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三菱スペースジェット(旧MRJ)、未完のまま撤退の可能性も…開発の指揮系統が混乱

文=編集部
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三菱スペースジェット(「Wikipedia」より/CHIYODA I)

 3月期決算企業の株主総会は6月26日、ピークを迎えた。東京証券取引所の調べでは747社が開き、集中率は昨年より2ポイントほど高い33%。分散開催の動きが進んでいたが、2016年以降で最も高くなった。

 3月決算企業は6月末までに総会を開く必要がある。新型コロナウイルスの感染防止のため、延期や総会を2度に分ける「継続会」を推奨してきた。継続会開催は34社(大和総研調べ)にとどまった。7月以降の開催は東証調べで20社である。

ガバナンスのありようを問われたソフトバンクG

 ソフトバンクグループ(SBG)は6月25日、東京都内で株主総会を開いた。孫正義会長兼社長はオンライン形式で出席した。例年、議長を務める孫会長の独演会になる。株主の発言も「99歳まで社長を続けてほしい」と孫礼賛一色だったが、今年の総会は様相を異にした。

 株主の発言で目立ったのは、企業統治(コーポレートガバナンス)のありようについてだった。株主からは「投資先企業のシナジー追求が全体的に甘い。誰が責任をもって強化するのか」「取締役の中に、孫さんの突っ走りに待ったをかけられる人物はいるのか」といった発言が出た。孫会長は「私が暴走しないようにガバナンスを強化する」と語った。社外取締役を2人増やして4人とする議案を可決した。社外の目を増やして、孫会長の判断にブレーキを利かせる役割を担うというのだが、実際に機能するのだろうか。

 新たな社外取締役には早稲田大学大学院の経営管理研究科(ビジネススクール)教授の川本裕子氏に加え、ベンチャーキャピタル経営者のリップブー・タン氏が就任した。一方で、10年以上にわたり取締役を務めた中国アリババ集団の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏が、この総会で退任した。19年末に18年間にわたって社外取締役を務めてきたファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏も退任している。ストッパー役がいなくなったため、ガバナンスに不安をもつ株主の質問が相次いだ。

 退任時期を尋ねる質問が出た。「変わりなく、あと7~8年は元気に続ける。69歳くらいになったら、おおむね60代だ、と言って続けるかもしれない」。70歳以降の続投にも意欲を見せた、と受け止められた。

 株主には孫会長のファンが多いが、この業績悪化では厳しい質問が飛ぶのも当たり前だ。SBGは20年3月期連結決算(国際会計基準)で9615億円の最終赤字を計上した。成長戦略の中核と位置付けてきた投資事業の不振が原因だ。

 投資家は孫会長の“目利き”に疑問を感じている。孫会長は「重視する保有株式の時価総額は6月時点で30兆円に上り、新型コロナウイルスの感染拡大前の昨年12月末より1兆円増えた」とアピールした。3月に発表した4.5兆円の資産売却計画も「8割の調達にメドがついた」とし、「絵に描いた餅と何度も言われたが現金にした。これ以上何が言いたいんだと言い返したい」といつもの孫節も披露した。「孫正義健在なり」と感じた孫ファンは安心したのだろうか。孫会長の取締役再任の賛成率は95.99%に達した。

関電新社長の賛成率は5割台にとどまる

 関西電力は6月25日、役員らによる金品受領が発覚してから初めての株主総会を大阪市内で開いた。3月、岩根茂樹社長(当時)が引責辞任し、副社長だった森本孝氏が社長に昇格した。昨年10月に明らかになった金品受領問題に株主は厳しい視線を向けた。歴代幹部らが福井県高浜町の森山栄治元助役などから約3億6000万円分の小判や商品券などを受け取っていた。

 経営陣の説明責任を求めたり、内向きの隠蔽体質を批判する声が相次いだ。筆頭株主である大阪市の代理人である河合弘之弁護士も問題を追及したが、時間制限で打ち切られた。総会では指名委員会等設置会社への移行や、新会長に内定していた榊原定征前経団連会長や日本製鉄相談役の友野宏氏らを取締役に迎える人事案を承認した。榊原氏は「関電は一連の問題で危機的な状況にある。これまでの経験・知見を総動員して強固なガバナンス体制を構築し、新しい関電の創生に全力で取り組む」とするコメントを出した。

 株主が新経営陣に対しても根強い不信感をもっていることが浮き彫りになった。関電が関東財務局に提出した臨時報告書によると、森本社長の賛成比率は59.6%で、選任された取締役13人の中で最も低かった。事実上の不信任に等しい水準だ。問題発覚前から副社長を務める彌園豊一氏は66.0%、稲田浩二氏は66.1%にとどまった。新会長に就いた榊原定征氏のそれは85.3%だった。

三菱重工は国産旅客機開発計画を見直す

 三菱重工業は6月26日、東京都内で株主総会を開いた。泉澤清次社長は小型ジェット旅客機スペースジェット(SJ、旧MRJ)の開発が遅れていることを陳謝。「新型コロナウイルス感染拡大で、航空機需要全体が打撃を受けている。開発スケジュール全体の見直しを行っている」と述べた。SJ事業に関しては20年3月期に2633億円の損失を計上した。

 総会前に三菱重工は、傘下の三菱航空機(愛知県豊山町)によるスペースジェットの開発体制を大幅に縮小する方針を打ち出していた。国内外で2000人いる同社の従業員を半分程度に減らすことなどが柱だ。カナダのボンバルディア出身の最高開発責任者のアレックス・ベラミー氏が6月末に退任。米国で型式証明などの取得に必要な試験拠点の副社長を務めていた川口泰彦氏が、7月1日付でチーフ・エンジニアに就いた。

 事業化を決めた08年当時、開発の中心はボーイング向けなどの部品を製造する名古屋航空宇宙システム製作所(名古屋市)のメンバーだった。開発方針をめぐり、工場側と本社に溝が拡大。18年、宮永俊一会長(当時は社長) がベラミー氏をトップに据える体制に変えたが、わずか2年で、再度修正を迫られた。

 ベラミー氏ら外国人主体の推進部隊とは別に、19年に社長に就任した泉澤氏を中心とした航空機の事業部が発言力を増し、指揮系統が2つになった。意思疎通がうまくいかず、これが開発の遅れの一因となった。株主からスペースジェットの開発遅延の理由を問う声が上がり、担当役員は「国産初のジェット旅客機なので経験不足は否めない」と釈明した。

 子会社で開発の主体の三菱航空機について、米ボーイングの傘下入りを提案する株主もいたが、担当役員は「あらゆる生き残り策を考えている」と述べるにとどめた。国産初のジェット旅客事業の継続には暗雲が漂っていることを見せつけた総会だった。泉澤社長の賛成率は96.59%。スペースジェットの幕引きをはかる可能性もあると指摘されている。

株主の議決権行使はコロナ禍でも盛ん

 企業側の来場自粛要請で、会場に来ない株主が多かった。軒並み来場者は例年の10分の1近くになり、所要時間も半分以下になった。来場を控えた株主は議決権を行使し、株主としての意思をはっきり表明した。社長・役員の選任議案に「ノー」を突きつける株主が数多く出た。

 三越伊勢丹ホールディングスの株主総会では、杉江俊彦社長の選任議案の賛成率が78.9%となった。20年3月期は新型コロナの影響を受け111億円の最終赤字に転落した。信任投票の目安とされる80%を下回った。業績不振に対して個人投資家が厳しい姿勢を見せた結果だ。

 20年3月期決算の純利益が6割近く減少した日立造船では、谷所敬会長兼CEO(最高経営責任者)の賛成比率が63.36%と低かった。事実上の不信任に近い数字だ。NECのメインバンクは三井住友フィナンシャルグループ(FG)である。三井住友FGの太田純社長を社外取締役に起用する議案を株主総会で諮ったが、賛成は59.3%と低率だった。社外取締役の独立性について株主が、実に辛辣な判断を下した。

 トヨタ自動車のメーカー商社である豊田通商がトヨタ紡織の豊田周平会長を社外取締役として選任する議案の賛成率は62.0%。トヨタグループ内での役員のやり取りには、機関投資家からも「否(ノー)」が示された。

 新しい動きとして関心を集めたのが環境への対応だ。みずほFGの株主総会では、NPO法人の気候ネットワーク(京都市)が脱炭素の行動計画を年次報告書で開示するよう求めた。この株主提案は否決されたが34%の支持を得た。この数字はかなりの説得力を持つ。みずほFGの経営陣は来年の株主総会までに、なんらかの回答を示さなければならないだろう。大手企業は気候変動へ前向きな対応を開示しなければならなくなっている。

(文=編集部)

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