SBTiとは?企業の認定手順・Scope3対応をわかりやすく

最終更新日: 2026年8月23日

SBTiの概要を示すキービジュアル

冒頭

SBTiとは、企業の温室効果ガス削減目標がパリ協定と気候科学に整合しているかを基準化し、検証する国際的な枠組みです。単なる宣言ではなく、Scope1・2・3の排出量、削減率、目標年、進捗開示まで説明できる状態が求められます。

この記事では、SBTi認定を検討する企業のサステナビリティ、経営企画、環境部門の担当者向けに、SBTiとSBTの違い、認定手順、Scope3対応、カーボンクレジットの扱い、2026年時点の最新変更点を整理します。カーボンクレジット購入の記事ではなく、「自社がSBTiへ進む前に何を準備すべきか」を判断するための記事です。

【この記事のポイント】

  • SBTiは組織名、SBTは科学的根拠に基づく削減目標そのものを指します。
  • 2026年に目標設定する企業は、SBTiの案内上、現行のCorporate Net-Zero Standard Version 1.3.1を使って進めるのが基本です。
  • Corporate Net-Zero Standard Version 2.0は2026年6月11日に公表され、2027年2月1日から目標検証に使える予定です。
  • SBTiの削減目標は、自社のバリューチェーン内の排出削減が中心で、通常のカーボンクレジット購入を目標達成分として充当する考え方ではありません。
  • 申請前は、Scope3カテゴリ別の排出量、基準年、削減施策、社内責任者、年次開示の体制を先に整える必要があります。

SBTiとは何ですか?

SBTiとは、企業や金融機関が気候科学に整合した温室効果ガス削減目標を設定し、その目標を外部検証に出すための国際的な基準・検証の仕組みです。

SBTiの役割

SBTiはScience Based Targets initiativeの略称で、日本語では「科学的根拠に基づく目標イニシアチブ」と訳されます。企業が「何年までに、どの範囲の排出量を、どれだけ削減するのか」を、世界の気温上昇を1.5℃に抑える経路と整合する形で設定するための基準を提供しています。

SBTiが重要なのは、削減目標の見せ方ではなく、目標の中身を問う点です。たとえば「2050年カーボンニュートラルを目指す」と掲げるだけでは、基準年、対象範囲、Scope3、短期目標、進捗開示が分かりません。SBTiでは、企業が科学的根拠に沿って削減する道筋を作り、検証を受け、承認後も毎年進捗を開示することが求められます。

SBTi公式のTarget Dashboardでは、2026年8月23日参照時点で、目標またはコミットメントを持つ企業は14,038社、検証済み目標を持つ企業は11,796社、ネットゼロ目標を持つ企業は2,750社と示されています。SBTiは、上場企業やグローバル企業だけでなく、サプライチェーン上で脱炭素対応を求められる中堅企業にとっても無視しにくい基準になっています。

観点SBTiで確認されること企業側で必要な準備
対象範囲Scope1・Scope2・Scope3の排出量GHG排出量算定、カテゴリ分類
目標水準1.5℃経路やネットゼロ経路との整合削減率、基準年、目標年の設定
実行可能性削減施策と社内責任体制省エネ、再エネ、調達方針、投資計画
透明性承認後の公表と年次開示サステナビリティ報告、CDP、Web開示

SBTiとSBTは何が違いますか?

SBTiは基準を策定し目標検証を担う枠組みで、SBTは企業が設定する科学的根拠に基づく削減目標です。

SBTiとSBTの違い

両者は似た言葉ですが、記事や社内資料では分けて使うと誤解を避けられます。SBTiは組織・制度・検証プロセスを指し、SBTは目標そのものを指します。日本語では「SBTi認定」「SBT認定」と表現されることがありますが、実務では「SBTi Servicesによって目標が検証され、Target DashboardでTargets setとして掲載される」と理解すると正確です。

SBTiのFAQでは、Science Based Targets initiativeが基準やガイダンスを開発し、SBTi Servicesがターゲット検証を担う別組織として説明されています。企業はSBTiの基準・ガイダンスに沿って目標を作り、SBTi Servicesへ提出して検証を受けます。

用語意味実務での使い方
SBTiScience Based Targets initiative基準、ガイダンス、検証の枠組み
SBTScience Based Target企業が設定する科学的根拠に基づく削減目標
SBTi ServicesSBTiの検証サービス主体目標提出、審査、検証結果の通知
Targets setTarget Dashboard上の検証済み状態対外開示で確認されるステータス
Committed目標設定へのコミット状態原則24カ月以内に目標提出が必要

社内説明では、「SBTiに参加する」よりも「SBTi基準に沿ってSBTを策定し、検証を受ける」と表現する方が、やるべき作業が明確になります。

認定で確認される基準は何ですか?

SBTi認定では、排出量の対象範囲、基準年、削減率、目標年、Scope3の扱い、ネットゼロ目標の整合性が確認されます。

SBTi認定で確認される主な基準

SBTiの目標には、大きく「near-term targets」と「net-zero targets」があります。near-term targetsは通常5〜10年程度の短中期の削減目標で、net-zero targetsは2050年またはそれ以前のネットゼロ到達に向けた長期目標です。電力セクターなど一部では、より早い目標年が求められる場合があります。

一般企業の場合、まず確認すべきなのはCorporate Near-Term CriteriaとCorporate Net-Zero Standardです。セメント、鉄鋼、建物、金融機関、FLAG関連など、業種によってはセクター別基準や追加ガイダンスが必要になります。自社がどのセクター基準に該当するかを早い段階で確認しないと、後から目標の作り直しが発生します。

項目near-term targetsnet-zero targets
主な目的5〜10年程度の実行可能な削減経路を示す2050年またはそれ以前のネットゼロ経路を示す
対象Scope1・2、条件によりScope3バリューチェーン全体の長期削減
重要論点基準年、削減率、Scope3対象範囲長期削減、残余排出、ニュートラリゼーション
実務上の難所データ精度と短期施策事業計画と投資計画の整合

SBTiの検証は、気候目標が「野心的に見えるか」ではなく、公開基準に適合しているかを確認する手続きです。目標文の表現だけ整えても、排出量データや削減計画が基準に合っていなければ承認されません。

Scope3対応はなぜ重要ですか?

Scope3対応が重要なのは、多くの企業でサプライチェーン排出が総排出量の大部分を占め、SBTi目標の信頼性を左右するためです。

Scope1・Scope2・Scope3の整理

Scope1は自社が直接排出する温室効果ガス、Scope2は購入した電力・熱・蒸気などに伴う間接排出、Scope3は原材料、物流、出張、製品使用、廃棄、投資など、バリューチェーン上のその他の間接排出です。SBTiのFAQでも、GHG Protocolに基づきScope1・2・3の考え方が説明され、Scope3がScope1・2・3合計の40%を超える企業ではScope3を目標に含める必要があるとされています。

SBTi対応で詰まりやすいのは、Scope3を総量だけで扱うことです。Scope3は15カテゴリに分かれ、カテゴリごとにデータ入手方法、削減施策、取引先への働きかけが異なります。たとえば製造業では購入品・サービスや製品使用段階が大きく、食品・農業関連ではFLAGや土地利用の論点が出やすく、金融機関では投融資先排出量が中心になります。

Scope内容典型的な削減施策
Scope1自社設備・車両などからの直接排出燃料転換、電化、設備更新
Scope2購入電力・熱などに伴う間接排出再エネ電力、PPA、非化石証書、電力契約見直し
Scope3サプライチェーン上のその他排出調達基準、サプライヤー協働、物流改善、製品設計

申請前の独自チェックとして、Scope3カテゴリごとに「算定できる」「削減施策がある」「担当部署がある」「取引先へ説明できる」の4条件を並べると、弱い箇所が見えます。SBTi対応は環境部門だけで完結せず、購買、物流、製造、商品企画、営業、IRまで巻き込む業務です。

SBTi認定はどう進めますか?

SBTi認定は、登録、コミット、目標策定、提出、コミュニケーション、年次開示の順に進めます。

SBTi認定の進め方

SBTi公式FAQでは、科学的根拠に基づく目標設定のプロセスとして、Register、Commit、Develop、Submit、Communicate、Discloseの6ステップが示されています。SMEはコミットメントを設定できず、直接目標設定へ進むなど、企業規模やセクターによってルートが異なります。

実務では、SBTiポータル登録の前に排出量算定をある程度固めておくことが重要です。登録後に自社がSME、一般企業、金融機関、Oil & Gas、セクター別基準対象のどれに分類されるかで、提出フォーム、必要データ、審査観点が変わります。

ステップやること担当部門の例
1. 登録Validation Portalで企業情報を登録するサステナビリティ、法務
2. コミット目標設定の意思を表明する経営企画、IR
3. 目標策定Scope別排出量、基準年、削減率を設定する環境、購買、製造、財務
4. 提出必要書類をSBTi Servicesへ提出するサステナビリティ、外部支援会社
5. 公表承認された目標を対外発信する広報、IR
6. 開示毎年、排出量と進捗を開示する経営企画、環境、IR

SBTiの案内では、コミットメントを起点にする場合は24カ月以内に目標を提出し、提出後の評価は通常12週間で完了すると説明されています。ただし、提出内容に不足や照会対応の遅れがあると、実際の期間は長くなります。社内決裁、費用見積、役員承認、外部保証やCDP回答の時期も含めて逆算してください。

カーボンクレジットでSBTi目標を達成できますか?

カーボンクレジットはSBTi目標達成の主手段ではなく、SBTiの削減目標では自社バリューチェーン内の排出削減が優先されます。

SBTiとカーボンクレジットの関係

ここは誤解が多い論点です。SBTiの基準では、near-term targetsやlong-term targetsの達成は、原則として自社のScope1・2・3における排出削減で行います。SBTiは、企業がバリューチェーン外で気候変動対策へ資金を投じるBeyond Value Chain Mitigationを推奨していますが、それは自社の科学的削減目標の代替ではありません。

ネットゼロ目標では、長期の削減後に残る残余排出をニュートラライズする考え方があります。SBTi関連資料では、多くの企業に少なくとも90%以上の削減が求められ、残る10%未満の残余排出を恒久的な除去で中和する考え方が示されています。つまり、クレジット購入を先に置くのではなく、削減しきれない最後の排出に対して高品質な除去を使う位置づけです。

使い方SBTi上の位置づけ注意点
Scope1・2・3の削減SBTi目標の中心実排出削減として管理する
再エネ証書・PPA等Scope2削減に関係する場合があるGHG Protocolや市場基準との整合を確認する
通常のカーボンクレジット購入BVCMとして活用し得るSBTi目標達成分として単純充当しない
恒久的な除去残余排出のニュートラリゼーションに関係ネットゼロ到達時の品質・永続性が重要

カーボンクレジットを使う場合は、「SBTi目標を達成するため」ではなく、「自社の削減とは別に、社会全体のネットゼロへ貢献するため」と説明する方が安全です。環境価値、カーボンクレジット、非化石証書、J-クレジットは、それぞれ用途と会計・開示上の扱いが異なるため、SBTi対応では混同しないでください。

2026年時点の最新変更点は何ですか?

2026年時点の重要な変更点は、Corporate Net-Zero Standard Version 2.0が公表され、2027年2月1日から目標検証に使える予定になったことです。

2026年時点のSBTi最新変更点

SBTiは2026年6月11日にCorporate Net-Zero Standard Version 2.0を公表しました。公式ブログでは、Version 2.0は2027年2月1日から目標設定と検証に利用可能になり、2026年中に追加ガイダンスやリソースが順次公開されると説明されています。

ただし、2026年に目標設定を進める企業が待つ必要はありません。SBTiの「How to set science-based targets」では、2026年に目標設定する企業は、現行のCorporate Net-Zero Standard Version 1.3.1を使ってすぐ進めるべきだと案内されています。既に検証済み目標を持つ企業についても、Version 2.0が出たから直ちにすべて再提出しなければならない、という読み方は適切ではありません。

日付・時期内容企業担当者の見方
2026年6月11日Corporate Net-Zero Standard Version 2.0公表最新基準として内容を確認する
2026年中追加ガイダンスや移行関連文書が順次公開予定既存目標・新規目標への影響を確認する
2027年2月1日V2.0が目標設定・検証に利用可能予定申請時期に応じて基準を選ぶ
2026年に申請準備V1.3.1で進行可能待機よりも排出量算定と削減計画を進める

2026年時点で最も避けたいのは、「V2.0が出たから今は何もしない」と止まることです。基準の細部は変わっても、排出量算定、Scope3把握、再エネ調達、サプライヤー協働、進捗開示の必要性は変わりません。

申請前に何を準備すべきですか?

申請前には、排出量データ、Scope3カテゴリ、削減施策、社内承認、開示体制、カーボンクレジットの位置づけを整理します。

SBTi申請前の準備チェックリスト

SBTi対応は「申請フォームを書く作業」ではなく、企業の排出削減計画を科学的基準に合わせるプロジェクトです。環境部門だけで進めると、Scope3データ、設備投資、調達方針、製品設計、役員承認で止まりやすくなります。

編集部の実務チェックリストとして、次の8項目をそろえてから申請準備に入ると、手戻りを減らせます。

No.準備項目確認ポイント
1企業分類SME、一般企業、金融機関、セクター別基準対象を確認する
2基準年最新データと代表性のある基準年を説明できる
3Scope1・2活動量、排出係数、電力契約、再エネ証書を整理する
4Scope315カテゴリ別に算定範囲と重要カテゴリを整理する
5削減施策省エネ、電化、再エネ、調達、物流、製品設計を紐づける
6責任体制経営層、環境部門、購買、製造、IRの役割を決める
7開示計画年次報告、Web、CDP等で進捗を出せるようにする
8環境価値クレジット、証書、PPAの用途を分けて説明する

90日で準備するなら、最初の30日は排出量と企業分類、次の30日は削減施策とScope3重要カテゴリ、最後の30日は経営承認、申請資料、開示文言の整備に使うと進めやすくなります。外部支援会社を使う場合でも、社内データの所有者と決裁者は自社で決める必要があります。

まとめ

SBTiとは、企業の温室効果ガス削減目標を気候科学と整合させ、外部検証を通じて信頼性を高める国際的な枠組みです。SBTi対応では、目標文を作るだけでなく、Scope1・2・3の排出量、基準年、削減率、削減施策、年次開示まで一体で設計する必要があります。

企業担当者が最初に確認すべきことは、SBTiとSBTの違い、near-term targetsとnet-zero targetsの違い、Scope3の重要カテゴリ、カーボンクレジットを目標達成分として単純充当できない点です。2026年6月にCorporate Net-Zero Standard Version 2.0が公表されましたが、2026年に目標設定する企業は現行基準で準備を進められます。

まずは、自社の排出量算定とScope3カテゴリ別の整理から始めてください。そのうえで、再エネ調達、サプライヤー協働、設備投資、製品設計、開示体制を結び、SBTiへ提出できる削減計画に落とし込むことが実務上の出発点です。

著者: カーボンクレジットジャーナル編集部

監修: Green Carbon株式会社

本記事の運営元は、カーボンクレジット関連事業に関与するGreen Carbon株式会社と関係があります。読者の意思決定に必要な情報を中立的に整理し、制度、クレジット、証書、削減目標、開示範囲などは公式情報と実務上の確認事項を分けて記載します。

出典・参考

よくある質問(FAQ)

Q. SBTiとは何の略ですか?

A. SBTiはScience Based Targets initiativeの略です。企業や金融機関が、気候科学に整合した温室効果ガス削減目標を設定し、検証を受けるための国際的な枠組みです。

Q. SBTiとSBTの違いは何ですか?

A. SBTiは基準や検証の枠組みを指し、SBTは企業が設定する科学的根拠に基づく削減目標を指します。実務では、SBTi基準に沿ってSBTを策定し、SBTi Servicesへ提出して検証を受けます。

Q. SBTi認定にはScope3が必須ですか?

A. 企業の排出構造によって扱いは異なりますが、Scope3が重要な割合を占める企業ではScope3目標が実質的に重要になります。申請前にScope3の15カテゴリ別に算定範囲、データ根拠、削減施策を整理してください。

Q. カーボンクレジットでSBTi目標を達成できますか?

A. 通常のカーボンクレジット購入を、SBTiの削減目標達成分として単純に充当する考え方ではありません。SBTi目標では、Scope1・2・3のバリューチェーン内削減が中心です。

Q. 2026年にSBTi申請を始めるならV2.0を待つべきですか?

A. SBTiは2026年に目標設定する企業に対し、現行のCorporate Net-Zero Standard Version 1.3.1で進めることを案内しています。V2.0は2027年2月1日から検証に利用可能予定のため、申請時期に応じて影響を確認してください。