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投資ファンド、セブン&アイにセブン-イレブン分離を要求か…そごう・西武売却の真相

文=編集部
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セブン-イレブンの店舗

 物言う株主(アクティビスト)と経営陣が共生する時代を迎えた、といわれるようになった。かつては、企業に保有株の買い取りを迫る攻撃型の物言う株主と、それに反発する経営陣が買収防衛策で対抗するなど丁々発止の対立が当り前だったが、物言う株主は経営陣と“ウィンウィン”の関係を目指すようになった。

 共生時代の代表格が米サンフランシスコに本拠を構えるヘッジファンドのバリューアクト・キャピタル・マネジメントである。日本で同社の名が広く知られるようになったのがオリンパスへの社外取締役の派遣だった。バリューアクトは18年5月、オリンパスの5.04%を保有する大株主として登場。19年6月に開かれたオリンパスの株主総会で、バリューアクトのパートナー、ロバート・ヘイル氏が、オリンパスの社外取締役に就任した。オリンパスは医療機器事業へ経営資源を集中するため、20年6月、オリンパスペンとして一世を風靡したカメラ事業から撤退。21年12月には祖業である顕微鏡などの科学事業を切り離した。

 JSRの21年6月の株主総会で、7.33%を保有するバリユーアクトのヘイル氏が社外取締役に就任。JSRは旧社名の日本合成ゴムの由来である祖業のエラストマー(合成ゴム)事業を手放す決断をした。現在はバイオ医薬の製造・開発委託のライフサイエンス事業に経営のカジを切っている。

 伝統事業ほど社内のしがらみが強いとされるが、両社の事例は物言う株主の「外圧」を上手に利用して、経営陣が事業の「選択と集中」を断行したという見方が成り立つ。物言う株主と経営陣がウィンウィンの関係になったといわれるゆえんである。

 バリューアクトが次なるターゲットにしたのがセブン&アイ・ホールディングス(HD)である。セブン&アイHDは、21年5月に手続きを完了した米国のガソリンスタンド併設型コンビニ、スピードウェイの2兆円超の買収をすべて借入金でまかなうなど、財務は悪化をしている。経営改善策を提案する絶好のチャンスだった。

 百貨店部門の売却は決めたが、総合スーパー、イトーヨーカ堂はどうするのか。

セブン-イレブンのスピンアウトを要求

 バリューアクトは21年5月12日、セブン&アイHD株を3800万株以上保有していると発表した。当時の株価で換算すると1740億円を超える。3800万株は全発行済株式の、およそ4.3%に相当し、第4位の大株主になる。バリューアクトは声明で「セブン&アイHDにとってコンビニのセブン-イレブンは重要な中核事業であり、強力なグローバルブランド。フランチャイズビジネスに注力すれば、セブン-イレブンの企業価値は、さらに高まる」と述べた。

 ロイターによると、バリューアクトは投資家向けレターのなかでセブン&アイHDの企業価値の向上策に言及したという。低収益事業のリストラを進め、セブン-イレブン事業に経営資源を集中するか、同事業をスピンアウト(分離・独立)すれば、時価総額は2倍以上になると主張しているというのだ。セブン&アイHDは15~16年、著名アクティビスト、ダニエル・ローブ氏率いる米サードポイントから「不採算事業のイトーヨーカ堂を分離し、儲かっているコンビニ専業に専念すべきだ」との要求を突き付けられた。ローブ氏の揺さぶりによって、セブン&アイHDの“中興の祖”といわれた実力者、鈴木敏文会長が辞任する事態に発展した。創業家、伊藤家の代替わりで鈴木会長が退任に追い込まれたと取り沙汰された。

 だが、総合スーパーのイトーヨーカ堂はセブン&アイHDの祖業であり、死守すべき事業だとの見方が強い。同じ“お荷物”でも鈴木氏が買収した百貨店、そごう・西武とは重みが違う。イトーヨーカ堂に手をつけることはタブーだと見られている。

 ロイターは1月26日、バリューアクトは「株主の懸念に耳を傾け、売却の可能性を含む戦略的選択肢を検討するよう求めた書簡を公開した」と伝えた。取締役会に宛てたものだ。バリューアクトは2月上旬に予定されている次回の定例取締役会の後に、要求に対する公の回答を聞きたい、としている。ロイターによれば、「社外取締役のみで構成する『戦略検討委員会』を設置し、部門の売却やスピンアウトまたは第三者との事業統合が、同社および株主により優れた価値と戦略的利益をもたらすかどうか検討するよう求めた」という。

そごう・西武を売却の方向で最終調整

 セブン&アイHDは複数の投資ファンドや事業会社を売却先として西武・そごうの百貨店部門の売却の検討を始めており、2月中にも選定を始める考えだ。売却額は2000億円規模に上るとみられている。セブン&アイHDは2006年にミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を買収した。現在、西武池袋本店(東京都豊島区)やそごう横浜店(横浜市)など10店舗(そごう6店舗、西武4店舗)を展開している。秋田、埼玉、千葉、神奈川、福井、広島の各県にも店舗を持っている。

 しかし、コロナ禍での休業や営業時間の短縮を繰り返し、業績は一段と悪化している。インターネット通販の急激な台頭もあり、そごう・西武の21年2月期の最終損益は172億円の赤字だった。営業段階で66億円の赤字になり、「前期(22年2月期)も赤字が続いた」(セブン&アイHD関係者)。これが百貨店部門を売却する引き金になったとの見方が強い。「06年に子会社にして以降、初めて百貨店部門が営業赤字になった衝撃は大きかった」と関係者は証言する。

ヒューリックと組んでヨーカドー再生を図る

 その一方で、イトーヨーカ堂は生き残るために総合スーパーの店舗リストラに乗り出した。21年9月23日、横浜市鶴見区に商業施設「LICOPA(リコパ)鶴見」が開業した。もともとは総合スーパー(GMS)「イトーヨーカドー鶴見店」。約半年間の改装を経てショッピングセンターに生まれ変わった。リコパ鶴見の1階に食品スーパーに業態転換したイトーヨーカドーが入店した。

 不動産大手のヒューリックがこのプロジェクトを手掛けた。ヒューリックは、電通本社ビルやティファニー銀座ビルなど高額物件を手掛けたことで知られている。都心の大型物件だけでなくヨーカドーが入居する郊外の店舗も買い進めてきた。ヒューリックは鶴見店を18年、JXTGホールディングス(現・ENEOSホールディングス)から取得。同時期に近隣の川崎店を、さらに21年8月に千葉県の四街道店の不動産を手に入れた。福島県の福島店も保有している。

 セブン&アイHDはショッピングセンターへの進出で立ち遅れていた。ライバルのイオンがイオンモールを設立して商業施設の運営に積極的に進出し、快進撃を続けているのを指をくわえて眺めているしかなかった。そこで、ヒューリックと組んで、ショッピングセンターの運営に乗り出した。不振の総合スーパーを食品スーパーに切り替えるのが手始めだ。リコパ鶴見はイトーヨーカ堂の店舗リストラのモデルケースといえる。今後もGMSを商業施設に変身させて、収益の改善を急ぐことになる。

 百貨店を売り切って、「物言う株主」を味方につける作戦である。イトーヨーカ堂がしっかり利益を上げることが、百貨店を切り離す作戦の成功を担保しているわけだが、ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスがユニーのGMSを再生させたが、同じように総合スーパーの業績を浮上させるのは至難の業だ。
(文=編集部)

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