三菱自動車は生産子会社パジェロ製造(岐阜県加茂郡坂祝町)の工場を大王製紙に売却する。売却額は非公開だが、土地と建物を合わせて40億円とみられている。パジェロ製造は三菱自の100%子会社。三菱自は国内で余剰となっていた生産能力を削減する構造改革を進めるため、21年8月にパジェロ製造の工場を閉鎖。その後、売却先を探していた。
航空機部品を送る目的で1943年に設立した東洋航機がパジェロ製造の前身。戦後、自動車車体の製造会社となり、パジェロなど三菱自の乗用車を受託生産していた。95年、三菱自が子会社にし、パジェロ製造に社名を変更した。社名ともなったパジェロは82年に発売したSUV(多目的スポーツ車)。人気を集め、会社を代表する看板車種となり、最盛期には年間17万台を生産していた。
その後、パジェロの人気が低迷。パジェロ製造全体の生産台数は20年3月期に6万3000台と、ピーク時の4割にとどまった。パジェロの国内販売は19年に終了し、アジア向けの生産を続けてきたが販売が振るわず、工場閉鎖を機にパジェロの生産から完全に撤退する。
三菱自は16年、燃費不正問題が発覚して業績が急激に悪化。日産自動車の出資を受け入れ、日産、仏ルノーの日仏連合に加わった。日産元会長のカルロス・ゴーン被告が三菱自会長も兼ね、欧米で拡大戦略を進めた結果、三菱自の20年3月期の固定費は16年3月期より3割増え、これが利益を圧迫した。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う新車需要の急減が業績悪化に追いうちをかけた。ゴーン被告の失脚に伴い、三菱自は新しい中期経営計画を策定。1000億円規模の固定資産の削減を打ち出し、その柱が工場の閉鎖だった。パジェロ製造で働いていた1000人の従業員は3割が岡崎製作所(愛知県岡崎市)などに移籍、250人は近隣企業に再就職したという。
三菱自は22年3月期の業績見通しに関して4度目の上方修正をした。売上高は380億円増の2兆380億円、営業利益は170億円増の870億円、当期利益は240億円増の740億円にそれぞれ引き上げた。21年3月期は3123億円の巨額赤字だったが、当期利益は3期ぶりに黒字に転換した。
半導体の供給不足で新車販売台数が想定を下回ったものの、新車の供給不足で値引きが抑制され、販売価格が上昇したうえに、販管費が減少、為替も円安に大きく振れたため、グローバル販売台数は前回予想から1万6000台増の93万7000台となった。年間配当はゼロのままだ。今後、電気自動車(EV)など電動車の増産体制を整える。80億円を投じて水島製作所(岡山県倉敷市)の設備を刷新し、5月にも日産と共同開発する軽EVの生産を開始する。
大王製紙はティッシュペーパー、トイレットペーパーを生産
大王製紙はパジェロ製造の工場を23年1月に取得する。コロナ禍でも需要が旺盛なティッシュペーパー「エリエール」やトイレットペーパー、おむつなどの加工設備を導入し、24年度にも稼働させる。取得する工場の面積は約15万平方メートルで建物の延べ床面積は約11万8000平方メートル。ティッシュ、トイレットペーパーや紙おむつを生産する可児工場(岐阜県可児市)に近く、可児工場との一体運営が見込めることから、購入を決めたとしている。
22年3月期連結決算は売上高が前期比7%増の6000億円、当期純利益は5%減の210億円と増収・減益を見込む。原燃料高が業績の重荷となった。
(文=Business Journal編集部)