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トヨタ、EV本格参入で下請けメーカーが戦々恐々…部品点数激減、廃業に拍車か

文=編集部
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トヨタ自動車
トヨタ自動車本社(「Wikipedia」より)

「あれだけハイブリッド推しだったトヨタも、とうとう電気自動車(EV)に本腰を入れてきた以上、部品メーカーにはますます厳しい時代だよ」

 トヨタ自動車が10月に新型EV「bZ4X」を来年半ばから日本や北米、中国、欧州など世界各地で順次発売すると発表したことを受け、ある自動車部品メーカーの経営者はこう肩を落とした。EVではガソリン車に比べて部品点数が激減するため、部品メーカーは事業縮小を余儀なくされると戦々恐々だ。

トヨタ、25年までにEVを15車種に拡大

 トヨタのbZ4Xはスポーツ用多目的車(SUV)タイプで、SUBARU(スバル)と共同開発したEV専用車台を採用したことなどが特徴だ。トヨタは2025年までに新型車9車種を含む15車種のEVを販売する方針を掲げており、今回のbZ4Xはその第一弾となる。

 トヨタは「プリウス」などのHVを主軸に据え、EVへの進出には慎重だった。日本国内の自動車関連の雇用は550万人ともいわれるが、EVの部品数はガソリン車の3万点から2万点程度に減るとされており、部品メーカーの受注量の激減は避けられない。トヨタは自動車業界最大手として雇用維持の観点からも、過度なEV化に控えめな姿勢をとってきたが、国内のみならず世界各国とのEV競争に乗り遅れるわけにはいかず、新型EV投入に踏み切った。

「よその完成車メーカーに営業するしかない」「技術生かして別の業界に進出」

 実際にトヨタのEVに関する計画が具体的に進むにつれ、部品メーカーの心中は穏やかではなくなっている。今回のbZ4XのEV専用車台を共同開発したスバルが製造拠点を置く群馬県太田市は、典型的な企業城下町だ。自動車業界の動向は市の経済に直結する。同市でスバル向けの部品をメインに製造するメーカーの社長はこう話す。

「我々部品メーカーの間では(1)スバル以外の完成車メーカーへの営業、(2)研磨など加工技術を別の業界に使うといった動きが進んでいる。うちの会社では(1)も数年前からやってきたが、こちらは系列の壁があって難しいし、大っぴらに動くとスバルから反感を買う可能性がある。現実的には(2)で、うちの場合は研磨技術を家電メーカーの部品で使おうとしている。航空分野も狙ってきたが、三菱重工の国産小型ジェット旅客機(スペースジェット)が挫折してからは正直、期待薄だ」

太田市の企業、黒字での休廃業・解散が過去最高、高齢化も進む

 群馬県では同業者の廃業にも危機感が高まる。帝国データバンクの報告によると、新型コロナウイルス禍が直撃した20年の県内企業の休廃業・解散は891件で3年連続減少したが、持続化給付金といった官民一体の支援が奏功したためで、実態が深刻だったことに疑いはない。この報告で注目すべきなのは、(1)黒字での休廃業・解散が多いこと、(2)休廃業・解散した経営者の高齢化が進んだことーである。

(1)は20年の業績が黒字の状態で休廃業・解散した企業は約6割と過去最高だった。コロナ禍で先行きが見えないなかで余裕があるうちに事業を畳もうと判断する経営者が増えたと見ていいだろう。

(2)は20年に休廃業・解散した企業の代表者の平均年齢は69.3歳で70歳近く、集計開始以降で過去最高となった。休廃業・解散した企業の経営者で70代以上が約6割と高齢化も進んだ。

 企業の業種では、製造業は建設業、サービス業に続き3位と高い。市町村別の件数では太田市は、高崎市(184件)、前橋市(162件)に次ぐ101件と第3位だ。先の部品メーカー社長もこうした現状について肩を落とす。

「同業者の廃業については、群馬みたいな地方ほど増えてるんじゃないか。私の近所でもここ2年で3件倒産した。数十年もやってきた社員数十人の会社もあった。特徴的なのは、普通、倒産だと支払いが遅れているなどの噂が立つものだが、それがないこと。つまり、業績が悪くもないのに、先行きを悲観して会社を畳むケースが増えている。後継者がいなかったことも大きいと思う。コロナ禍から立ち直ってもEV化で先行きが暗く、昨今の車離れもある。子供に継げとは強くは言えない気持ちは痛いほどわかる」

日産系列の部品メーカー「階層が下の下請けほど厳しい」

 トヨタだけでなく、日本国内でのEVのパイオニアである日産自動車の部品メーカーも対応を迫られている。日産の取引先企業で構成される「日翔会」の加盟メーカーはこう話す。

「EV化で部品点数が減るのは仕方ないが、階層が下になればなるほど悲惨だ。新事業に踏み出す体力がないし、系列ごとに部品も違うから特定の完成車メーカーへの依存度も高い。

 日産は現在の内田誠社長になってから部品メーカーの意見を取り入れる姿勢を見せてはいるが、十分とはいえない。昨年の日翔会の会合では『計画と実際の生産量の乖離が激しい』『値下げ要請がきつすぎる』などの不満が出ていた。世界中がEV競争の波にのまれるなかでは、部品メーカーはより条件のいい取引先を探すしかない。EVでは自動車メーカー以外の企業も参入してきているから、うまく食い込めば商機があるかもしれない。日本の自動車メーカーは良い部品メーカーをしっかり囲い込んでおかないと取り返しがつかないことになるだろうね」

 21年の自動車業界は、コロナ禍に加え、世界的な半導体不足という二重苦に見舞われた。足元では半導体は生産回復の兆しは見え始めたものの、部品調達網の本格回復にはまだ時間がかかる見通しだ。22年は自動車部品メーカーにとって、依然として厳しい環境が続きそうだ。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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