14年6月にウェバー体制が船出し、同年10月にグローバル経営強化のために経営幹部で構成するコーポレート・オフィサーを結成。メンバー14人のうち10人が外国人で、日本人は4人だけだった。ところが、チーム発足後わずか8カ月で3人が退任した。ダグラス・コール米国事業ユニット長は今年3月末に退任し、研究開発部門トップの山田忠孝取締役も6月26日の株主総会で退任した。山田氏は日系米国人の医師だ。そしてCFOだったロジェ氏の退任がトドメを刺した。
「経営幹部は典型的な寄せ集めの集団であり、相次ぐ経営幹部の退任は経営陣がバラバラであることを露呈させ、長谷川氏が推し進めた人事のグローバル化は、あっけなく頓挫した」(業界筋)
上場来初の赤字
武田は業績面でも苦戦している。15年3月期連結決算(国際会計基準)の売上高は前期比5%増の1兆7778億円、営業損益は1292億円の赤字(前期は1392億円の黒字)、最終損益は1457億円の赤字(同1066億円の黒字)だった。最終赤字になるのは1949年の株式上場以来初めて。糖尿病治療薬「アクトス」をめぐる米国での製造物責任訴訟で原告団と和解し、3241億円の引当金を計上したことが響いた。
その結果、ROE(株主資本利益率)は前期の4.5%からマイナス6.3%へ転じた。それでも、取締役(社外取締役を除く)8人の役員報酬合計は14億900万円と過去最高だった。ウェバー社長は5億700万円、ロジェ氏も3億400万円の役員報酬を得た。
【過去3年で1億円以上の役員報酬を得た役員の一覧表】(単位:百万円)
※以下、役員名:15年3月期(ROE:▲6.3%)、14年3月期(同4.5%)、13年3月期(同6.3%)
長谷川閑史:277、305、301
クリストフ・ウェバー:507、-、-
本田信司:108、-、-
山中康彦:101、121、-
フランソワ・ロジェ:304、-、-
山田忠孝:908、835、708
フランク・モリッヒ:809、969、722
吉田豊次:-、-、115
デボラ・ダンサイア:-、-、776
外国人役員は、日本人と比べて破格の高給で遇されていることが見て取れるが、「他社から良い条件を提示されれば、ロジェ氏のようにすぐに移籍してしまう可能性も高い」(市場筋)との見方もある。
(文=編集部)