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大塚家具、久美子社長“居座り”の裏に家族の借金問題か…赤字でも家族へ高値配当継続

文=編集部、協力=山岸純/山岸純法律事務所・弁護士
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大塚家具の大塚久美子社長(右、写真:日刊現代/アフロ)

 先月12日、ヤマダ電機の山田昇会長と大塚家具の大塚久美子社長が会見を行い、ヤマダが大塚家具を買収して子会社化すると発表した。大塚家具は業績不振が続いており、大塚社長の経営責任を問う声も強まっていたが、会見で大塚社長は「(社長として)引き続きがんばって貢献したい。今回の提携を軌道に乗せ、やり遂げることが責任だ」と続投する意向を示した。

「久美子氏は父親で元会長の勝久氏と経営方針をめぐって対立し、2015年に勝久氏を追い出すかたちで社長の座に就いたものの、業績は悪くなる一方で、18年12月期まで3年連続で最終赤字が続いている。さらには久美子社長が就任以降、現預金が激減しており、いつ資金ショートが起きてもおかしくない状況です。市場はとっくに久美子社長にバツを付けており、本来であれば久美子社長が退任して完全にヤマダ主導のもとで再建を図るべきでした。早くも市場では失望が広まっています」(アナリスト)

 久美子社長が頑なに社長に居座る理由について、新聞記者は語る。

「大塚家の資産管理会社ききょう企画の社長は、久美子氏の妹、舞子氏ですが、事実上の実権は久美子氏が持っています。そのききょう企画は15億円分の社債を勝久氏に発行していましたが、勝久氏は15年に、社債の償還を求めてききょう企画に対して訴訟を起こした。結局、ききょう企画が勝久氏に利息を含む17億円を支払いました。

 この際、ききょう企画は勝久氏への支払いの原資に充てるため、銀行から借り入れを行っており、借金はまだ残っているとみられています。大塚家具株の配当しか収入がないききょう企画としては、配当が止まると銀行への返済が滞ってしまう。それこそが、大塚家具が赤字に陥った16年度以降も毎年、お家騒動前と同水準の40円の配当を維持している理由だといわれています。さらには、久美子氏はこのききょう企画の借金で連帯保証人になっている可能性もあり、久美子氏は配当を出し続けるためにも、社長にしがみつく必要があるのです」

 もしこれが事実であれば、久美子社長が私的な利益のために、赤字である大塚家具の配当を続けて会社の財務を毀損しているとも受け取れるが、法的には問題ないのだろうか。山岸純法律事務所の山岸純弁護士は、次のように解説する。

久美子社長が私利私欲のために社長(代表取締役)の地位に居座っているのであれば、『私利私欲のために社長の地位にいる』こと自体は犯罪ではありませんが、例えば、剰余金(株主への配当金)の法令上の配当ルールに違反して配当するようなことがあれば、違法配当に関する民事上の責任(会社法462条)が発生しますし、場合によっては特別背任罪(自分や他人の利益のために、与えられた会社の任務に背いて会社に損害を与える罪。10年以下の懲役刑など。会社法960条)が成立するかもしれません。もっとも、大塚家具は上場企業であり、社長の“一声”だけでどうにかできる会社ではない以上、報道のようなことを“ガチ”でやっている可能性は小さいのではないでしょうか」

 当サイトは、2018年10月11日付記事大塚家具、久美子社長の「隠れた巨額負債問題」…社長辞任拒否の理由は家族への株配当かで、ききょう企画の借金問題について報じていたが、今回、改めて同記事を再掲する。

---以下、再掲---

 大塚家具は2018年6月中間決算以降も、同年前月比の売上減少に歯止めがきかない。もはや坂を転がり落ちる石のような状態だが、社長の大塚久美子氏は依然として退任する姿勢を見せることはない。

 大塚家具は「お話しできることはない」(広報担当者)と説明しているが、取引先や金融機関からは不満の声が上がっている。すでに創業者との経営権争いとなった2015年3月の株主総会で久美子社長を応援した主要株主の一社、日本生命は株の売却を進めている。なぜ久美子社長は社長継続にこだわるのか。

「『大塚家具は大塚家のもの』という意識が強い。彼女としては『自分は大塚家の長子だ』という思いが強いのだろう」(大塚家に詳しい事情通)

 久美子社長は株主総会で脱同族経営を掲げて、父で元会長の大塚勝久氏を放逐したわけだが、久美子社長を背後で支えている主要株主は、弟や妹が役員を務める「ききょう企画」。矛盾しているようだが、これは大塚家の資産管理会社であり、129万2000株(6.66%)を保有する事実上の筆頭株主である。「大塚家の人間はきちんとした生活をしなければならない」という勝久氏の思いから、子供たちが株主配当で生活できるよう有償で譲渡されたものだ。

 ききょう企画は当初、勝久氏の長男の勝之氏を社長にするためにつくられた会社という面もあり、勝之氏が50%の株式を保有していたが、その後、勝之氏は大塚家具を辞めて独立。株式は兄弟間に均等に分けられたという。現在、久美子氏の妹、舞子氏が社長を務めているが、「久美子氏は子供のころから兄弟たちの母親代わりとして面倒を見てきた。兄弟の信頼は強い」(事情通)ということから、ききょう企画の実権は久美子氏が持っているとみられている。

ききょう企画と大塚家

 実は、そのききょう企画が保有する大塚家具の株式が今、大きな問題となっているのだ。ききょう企画は当初、大塚家具の株式(189万株)を、自己資金と自社が発行する15億円の社債で買い取るかたちをとっていた。ところが社債の償還期限を過ぎても返済がなかったことから、勝久氏側から提訴され、2016年4月に敗訴した。

 久美子氏側は189万株すべてを担保に三井住友銀行から15億円を借り入れ、金利を含めた17億円を全額返済した。担保設定された日は16年4月11日。この日の大塚家具は一株1454円。ききょう企画の保有する大塚株の担保価値は27億4806億円。15億円分の担保としては十分なものだが、こうしたケースでは、実質的な借り入れを必要とする人の連帯保証もとるのが一般的だ。「久美子氏も連帯保証をいれているのではないか」との見方が金融関係者の間の見通しだ。

 その後、同年5月12日には保有株式の約3分の1にあたる60万株分の担保権を解除、レオス・キャピタルワークスに売却した。この時の売却価格は一株1232円、計7億3920万円。三井住友銀行の借り入れは10億円まで減らしている。 

 さらに同年8月4日には三井住友銀行に担保として差し入れていた大塚家具の株式のうち、43万株を三菱東京UFJ銀行に担保として差し入れ、借り入れを行っている。借り入れはその後、三菱UFJフィナンシャルグループなどにも振り分けられ、現在は「三井住友銀行が5億円ぐらい。三菱UFJフィナンシャルグループは3億5000万円程度で、計8億5000万円程度になっている」(事情通)とみられている。

 しかし、担保の大塚家具の株価は一株280円(今月5日終値)と借り入れた時期の6分の1。総額ではわずかに3億6120万円。5億円近く担保割れを起こしていることになる。

「このままでは、ききょう企画は巨額の負債が弁済できず、連帯保証をしていれば久美子氏も借金を抱え込むことになる。ききょう企画は久美子氏の弟や妹たちの収入源だけに、一族の存続にかかわる問題。何がなんでも社長を続け、配当をし続けなければならないのではないだろうか」(事情通)

 しかし、このまま久美子氏が社長を続ければスポンサーはつかない。いずれは法的整理に追い込まれる恐れもある。もしそうなれば、残るのは借金だけだ。久美子社長には“四面楚歌”の歌が聞こえているのかもしれない。

(文=松崎隆司/ジャーナリスト、協力=山岸純/山岸純法律事務所・弁護士)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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