もいるようだが、時間がたてば耳に馴染むだろう。
企業や行政機関にとってやっかいなのは、和暦を西暦に置き換えなければならないことだ。例えば、明治元年は今から何年前か、その答えを出すには、
(1)明治元年=1868年
(2)2019-1868=151
という2段構えの計算をしなければならない。大正、昭和、平成も同様だ。また「承久の変」「建武の中興」のように、元号を冠した歴史上の出来事も、「いつ起こった事件か」と尋ねられたら西暦で答えるのが一般的だ。「世界のどこにもないユニークな伝統」と胸を張っているうちに、世界から見たらガラパゴス日本の象徴に映るかもしれない。
システム改修の難度は高くないが……
ITが社会・経済、生活の隅々に浸透している現在、本来であれば西暦で統一するのが望ましい。なぜなら、コンピュータは年を西暦で記録・管理しているためだ。古いシステムは西暦の下2けたで動いていたので、2000年を迎えるに当たって、多くのシステム・エンジニアは戸惑った。コンピュータは「00年」を1900年と認識するので、行政手続きでも民官の取引でも大混乱が起こる。データを並び替え、検索、抽出した結果がまったくの間違いになってしまう。銀行の利子計算もできなくなる。