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セブン「日販」じわり伸長、なぜファミマとローソンを14万円も上回る?

文=編集部
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セブン-イレブンの店舗

 1974年、東京江東区豊洲にセブン-イレブン1号店が誕生して以来、およそ半世紀。コンビニエンスストアの店舗数は5万5797店に達した(日本フランチャイズチェーン協会調べ。21年7月末時点)。東日本大震災以降、コンビニは生活拠点として地域社会に貢献し、日常生活に欠かせない存在となった。小売業の「勝ち組」と称されたコンビニだが、新型コロナウイルス感染拡大の直撃を受け、2020年度決算ではコンビニ大手3社の売り上げが初めて前年度実績割れとなった。

 有事に強いはずのコンビニに何が起きたのか。ポストコロナ時代に向けてコンビニはどこに向かおうとしているのだろうか。

 コンビニ大手3社の直近の業績は、以下のとおり。

【セブン-イレブン・ジャパン(国内2万1111店=21年7月末時点)】

               21年2月期        21年3~5月期

・チェーン全店売り上げ  4兆8706億円(▲2.8%)    1兆2319億円(4.6%)

・営業総収入                   8502億円(▲4.2%)        2153億円(6.4%)

・営業利益                    2333億円(▲8.1%)         603億円(15.6%)

・平均日販(全店)            64.2万円(▲1.4万円)      63.8万円(+1.9万円)

・既存店売上伸び率       ▲2.4%                   +3.3%

ファミリーマート(国内1万6645店=21年7月末時点)】

              21年2月期         21年3~5月期

・チェーン全店売り上げ  2兆7643億円(▲6.8%)  6975億円(6.7%)

・営業収益           4733億円(▲8.5%)        1267億円(13.4%)

・事業利益                      712億円(10.4%)    280億円(3.1倍)

・平均日販(全店)    49.3万円(▲3.5万円)   49.5万円(+3.0万円)

・既存店売上伸び率      ▲7.7%              +5.4%

(注:伊藤忠商事の完全子会社となり20年11月に上場廃止となったため業績概況に基づく数字である)

【ローソン(国内1万4634店=21年7月末時点)】

              21年2月期          21年3~5月期

・チェーン全店売り上げ  2兆3497億円(▲6.3%)   5969億円(5.2%)

・営業総収入                   6660億円(▲8.8%)    1692億円(8.9%)

・営業利益        408億円(▲35.1%)    106億円(4.0倍)

・平均日販(全店)    48.6万円(▲4.9万円)    48.6万円(+1.5万円)

・既存店売上伸び率      ▲7.3%          +2.6%

( )は前年同期比の伸び率。▲はマイナス。

回復傾向にあるがコロナ禍前の水準には戻れない

「有事に強い」とされてきたコンビニは新型コロナウイルスの拡大の前に敗退した。21年2月期決算でコンビニ大手3社の売上高が初めて前年割れとなった。外出自粛やリモートワークの普及により、都市部の繁華街やオフィス街に立地する店舗の売上高が激減したことに加え、業績低下対策として加盟店支援策を打ち出さざるを得なくなり経費の負担が増えたことが主な要因だ。

 コンビニはフランチャイズチェーンという形態で成功している数少ないビジネスモデルである。少ない資金で開業できる半面、チェーン本部はコンビニのオーナーから労せずして高率のロイヤリティを手にすることができ「我が世の春」を謳歌してきた。この成功の方程式がコロナ禍で打ち砕かれた。

 ポストコロナに向けた最初の通信簿が21年3~5月期決算だった。大手3社の業績は上向きに転じた。セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン-イレブン・ジャパンは業績の拡大基調を取り戻した。コロナ禍に対応した店舗のレイアウトの変更が奏功した。巣ごもり消費に応え、冷凍食品や酒類の品ぞろえを増やし、一部店舗では冷食の売り場面積を2倍に広げた。既存店売上高の伸び率は3.3%増。全店の平均日販は63.8万円と前年同期より1.9万円アップした。それでもコロナ禍前の19年3~5月期の64.5万円を下回った。

 伊藤忠商事の子会社で非上場になったファミリーマートはレジ横で販売するクリスピーチキンやプライベートブランド(PB)の衣料品などが好調だった。全店の平均日販は49.5万円(前年同期は46.5万円)で回復傾向にある。それでもコロナ禍前の19年3~5月期の52.8万円の水準には戻っていない。住宅地を中心に総菜や冷凍食品のまとめ買い需要が引き続き見られ、既存店売上高は5.4%伸びた。

 ローソンの国内コンビニ事業は緊急事態宣言が全国に発令された前年同期からの反動もあって好転した。既存店売上高は2.6%増。全店の平均日販は48.6万円(前年同期は47.1万円)となったが、コロナ禍前の19年3~5月期の52.7万円の水準まではまだ距離がある。コンビニの実力を示す店舗当たりの平均日販はセブンが60万円台をずっとキープ。他を大きく引き離している。ファミリーマートとローソンは50万円を割った日販を50万円台に戻すのが当面の課題だ。

 コロナ禍をくぐり抜けてきたとはいえ、コンビニの経営者は「かつてのにぎわいは戻らない」とシビアに判断している。そこで地域の便利な店としての復活を目指す取り組みを始めた。セブンには100円ショップのダイソーやバラエティーショップのロフトが出品。ローソンは無印良品を扱う。

規制緩和を機に医薬品販売に本格進出

 コンビニの最大のライバルは、今やドラッグストアである。ドラッグストアは一般用医薬品(大衆薬)を起点に食料品や日用品など取扱品目を一気に増やし、コンビニのライバルとなった。

 厚生労働省は省令で店舗で医薬品を販売する場合は営業時間の半分以上で資格を持つ登録販売者が常駐すると定めてきた。これは「2分の1」ルールと呼ばれ、24時間営業の場合、休憩を含めると1店舗当たり最低3人の登録販売者が必要となる。

 厚労省はコロナ下、軽い病気は自宅で治療するセルフメディケーションを推進する。今年8月、省令を改正し「2分の1ルール」を撤廃した。医療用を大衆薬に転換したスイッチ医薬品を含む大衆薬を販売する時間のみ登録販売者が常駐すればいいことになった。

 規制の緩和を追い風にコンビニ各社は大衆薬の取り扱いを本格的に拡大する。ローソンは医薬品の販売店を23年度中に2倍近い450店に増やす。ファミリーマートはオンライン薬局と提携して処方箋が必要な医療用医薬品(処方薬)を24時間、店舗で受け取れるサービスを始める。全国展開を視野に入れ、各地の薬局と提携する方針だ。

 セブンはネットと店舗を融合した宅配サービスでアマゾン・ドット・コムに対抗する。東京、北海道、広島の一部地域の約550店舗で実施している宅配サービスを25年をめどに全国に広げる。店舗で扱う食品や日用品など約3000品目が対象となる。税抜き1000円以上の注文から対応し、330円の配達料を徴収する。午後11時まで宅配に応じる。

 20年度に初めてマイナス成長に転じたコンビニ業界は、大手3社を筆頭に成長軌道に戻すための仕組みづくりに力を入れている。

(文=編集部)

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