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USEN-NEXTHD、なぜ再エネ事業に参入?音楽配信で構築した店舗網を活用

構成=鈴木領一/コンサルタント
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USEN、なぜ畑違いの再エネ事業に参入?
株式会社U-POWER 代表取締役社長 高橋信太郎氏

 音楽配信事業からスタートし、店舗・企業向けに今ではあらゆる角度から経営・業務をサポートするさまざまなサービスを生み出しているUSEN-NEXT GROUP。そのUSEN-NEXT GROUPのもと、持続可能な社会の実現に向けて日本国内の再生可能エネルギーの普及に貢献しようと立ち上がったのが、2022年3月1日にスタートしたU-POWERだ。

 USEN-NEXT GROUPがなぜ再生可能エネルギーの調達にこだわったのか、U-POWERならではの強みや再生可能エネルギー事業への意気込みについて、代表取締役社長の高橋信太郎氏に話を聞いた。

 USEN-NEXT GROUPは現在、日本最大のシェアを誇る音楽配信事業をはじめとする「店舗サービス事業」のほか、「通信事業」「業務用システム事業」「コンテンツ配信事業」「エネルギー事業」の5つのセグメントで事業を展開する。

*参考:USEN-NEXT HOLDINGS コーポレートサイト 

 2017年12月、USENとU-NEXTの経営統合によって事業領域が拡大し、今では24の企業群からなる一大企業グループへと成長した。

 主力事業である店舗サービス事業を中心に店舗の運営を幅広くサポートする一方で、以前からエネルギー事業にも参入。2020年には東京電力エナジーパートナーと新たなコラボレーション商材を開発するなど、新電力や省エネをキーワードに電気、ガスに関わるコスト削減の支援を行っている。

 今回誕生したU-POWERは、一見するとこれまでのエネルギー事業の延長線上にも思えるが、実際はまったく異なる新たなエネルギー事業への挑戦となる。というのも、U-POWERは店舗に関わる電力コストの削減を訴えるのではなく、店舗のエネルギーのグリーン化に貢献しようと、再生可能エネルギーにこだわった電力会社なのである。

店舗のグリーンエネルギー化を通じて、SDGs対応を支援

 持続可能な社会を目指し世界的に再生可能エネルギーの需要が高まるなか、日本においても2030年までのCO2排出量削減、再生可能エネルギー電源比率の新たな目標が示され、2050年にカーボンニュートラル・脱炭素社会の実現を目指している。地球に生きる私たち一人ひとり、企業一社一社の小さな努力が必須の時代となっている。

 U-POWERは、USEN-NEXT GROUP 各社がさまざまな角度から支援している店舗に対して、これまでのエネルギー事業とはまったく異なるアプローチでCO2削減、グリーンエネルギー化の支援を行っていく。

 高橋社長は、「特別新しいこととは思われないかもしれませんが、再生可能エネルギーに特化した電力会社はまだまだ少ないのが実情です。私たちの特徴は、再生可能エネルギーを中心に供給していくことを明確に打ち出している点。お店のSDGs対応の支援としてエネルギー面でお役に立ちたいと考えています」と話す。

 用意しているのは、「GREEN10」「GREEN50」「GREEN100」の3プラン。使用電力量に対して、それぞれ10%分、50%分、100%分の再エネ非化石証書を購入することにより、実質的にグリーンエネルギー比率10%、50%、100%の電力の供給を計画している。

USEN-NEXTHD、なぜ再エネ事業に参入?音楽配信で構築した店舗網を活用の画像2
U-POWER 3つのプラン(地球の未来を担うこどもたちの視点をモチーフにした、南極に住むこどもコウテイペンギンのイメージキャラクター)

 これまで行ってきたリセールモデルではなく、電力を自社で調達するところも大きな強みだ。

USEN-NEXT GROUPが自社調達モデルの電力会社をつくった理由

 U-POWER誕生の背景には、サステナビリティに対するUSEN-NEXT GROUPの強い取り組みがある。

 環境問題や社会課題が深刻化するなか、USEN-NEXT GROUPでは持続的な企業の成長、社会の実現のためにサステナビリティを重要なテーマととらえ、2021年8月にサステナビリティ推進室、サステナビリティ委員会を新設。事業戦略や意思決定においてもサステナビリティを重要な要素と位置付け、グループ一丸となってサステナビリティを推進している。

*参考:USEN-NEXT GROUPが取り組むサステナビリティ

USEN-NEXTHD、なぜ再エネ事業に参入?音楽配信で構築した店舗網を活用の画像3

 環境領域への取り組みとして、すでに全国約150拠点の再生可能エネルギーへの切り替え計画を進めており、2022年8月末までに、本社など主要拠点は100%再生可能エネルギー化、全拠点の約50%の再生可能エネルギー化を実現する予定だ。

 また、本社内にあるカフェで使用するストローを紙製に変更、名刺の素材も環境配慮型のものへ変更するほか、社有車も順次EV(電気自動車)・HV(ハイブリッド)車に切り替えていくことで、CO2排出量削減につなげていく予定だ。

 U-POWERはまさに、USEN-NEXT GROUPがサステナビリティ活動を進めていくなかで必要な事業として生まれた会社、ということになる。

 カフェのストローを紙製に切り替える社会全体の流れがあるように、環境への意識の高い消費者が、再生可能エネルギーを使っているお店を選ぶ時代が来るのではないか、と考える高橋社長。

「お店のどこかに『再生可能エネルギーを使っています』とグリーンエネルギーであることを証明するステッカーを貼ることで、感度の高い顧客を呼び込むための強力な集客支援策になるかもしれません」

USEN-NEXT GROUPの店舗ネットワーク、代理店網を活用

 U-POWER は再生可能エネルギーをどのように販売していくのか。

 実は、膨大な販売先とすでに信頼関係のある代理店網を保有している点こそ、USEN-NEXT GROUPだからこその強力な武器である。

 当面の販売先は、USEN-NEXT GROUPが持つ全国90万に及ぶ店舗ネットワーク。加えて、グループ内に250社の代理店網を持ち、そのなかにエネルギーの販売ができる代理店が60社存在することから、この代理店を通じたアプローチを進めていく。

 すでに代理店との協業はスタートしており、「再生可能エネルギーを積極的に販売していきたい」という力強い声が多数寄せられているという。

「なかでもHR系の代理店は店舗と強固な関係が構築できていることから、SDGs×エネルギーの提案をスムーズに進められそうだという手ごたえを感じています。代理店が営業マンを採用する際に、『SDGs対応の商品が販売できる』とPRすることで採用にプラスになるのでありがたい、という声もあがっています」(高橋社長)

エネルギーを作り出すことも視野に

 U-POWERは、「今、未来にできることを。」 を理念に掲げる。USEN-NEXT GROUPの多様な資産を活用し、今を生きる人たちの未来はもちろん、この先の未来を生きる人たちの生活を支えるために、できうる全ての行動を行っていくことを存在意義としている。まずは、国内のグリーンエネルギーの供給についてBtoB領域で事業を取り組むことからスタートする。

 一方で、国際情勢も不安定ななか、資源を持たない日本がエネルギーをどうつくり出していくかは、今もなお大きな課題である。

 また、電力事業という観点でいうと、特に再生可能エネルギーの場合、電力をつくるところから販売までトータルで行わなければ、スケールメリットが出にくいという実態もある。

「店舗を中心にグリーンエネルギー化を支援していくU-POWERとして、太陽光を念頭に、今後電力をつくり出す領域へと事業を広げていくことも視野に入れています」

持続可能な社会をつくる一躍を担いたい

 グローバルでは個人、法人問わず、持続可能な社会のためにできることを考え行動をすることが求められている。世界と比較して、日本のSDGs対応は進んでいるという。USEN-NEXT GROUPがサステナビリティ活動に注力しているように、大手企業を中心に企業のSDGsへの意識は高まっている。

 高橋社長は「大手企業から始まって、店舗へ、個人へと持続可能な社会をつくっていこうとする世界観が広がっていく。その世界観を牽引する人が増えていくことで、日本が大きく変わっていくのではないでしょうか」と指摘する。

 その上で、「持続可能な社会の実現に向けて、私たちもその一躍を担っていけるように頑張っていきたい」と意気込む。

 お店のグリーンエネルギー化を支援することで、持続可能な社会実現に対して責任を果たそうと動き出したU-POWERの今後に注目していきたい。

(構成=鈴木領一/コンサルタント)

鈴木領一/コンサルタント

鈴木領一/コンサルタント

 思考力研究所所長。行政機関や上場企業の事業アドバイスをはじめ目標達成のためのコーチングも行っている。プレジデント誌などビジネスメディアへの記事寄稿多数。また100の結果を引き寄せる1%アクション(サイゾー刊)は、氏のコーチングメソッドを初公開した書籍で、主婦から経営者まで幅広い層に支持されロングセラーとなっている。また、出版プロデュースの活動も行い、代表作には小保方晴子氏の『あの日』(講談社刊)がある。

Twitter:@suzuryou

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