「00年」を「1900年」、「01年」を「1901年」と認識するだけならともかく、コンピュータの多くは「異常値」が連続して入力されると自動的に処理を停止するように設定されている。3度連続でパスワードを間違うと、4回目以後は受け付けてくれなくなるのと同じだ。情報システムはネットワークで相互に連携しているので、どこかのシステムが停止すると全体が動かなくなってしまう可能性がある。
今回の改元は、和暦と西暦の照合・置き換えの問題だ。コンピュータが内蔵しているCPUのクロック周波数やOSの時刻管理機能を変更する必要はない。和暦を扱っている業務とそれに対応するプログラム、データファイルを洗い出し、当該部分に修正プログラム(パッチ)を当てていけばいい。技術的な難度はさして高くない。
ただ、西暦2000年(Y2K)問題の頃と違って、現在はさまざまなシステムが旧来のオンライン、インターネットのウェブサイトなどを介して相互にリンクしている。しかもIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やWi-Fiで無数のセンサーや携帯端末のデータがシステムを駆動させる「データ・ドリブン」型だ。
さらにいえば、システム全体の時刻管理がセンターのメインサーバーで行われているとは限らない。NTP(Network Time Protocol)、GPS(Global Positioning System)、電波時計用の長波JJY、テレビ放送や携帯電話の電波、FM波ということもある。プログラムとデータの改修がどこに影響するかを確認する作業が重要だ。
新元号を入れた本番テストで大忙し
経済産業省が行った「改元に伴う企業等の情報システム改修等への対応状況に関するアンケート」という調査がある。約900の業界団体に協力を求めたというのだが、有効回答は大企業739件、中小企業2,058件の計2,797件だ。1団体当たり3件強というのはいかにも少ない。調査期間が短かったせいなのか、あまり関心がないためか、簡単な作業と軽く見ているのか。
2,797件を集計すると、「和暦を使用している部分の特定が完了している」が877件で31.4%、「和暦は使っていない」が899件で32.1%、「調査・確認中」が458件で16.4%、「調査・確認はこれから」が563件で20.1%だった。