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ニトリ、時価総額でイオンを逆転…アパレル本格進出へ、ユニクロとの“二強”時代幕開け

文=編集部
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ニトリ本店(「Wikipedia」より/禁樹なずな)

 家具・インテリアチェーンのニトリホールディングス(HD)の20年3~5月期の連結決算は、売上高が前年同期比3.9%増の1737億円、営業利益が22.3%増の372億円、純利益は25.4%増の255億円だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府の緊急事態宣言を受け、最大で110店舗が臨時休業したものの、巣ごもり需要や在宅勤務向けの家具の販売が伸び、EC(電子商取引)も好調に推移した。具体的には収納整理やキッチン・ダイニング用品、ホームオフィス家具が売れた。在宅勤務の増加に伴いパソコンデスクやワークチェアなどがよく動いた。臨時休業の受け皿としてECが機能した。週によっては通販が前年比2.7倍と大きく伸び、3~5月期全体では40.9%増の168億円と過去最高となった。

 似鳥昭雄会長は記者会見で、コロナ特需ともいえる好決算について、「家の中にいることが増え、長く使っていた家具を改めて買い替えたり、インテリアのコーディネートをし直したりという家庭もあった」と説明した。一方で「こういう状態がずっと続くとは思っていない」とし、「来期(22年2月期)も増収増益をするために今から手を打っていく」と述べた。

 新規事業の柱はアパレルだ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響でアパレル業界が深刻な不況に見舞われている。「不況の時こそチャンス」が持論の似鳥氏の面目躍如だ。「ショッピングセンターから退店したいと考えている企業が出てきている。いい場所が多数出てくる可能性がある。良いM&Aがあれば、大いに検討したい」とアパレル業界への本格進出に意欲を示した。

 21年2月期の連結業績は従来予想を据え置いた。売上高は前期比1.7%増の6532億円、営業利益は4.4%増の1122億円、純利益は6.0%増の757億円を見込む。この通りなら34期連続の増収増益になる。年間配当予想も前期比7円増の115円と据え置いた。「上半期(20年3~8月期)が終わって売り上げが10%以上、利益が30%以上増えそうなら、(通期決算を)増額修正する」(同)。通期の業績の上方修正に含みを残した。

時価総額は小売業界3位 イオンを抜く

 ニトリHDの株価(株式分割考慮ベース)は7月1日、上場来高値の2万1645円をつけた。6月2日に初めて2万円の大台に乗せて以降、連日のように上場来高値の更新を続けた。年初からの株価の上昇率は27%。日経平均株価がコロナ禍で、この間の伸び率がマイナス5%と落ち込むなか、ニトリは大きく躍進した。ファーストリテイリングやセブン&アイHDなどの小売り大手の株価と対照的だ。

 7月1日終値時点のニトリHD株の時価総額は2.4兆円。ファストリの6.5兆円、セブン&アイHDの3.0兆円に次いで小売業界第3位。小売業売り上げ1位のイオン(2.1兆円)を5月下旬から、ずっと上回っている。

 ニトリHDは商品の調達、販売の両面で他の小売業ほどコロナの悪影響を受けなかった。アパレルは、感染が広がった中国の生産拠点が稼働を停止し、商品を調達できなくなるケースが相次いだが、ニトリは大半の商品を感染が軽微だったベトナムの工場で生産していたため、欠品を免れた。

 販売面では百貨店内にある店舗は臨時休業したが、主力店舗が外出自粛の影響が小さい郊外に集中していることで被害は少なかった。ニトリはコロナ耐久力が抜群だったということだ。

「巣ごもり消費」から「リベンジ消費」へ

 新型コロナウイルスは消費行動に変化をもたらした。外出自粛する人が急増していることを背景に「巣ごもり消費」という言葉が生まれた。ダイエット・健康、本・雑誌・コミック、ゲーム・おもちゃ、食品など。値が張るものでは家電や家具・インテリアだった。

 緊急事態宣言で止まっていた人の動きが、解除を受けて徐々に戻りはじめた。それとともに、「リベンジ消費」への期待が高まった。リベンジ消費とは、コロナ・ショックにより外出を制限され、不要不急の買い物を我慢してきた人々の購買意欲の高まりを指す。「リベンジ消費」されやすい商品・サービスは、ファッション、化粧品・美容グッズ、レジャー、宿泊施設、スポーツ・ヘルスケア、家電、家具・インテリアなどだ。

 コロナ後の消費は二極化する。コストパフォーマンスの良いものを重視する傾向がいっそう強まる。コスパに優れ、機能性が高いニトリやユニクロの商品が選好されやすくなる。ニトリは「リベンジ消費」の本命といわれている。既存店の売上推移を見ても、「巣ごもり消費」から「リベンジ消費」への移行を、はっきりと読み取ることができる。

【ニトリの月次国内既存店売上高の推移】(前年同月比、単位%)

            20年3月   4月   5月   6月

既存店売上高     10.9       ▼4.0       0.6      47.4

客数                     13.1       ▼1.0       6.7      43.8(▼はマイナス)

 既存店の売上は緊急事態宣言が発令された直後の4月に前年同月を4%下回ったが、外出自粛やテレワークの継続で、収納用品やキッチン・ダイニング家具の売れ行きが徐々に上向いてきた。5月は0.6%増。臨時休業した110店舗は国内店舗の5分の1にあたる。このため「(前年比)90%を割るんじゃないかと思っていた」(似鳥氏)が、開いていた店が前年実績を2~3割上回った。「巣ごもり消費」の効果がはっきり出た。

 5月25日、緊急事態宣言が解除された。6月(5月21日~6月20日)の既存店売上高は47.4%増、客数は43.8%増となった。「10万円の特別給付金が入ったり、外食をやめたり、洋服を買わなくなったりした予算を、家の中に回しているのではないか」(同)。いままで禁欲的にならざるを得なかった人々が「リベンジ消費」に動いたということだろう。

 似鳥会長は「新たな消費動向に対応する商品開発を急ぎ、来年以降、物流施設にも投資する」と語る。4月の会見ではコロナ禍の景気後退で「建築費が下がり、手当て済みの土地への投資や出店のチャンスが増える」としていた。

(文=編集部)

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