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『ガイアの夜明け』特集の湖池屋、プライドポテトのヒット生んだ異色&緻密な経営

文=Business Journal編集部
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 10月7日放送の経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京)は「“買わない客”こそ狙う!~スパイスと“ポテチ”企業~」というタイトルで、菓子メーカーの「湖池屋」と、豊富な調味料の商品ラインナップを有する食品メーカー「エスビー食品」を特集する。

 番組内では、「ポテトチップを食べない女性を振り向かせろ」をスローガンに掲げて商品開発に取り組む湖池屋に密着取材。番組HP上の予告動画内では、商品開発を担当する若い女性社員が上司から「ガチでケンカしないとダメだよ」と叱咤激励される様子や、土佐の珍味にヒントを得る場面などが公開されている。

 同じポテトチップスメーカーで売上高2454億円(2022年3月期)を誇るカルビーに対し、湖池屋の売上高は304億円(同)と約10分の1ほどだが、大ヒットした「PRIDE POTATO(プライドポテト)」や「カラムーチョ」「スコーン」「ドンタコス」など、ユニークかつ話題性のある商品には根強いファンが多いことでも知られている。

「強いブランド力と生産能力を武器に値下げを仕掛けてシェア重視の姿勢を取るカルビーに対し、湖池屋は“ちょっと高いけど贅沢”な商品を次々と投入するという感じで、カルビーの経営戦略とは一線を画している。ブランド的には“カルビーのほうが上”というイメージが強いが、熱心な“お菓子好き”の間では、湖池屋のほうが良質な味や食感へのこだわりが強いという評価もある。

 キリンビバレッジ元社長で『生茶』や『アミノサプリ』などをヒットさせた佐藤章氏が湖池屋の社長に就任して以降、『プライドポテト』を発売したり『スコーン』をリニューアルしたりと果敢に攻めている印象。商品開発や販売戦略においても緻密なマーケティングを重視していて、高収益とはいえないまでも、利益が出しにくいとされる菓子メーカー業態ながらも堅実に黒字を維持している」(小売業界関係者)

「The KOIKEY」シリーズを強化

 その湖池屋は11月から「スティックカラムーチョホットチリ味」「スティック海苔カラムーチョスパイシーのり味」「スティックカラムーチョ辛トマト」など5品の値上げと「いつでもチャックトルティアチップス塩味」の規格改定(148グラムから138グラムへの変更)を実施する。値上げ率は4~9%。原材料価格の高騰とエネルギー価格の上昇によるコスト増加を受けた措置だが、業績にはどう影響していくのだろうか。

 湖池屋は23年3月期の通期売上高410億円(前期303億円)、経常利益17億円(同11億円)、当期純利益11億円(同7億5800万円)を見込んでいる。現時点で期初に発表した業績見込みから修正はされていない。

 今期の戦略テーマには「高付加価値商品及び馬鈴薯以外を原料とした商品の売上拡大」「原材料価格高騰による利益圧迫への対応」「関東第三工場及び九州阿蘇工場の最大活用並びに新機軸商品のヒット」の3つを掲げた。

 これを踏まえた重点施策は、第一に主力4ブランド「プライドポテト」「じゃがいも心地」「KOIKEYA STRONG」「The KOIKEYA」の拡販。第二に、「The KOIKEYA」ブランドの強化。第三に、ポテトチップス以外の商品「スコーン」「ドンタコス」拡販による馬鈴薯への依存度の緩和。さらに第4に収益性の改善で、(1)関東・京都の基幹工場の生産効率向上、(2)九州エリアの販売強化による九州阿蘇工場稼働アップ、(3)関東第三工場で生産される物流効率の良い新機軸商品の販売強化である。

 湖池屋によると、重点施策のうち「スコーン」「ドンタコス」のリニューアルが成功し、コーン商品の売上拡大に加え、価格改定も順調に進めて売上高・利益ともに想定を上回る水準で推移。ブランド強化策では、「KOIKEYA The 海老」の発売で「The KOIKEY」シリーズを強化する一方で、米を使用したブランド「愛をコメて」で「愛をコメて肉旨麻婆」を発売し、馬鈴薯以外の素材を使った商品を継続的に展開している。

ポテトチップスの発売はカルビーより早かった?

 その成果として、湖池屋は日経BP社「ブランド・ジャパン2022」で前年の110位から14位へと大きく躍進した。それだけではない。ポテトチップスのトップメーカーであるカルビーを追い抜いたのだ。カルビーは21年に34位だったが、22年は49位に低下した。

 世間一般にはあまり知られていないが、ポテトチップスの発売は湖池屋のほうがカルビーよりも早い。湖池屋の設立は1958年。62年に「湖池屋ポテトチップス」を発売し、日本で初めてポテトチップスを量産化した。以来、73年に「ポテトシューストリング」、84年に「カラムーチョ」、94年に「ドンタコス」と「オーチップス」、2012年に「コイケヤポテトチップス プレミアム トリュフ香る塩味」などヒット商品を発売してきた。一方、1949年設立のカルビーは「かっぱあられ」「かっぱえびせん」の発売で成長発展を続け、初めてのポテトチップス「カルビーポテトチップス」を発売したのは75年である。

 湖池屋にとって大きな転機になったのは、2011年に日清食品ホールディングスと資本業務提携を実施したことである。12年に日清食品の持ち分法適用会社になり、20年には連結対象子会社になった。両社は香港で合弁会社を設立するなど協業に着手し、商品開発、マーケティング、営業、物流分野での協業を進め、 コラボレーション商品の「チキンラーメンチップス」「チキンラーメンスティック」を発売した。

 新たな展開としてはコロナ対応にも着目したい。この10月3日に発売した「濃いじゃが アンチョビオリーブ」は1枚ずつの個包装タイプ。スナック菓子では珍しい。メリットは数回での食べ分けができることだけではない。コロナ対応とは謳っていないが、複数人でシェアする場合、各自が直接手を触れずに食べられるため衛生面で安心できる。

 馬鈴薯以外の素材を使用した商品の拡大と併せて、リスク管理が商品開発に反映されるようになった。これも湖池屋の特徴としてクローズアップされる。

(文=Business Journal編集部)

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