ローソンの2021年3~5月期の連結決算は最終黒字に転換した。中国などの経済回復をテコに海外のコンビニが復調した。売上高にあたる営業総収入は前年同期比9%増の1692億円、営業利益は4倍の106億円。最終損益は56億円の黒字(前年同期は41億円の赤字)だった。
国内コンビニ事業は緊急事態宣言が発令された前年同期の反動で営業利益は3倍の66億円に膨らんだ。高級スーパーの成城石井は付加価値が高い総菜などが伸び、営業利益は前年同期比13%増の29億円と好調を持続した。海外はコロナ禍の抑制が進む中国の営業利益は前年同期の11億円の赤字から3億円の黒字となった。
国内コンビニの1日当たりの平均店舗売上高(日販)は48.6万円。前年同期の47.1万円から回復傾向にある。それでもコロナ禍前の19年3~5月期の52.7万円の水準まで戻っていない。
日販はコンビニ業界で重要視される指標である。日販は店舗の稼ぐ力を示している。ローソンとファミリーマートは、コンビニ第2位の地位を争ってきた。21年2月期に日販でローソンはファミマに逆転を許した。ファミマの全店の平均日販は49.3万円。これに対してローソンは48.6万円だった。
1年前の20年2月期の日販はセブン-イレブン・ジャパンが65.6万円、ローソン53.5万円、ファミマ52.8万円の順だった。新型コロナウイルスの感染拡大でローソンが失速した、という構図である。加盟店の利益確保を重視して廃棄負担を減らそうと店舗の商品発注を抑えたことも一因だが、それだけではない。
16年、サークルKサンクスを傘下にもつユニーグループ・ホールディングスと経営統合したファミマは店舗数で2位に躍進した。店舗数でファミマに抜かれたローソンは17年2月期以降、猛烈な勢いで店舗数を増やした。好立地への出店の余地が少なくなるなかで大量出店した結果、収益力が劣る店が増えた。この間、ファミマは低収益の店を整理した。ファミマは店舗数は減ったが日販は増えた。ローソンがファミマに日販で逆転を許した根本原因はここにある。
ローソンは巻き返しに動いた。既存店の底上げに向け、22年2月期中には最大5000店の売り場の改装を予定している。商品が見やすい冷凍ケース、店内で出来立ての総菜を調理する厨房の完備など、設備投資は数百億円に上る。
H2Oの駅ナカコンビニ、アズナスがローソンに転換
ローソンの竹増貞信社長と阪急・阪神百貨店やスーパー・イズミヤを傘下にもつエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの荒木直也社長は6月24日、揃って大阪市で記者会見した。阪急電鉄の駅ナカなどで展開するコンビニエンスストア・アズナスを7月下旬から順次、ローソンに看板を掛け替える。
H2Oの荒木社長は記者会見で「アズナスはコロナ禍で非常に苦しい。生き残るには商品やオペレーションの強化が必要だ」と述べた。アズナスは阪急阪神ホールディングスから19年に買収したが、98店舗と規模が小さいうえに、商品力に課題がある。「比較的大きい店でも1日の売り上げは大手の8割に届けば上出来」(荒木社長)という。21年3月期は13億円の債務超過になっていた。
ローソンの竹増社長は「ATMや電子マネーの決済サービスを広げる。百貨店が運営する通販サイトで購入した商品をローソンの店舗で受け取れるようにする」とした。それでも、アズナスの多くが小型店舗で、スペースに限りがあるため、日販を引き上げるのは至難の業だ。
H2Oは16年10月、セブン&アイ・ホールディングス(HD)と資本・業務提携した。セブン&アイHD傘下の百貨店、そごう・西武の関西の3店舗(西武高槻店、そごう神戸店、そごう西神店)をH2Oに譲渡するほか、両社が株式を持ち合うことが柱で、セブン&アイHDの井阪隆一社長は「西日本ナンバー1の百貨店と組み、補完しあうことが理想」と抱負を語った。
だが、西日本ナンバー1のH2Oとコンビニ業界トップのセブン-イレブンの提携は「両雄並び立たず」という結果で終わった。徹底的に標準化した店舗を全国に広げるセブン&アイHDの企業風土が店舗ごとの独自性を重視するH2Oと合わなかった、とされている。そごう神戸店、西武高槻店の2店のH2Oへの譲渡にとどまり、H2Oは神戸市の郊外にある西神店を引き取らなかった。結局、資本提携は立ち消えとなった。
関西の鉄道大手では、すでにJR西日本が14年から沿線でセブン-イレブン350店舗を展開する。近畿日本鉄道の駅ナカにはファミリーマート(95店)、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)にはローソン(39店)が出店している。
そして今度はアズナス(98店)がローソンになる。ローソンとH2Oが資本提携に発展するかどうかが今後の注目点だ。ローソンの竹増社長は「ローソンとH2Oで関西圏を支えていると実感できるよう、関西ドミナント化を進めていきたい」と力を込める。
(文=編集部)