ドラッグストア業界7位のココカラファインをめぐるマツモトキヨシホールディングス(HD/同5位)とスギHD(同6位)の争奪戦は、マツキヨHDに軍配が上がった。ココカラとマツキヨHDは経営統合に向け協議に入っている。
両社の業績は好調だ。マツキヨHDの松本清雄社長は「単に安いだけでなく、品質にこだわったPB(プライベートブランド)商品を展開していく」と力を込める。19年4~9月期の連結決算の売上高は前年同期比5%増の3004億円、純利益は12%増の129億円だった。化粧品・日用品の「アルジェラン」シリーズなどPB商品の販売が伸びた。PB商品の売上高に占める比率は10.5%と1年前より0.6ポイント上昇した。20年3月期の売上高は前期比4%増の6000億円、純利益は4%増の260億円を見込む。
ココカラの塚本厚志社長は、「マツキヨHDとの経営統合に向けた協議は順調に進んでおり、20年1月中になんらかの発表ができる」と明らかにした。ココカラの19年4~9月期の連結売上高は前年同期比4%増の2081億円、純利益は27%増の50億円。売上、利益とも、この期の過去最高を更新した。新規出店やM&A(合併・買収)で調剤事業の売上高は10.9%増となった。20年3月期の売上高は前期比2%増の4090億円、純利益は3%増の94億円を計画している。
両社の統合で売上高1兆90億円、純利益354億円のメガ(巨大)ドラッグストアが誕生する。これまで、抜きつ抜かれつの首位争いを繰り広げてきたウエルシアHD(20年2月期売上高は8500億円の見込み)やツルハHD(同5月期売上高は8200億円の見込み)を大きく引き離し首位に躍り出る。
株式市場ではドラッグストアは「小売業の勝ち組」と評価されてきた。しかし、成長に陰りが出てきたのは間違いない。マツキヨHDの既存店売上高は消費増税前の9月に前年同月比21.8%増と爆発的に伸びた。使用期限の長い日用品や単価の高い化粧品、医薬品を中心にまとめ買いが発生した。だが、売上の中身を精査すると、それ以外は前年割れとなった。さすがに10月は駆け込み需要の反動減で12.5%のマイナスだ。4-11月の累計は0.8%減である。ココカラも同様。9月の既存店売上高は19.3%増、10月は13.2%減のマイナス。4-6月の累計は0.6%減だ。
ウエルシアHDやツルハHDは消費増税後の反動減が起きた10月を除いてプラスを維持している。マツキヨHDは9月以外はパッとしない。外国人観光客に化粧品や医薬品が人気だが、国内ではドラッグストアの勝ち組とはいえなくなった。これが、ココカラとの統合の背中を押した。
調剤部門の強化を狙う
1994年以来20年以上にわたって業界首位だったマツキヨHDは、17年3月期に首位の座を明け渡した。その後も、ずるずると後退し、業界5位に沈んだ。他社が大胆なM&Aに走るなか、マツキヨはそれに踏み出さなかったのが原因だ。ところが、創業家3代目の松本清雄社長はM&Aに動いた。狙いは調剤薬局事業の強化。高齢化の急速な進展で成長が続く分野で、調剤薬局なしには大型ドラッグストアは生き残れない時代に入った。
調剤事業強化のため、当初、結婚相手と想定したのがスギHDだ。スギHDは業界6位だが、調剤に限るとウエルシアHDに次ぐ2番手。化粧品や日用品のPBに強いマツキヨHDと、調剤に強いスギHDは、相乗効果の大きい組み合わせだった。交渉が大詰めを迎えた18年末に突如、破談となり、統合は幻となる。マツキヨHDが統合後、「スギHDに牛耳られるのでは」と腰が引けたからといわれている。
スギHDは創業者の杉浦広一会長が健在で、創業家が4割強の株式を持つ。一方、マツキヨHDは、清雄社長は創業家3代目だが創業家の出資比率は10%強。両社が経営統合すると、スギHDの創業家が筆頭株主となる。マツキヨHDにしてみれば「庇を貸して、母屋を取られる」かたちになりかねない。
そして、マツキヨHDとスギHDが次の相手としたのが、同じココカラだった。双方からラブコールを送られたココカラはマツキヨHDを選んだ。マツキヨのPB商品群のほうが、スギHDの調剤薬局より魅力的だったということだ。
持ち株会社方式になるのか、直接の合併なのかは未定だが、企業規模が大きいマツキヨHDが主導権を握るのは明らかだ。ココカラをどこまで“マツキヨ化”できるか、これが勝負の分かれ目となる。
ココカラは中小のドラッグストアが合併に合併を重ねてきた企業で、統合に対する心理的ハードルは低い。中小合併の後遺症が収益力の低さとなっており、収益力ではマツキヨHDに劣る。
M&Aが日常茶飯事のドラッグストア業界のなかで、初体験となるマツキヨHDの松本社長がココカラをきちんと取り込めるかどうか。両社は近く、経営統合で最終合意に達する見込み。マツキヨHDが20年3月期決算発表で来期についてどのような数字を出すかが見どころとなる。
(文=編集部)