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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

携帯料金値下げに反抗したドコモ社長“更迭”の舞台裏…菅首相とNTT社長の怒り

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
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NTTドコモ代々木ビル(「Wikipedia」より)

 NTTドコモは9月29日、12月1日付で代表取締役社長を現在の吉沢和弘氏から副社長の井伊基之氏に交代する人事を発表した。親会社NTTの澤田純社長が、ドコモがKDDIとソフトバンクとの争いでかつての業界トップの座を追われ、収益率では携帯大手3社中最低という体たらくに陥る事態を招いた吉沢氏に不満を募らせたことによる「事実上の更迭」だ。代表権を失い平の取締役となる吉沢氏は、携帯料金引き下げを至上命題にする菅義偉首相と総務省の強硬姿勢に不満を隠さなかったことでも、菅首相の怒りを買っていた。

会見で親会社社長からけなされる

「吉沢さん、ごめんね。ドコモはシェアこそ1位だけど収益は3番手だ」-―。

 29日のオンライン会見で澤田社長は隣に座る吉沢社長の経営手腕に率直な疑問を呈した。澤田氏は複数回「吉沢さん、ごめんね」と断りながら、ドコモの状況についての不満を述べた。

 吉沢氏は2016年に社長に就任して以来、今年春に発表された人事でも続投が決まり、「2期4年」の慣例を破る5年目を迎えていた。もともと今回次期社長に決定した井伊氏が6月の株主総会後にドコモ副社長に就任したことで、「今年開催されるはずだった東京五輪が終了した後の12月に社長交代する予定だった」(ドコモ関係者)。ただ、新型コロナで東京五輪が1年延期になったことで吉沢氏が花道を飾ることができなくなったばかりか、社長交代後は「特命担当取締役」という降格ポストに押し込められることになった。

菅主導の法改正を批判

 吉沢氏は岩手大学工学部を卒業後、1979年にNTTに入社した。ドコモ設立時から同社に在籍した「初のプロパー社長」で、一世を風靡した「ショルダーフォン」を開発したという、まさに携帯電話業界のパイオニアだ。2016年の社長就任時には人工知能(AI)分野やクラウド、IoTなど法人ビジネスを強化していく方針を打ち出した。

 ただ、携帯電話市場が飽和するなかで、個人市場が頭打ちになったことで、営業収益の3分の2を占める携帯電話料金などを含む通信サービス部門が伸び悩む状況を打開できなかった。ただでさえ厳しい状況の中で、総務省が19年に打ち出した携帯料金引き下げを目的とした電気通信事業法の改正で、「最大4割下がる」料金プランを提示した結果、携帯通信事業の収益が大幅減となったことも、業績の足を引っ張った。

 吉沢氏はこの法改正後も国内市場で利用者のキャリア間の乗り換えが進まなかった現状について、「法改正で端末代金と通信料金を分離したことが端末代の高騰を招き、新しくて性能のよい端末が目当てで乗り換える利用者の動きを鈍くしたと言ってはばからなかった」(前出のドコモ関係者)という。当然、このような姿勢は菅首相や総務省幹部から「そういう発言をする人間がトップでいること自体、許しがたい」(同省幹部)との反感を買うことにつながっていった。

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