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リニア、最難関工事に入る前で事故続出、難問が露呈…工事着工の3日前に地元へ通知

文=編集部
リニア中央新幹線
営業運転に投入予定の改良型L0系(「Wikipedia」より)

 リニア中央新幹線の静岡工区の着工ができずにいる。有識者会議の中間報告が大きな節目だったが、先行きが見通せない状況に変わりはない。2027年開業に向けた建設作業はすでに1年半遅れており、「開業が29年以降になるのは必至の情勢」(関係者)だ。

 JR東海と大井川の水量など水問題を懸念する静岡県との対立が続いているためだ。国土交通省の有識者会議はJR東海の主張に沿った中間報告をまとめたが、静岡県側は「議論不足」として対決姿勢を崩していない。

 JR東海の金子慎社長は2021年12月22日、名古屋市で開いた定例記者会見で、27年の開業が困難になっているリニア中央新幹線の東京・品川―名古屋間の見通しについて「めどが立っているわけではない」と改めて述べた。静岡県や流域市町との協議に関しては、「地域の理解と協力を得るためにさまざまな取り組みをしなければならない」と対話を重視する姿勢を強調したが、基本的には「中間報告を踏まえ、しっかり対応したい」(金子社長)ということだ。

 リニアは2014年、国の認可を受けて着工した。静岡県を通る区間は長さ25.0キロメートルの南アルプストンネル内の10.7キロメートルだ。南アルプストンネルを掘れば、水は山梨県側に抜ける。トンネル工事により8市2町の約60万人が利用する大井川の水量が減る恐れがあるとして、静岡県の川勝平太知事が県内の工事の許可を出していない。

 20年4月、国交省は水問題をめぐる有識者会議を立ち上げ、21年12月19日、有識者会議は中間報告をまとめた。同報告書によると「工事で出た湧き水を導水路ですべて川に戻せば、中下流域の流量は維持される」と結論づけた。静岡県は工事中に湧き水の一部が山梨県側に流出することを懸念していたが、有識者会議は「山にたまっている豊富な地下水によって流出分は補われる」とした。JR東海の主張に沿った結論になっている。

 ただ、大井川流域の住民が水不足で苦労した歴史や、これまでのJR東海の説明では地元の納得を得られなかった経緯を踏まえ、「地域の不安や懸念が払拭されるよう真摯な対応を継続すべきだ」と報告書は指摘した。

 斉藤鉄夫国交相は12月21日、JR東海の金子社長と会い、静岡工区の未着工問題を解決するために地元の懸念払拭に務めるよう行政指導を行った。国交相が企業のトップを呼んで口頭指導するのは、法令違反などがないケースでは異例なことである。

JR東海と静岡県の溝

 大井川の流量の減少を懸念する静岡県が悪しき先例として挙げるのは、東海道線丹那トンネル(静岡県熱海市函南町、1934年開通)である。この工事では大量の湧水が発生し、周辺が水枯れしただけでなく、67人が水の犠牲になった。この地元で語り継がれている悲劇が、大井川流域の住民や自治体がリニアの南アルプス工事を危惧し、県が着工に同意しない一因となっているとされる。

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