変化を怠り赤字に陥った「川崎重工」、なぜ突如V字回復?急速な“AI企業化”の衝撃の画像1
川崎重工業の工場(「Wikipedia」より)

 これまで航空機向けのジェットエンジンや、鉄道車両などの製造に注力してきた川崎重工業の事業内容に変化の兆しが出ている。コロナショックの発生によって同社の収益は大きく落ち込んだものの、昨年10~12月期、同社の精密機械やロボット関連の受注と収益が持ち直し始めた。

 今後、特に注目したいのは、川崎重工が人工知能(AI)などのIT先端技術と自社の技術を結合して、新しい製造業のプラットフォームの創出に取り組むことだ。川崎重工にとって、ロボット関連の技術をさらに発揮するために、大胆に事業ポートフォリオの入れ替え(ポートフォリオ・トランスフォーメーション)を進める重要性は増している。

 工作機械などの分野で日本企業は国際的な競争力を発揮している。それに加えて、国内株式市場はカネ余りに支えられた“金融相場”から、企業業績の拡大が株価を支える“業績相場”にシフトしつつある。当面、日本株は上昇基調で推移する可能性がある。川崎重工の経営陣は、スピード感をもって、成長期待の高い事業の運営体制を強化するチャンスを迎えている。

これまで収益率の低下傾向を辿ってきた川崎重工

 近年、川崎重工の収益率は低下してきた。同社経営陣にとって新しい収益の柱(稼ぎ頭)を確立することが難しかったということだ。リーマンショック後の2009年度から2014年度にかけて同社の投下資本利益率(ROIC)は上昇した。その間、中国経済の経済対策などによって世界経済が回復し、川崎重工の手掛ける航空機関連の部品、二輪車やレジャー用の車両、鉄道車両、エネルギー関連設備への需要が拡大した。

 しかし、2014年度に10.4%に達した後、川崎重工のROICは低下基調に転じた。2019年度のROICは4.2%に低下した。2020年度の営業損益は赤字に陥る見通しだ。それが示唆することは、2015年度以降の川崎重工が世界経済の環境変化に対応することが難しかったことだ。

 特に、2015年度から2016年度にかけて同社のROICは9.4%から5.0%へ大きく低下した。その一因として、中国経済の減速の影響は大きい。2015年半ばに中国では景気減速への懸念が高まり、本土の株価が大幅かつ急速に下落した。それに加えて、中国では灰色のサイと呼ばれる債務問題も深刻化した。また、中国では国有・国営企業を中心に産業界が再編され、鉄道車両分野などで価格競争力を発揮する企業が増えた。

 そうした状況下、川崎重工の経営陣は変革の必要性を感じつつも、ある意味では、過去のビジネスモデルを重視する心理から脱しきれなかったように見える。その上に2020年春先にコロナショックが発生し、一時、世界経済は大きく混乱した。その結果、川崎重工の主力事業であった民間航空機向けのエンジンや鉄道車両関連の事業を取り巻く環境の厳しさは追加的に増した。

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