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東証「プライム市場」判定、企業が戦々恐々…脱落なら株価暴落や資金調達に支障の懸念も

文=編集部
東証「プライム市場」判定、企業が戦々恐々…脱落なら株価暴落や資金調達に支障の懸念もの画像1
「Getty images」より

 2022年4月に予定される東京証券取引所の市場再編で、最大の注目点は最上位市場の「プライム」にどの企業が入るかだ。プライム市場の上場維持基準を満たすことができれば、新たな基準で算出されるTOPIX(東証株価指数)の構成銘柄となる可能性が高い。日本銀行が超金融緩和政策の一環として実施している上場投資信託(ETF)購入の対象は、TOPIX連動型が中心になっている。

 プライム市場から脱落するデメリットは計り知れない。日銀の購入対象から外れるばかりか、株価指数に連動して運用をしているパッシブファンドから大量に持ち株が売りに出される可能性が高い。

 そうした事態に陥れば株価は暴落。社会的なブランドも毀損し、銀行からの借り入れをはじめとする資金調達にも影響が及ぶ。プライム市場への残留は、企業にとって最優先の経営課題となっている。プライム入りの基準のうち重要なのが流通株式の比率と時価総額の2つだ。流通株式の比率は35%以上、時価総額は100億円以上としている。

 6月30日が東証新市場区分判定の基準日だった。東証1部に上場している2191社のうち、1527社が一次判定で条件をクリアした。一方、664社(30.3%)がクリアできず。東証は22年1月11日にプライム上場企業の一覧表を公表する予定だ。

 ゆうちょ銀行は7月9日、プライム落ちの判定を受けた。同社株の88.99%を日本郵政が保有し、流通株式比率の要件を満たせなかった。今回、プライム落ちの判定が出ても、残留の道はある。基準達成に向けた計画書を東証に提出し、投資家に開示すれば、「経過措置」を受けることができる。ゆうちょ銀行は計画書を出す方針だ。

 ゆうちょ銀行は時価総額が4兆円超あり、東証としてもゆうちょ銀行は外したくないというのが本音。日本郵政は21年度から5年間の中期経営計画で、かんぽ生命保険とゆうちょ銀行への出資比率を5割未満とする目標を掲げた。かんぽ生命は5月17日に自社株買いを実施。郵政の出資比率は49.9%(自己株式を除く議決権ベース)に下がった。

 ゆうちょ銀行の保有比率は、どうやって落とすのか。自社株買いをするのが早道だ。従業員に持たせる方法もある。売却を一定期間制限する「譲渡制限付株式報酬制度」の導入で流通株式の比率を向上させる手もある。「政府と証券会社が話をつめていくことになろう」(大手証券会社のアナリスト)。それでも、ゆうちょ銀行の流動性比率を35%以上にまでもっていくのは、かなりハードルが高い。「そもそも論になるが、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社同時上場に無理があったのではないのか」(市場関係者)。

 日立物流もプライム落ちの判定だったが、実際には5月の時点で自己株式を消却し、流通株式比率の基準を達成した模様だ。ZOZOは創業者の前澤友作氏の持ち株を譲り受けるなどして対応したとしている。「前澤氏は『プライム・プレミアム』のおかげで260億円分の持ち株を売った。これで今まで以上に宇宙旅行に熱を上げることができる」(ZOZOの関係者)。「前澤氏の持ち株をZOZOが再び引き取ったのは、手切れ金と考えているからではないか」といった冷めた声がZOZO社内から聞こえてくる。

 トヨタ系のトヨタ紡織も筆頭株主のトヨタ自動車が持ち株を売却した。三菱食品は親会社の三菱商事(21年3月末時点で60.9%を保有)から自社株を買い取った。東証によると、親族などをあわせて議決権の過半数を占める支配株主がいる上場企業は、7月28日時点で618社ある。日産自動車の子会社である日産車体(日産の持ち株比率は43.0%)は、現時点では流通株比率を満たしていないとみられている。

 現在、東証1部に上場していない有力企業がどう行動するのかも、気になるところだ。フリマアプリのメルカリはマザーズ、日本マクドナルドホールディングスはジャスダックという新興市場に上場している。両社とも「プライム市場の基準をクリアしている」(前出の大手証券会社のアナリスト)。

 創業家の持ち株が多い食品メーカーや、メガバンクの傘下に入っている消費者金融など、判定結果を明らかにしない企業は少なくない。「基準を満たさなかった」と情報開示した東証1部上場企業の数は、8月現在、10社を少し超えただけの状態という。

 例えば「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(柳井正会長兼社長)は、柳井一族が株式を支配しており、流動化比率を35%以上に高めるために、どのような施策を打ち出すかが注目されている。業績の下方修正に加え、「プライム市場に適合」の発表がないことから市場関係者は疑心暗鬼になっている。このためだろうか。株価は大きく下落し、8月3日には7万2430円の年初来安値をつけた。年初来高値は3月2日の11万500円だから35%下落したことになる。

 どの市場区分を選ぶかを上場企業が申請するのは9月以降になる。タイムリミットは年内とみられ、投資家にとっても重要な情報を積極的に開示しようとしない企業があることが不信感を募らせている。株主ファーストとはなっていないのが実態だ。

独立社外取締役は3分の1

 プライムに残るためには、もうひとつ隠れたハードルがある。「より高度なガバナンスが求められるガバナンスコードで独立社外取締役は3分の1と定められている」(外資系証券会社のアナリスト)。

 東証1部上場企業の72.8%が社外取締役の条件を満たしているとされるが、裏を返せば、残り27.2%は条件を満たしていないということだ。「社外取締役争奪戦のバブルが起きることは必定だ」(前出のアナリスト)。社外取締役の1社当たりの年間報酬は上昇を続け、1500万円を超えてきた。1、2年前には「1000万円が相場」(同)だったから、まさにバブルである。

 1社当たり1500万円として数社やれば、かなりの金額になる。弁護士や学者、有名メーカーの元経営者などがバブルの恩恵に浴することになりそうだ。三菱電機や東芝の社外取締役が機能していなかったことが問題になり、「元官僚の人気は急落中」(社外取締役の動向に詳しい人材派遣会社)という。

 一方、流通時価総額が100億円を下回る地域金融機関は暑い夏を過ごしている。持ち合い株の削減や自社株買いなどの対策を必死で練っている。「無理してプライム市場で上場を維持するコストを考えれば、金融機関としての本来の使命を考え直す良い機会になるのではないか」(有力地銀の頭取)との正論もあるが、経営トップが体面を重んじる“地方の殿様”が地銀、第2地銀の特徴である。

(文=編集部)

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