日本郵政グループのゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の大型上場が金融界に地殻変動をもたらした。上場企業になったことに伴う最も大きな変化は、機関投資家が株主になり「利益を拡大せよ」と圧力をかけてくることだ。
政府は日本郵政グループの株式売却によって得た資金を、東日本大震災の復興財源に充てる。そこで、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式の追加売り出しが必要になってくる。収益力の強化をテコに株価を上昇させることが急務となる。株価が低迷していては、追加売り出しなどできない。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、莫大な資産を効率良く運用して利益を拡大すべく、経営の舵を大きく切った。銀行と生保でダントツの運用資産を保有する両社が動けば、さざ波どころではなく大波が起こる。この大波は業界地図を塗り変えるほどのインパクトを持っている。
かんぽ生命は第一生命保険と業務提携
昨年11月、かんぽ生命が上場した際、生保業界ではかんぽ生命と最初に手を組む生保はどこかと話題になった。
かんぽ生命の運用額は82.6兆円で、日本生命保険の61.4兆円、明治安田生命保険の36.1兆円、第一生命保険の35.3兆円、住友生命保険の25.6兆円を大きく上回る(数字はいずれも15年12月末)。
かんぽ生命と最初に提携したのは、第一生命保険だった。両社は以前から協力関係にあり距離が近かった。
2012年、かんぽ生命による約10万件の保険金支払い漏れを金融庁が指摘、新しい学資保険の認可申請をしたばかりのかんぽ生命は窮地に立たされた。その時、保険金支払い業務のプロを派遣して、かんぽ生命を助けたのが第一生命だった。これが今回の提携を実らせた。
かんぽ生命と第一生命は3月29日、海外での共同投融資などを柱とする業務提携を発表した。かんぽ生命が運用資産のうち数千億円を第一生命が出資するDIAMアセットマネジメントなどに預ける。かんぽマネーの第一弾は100億円規模で、海外のインフラファンドに投じられる。
かんぽ生命の運用資産82.6兆円のうち、国債残高は45兆円と全体の55%を占めており、ゆうちょ銀行の40%より大きい。マイナス金利の導入で国債利回りが低下し、運用収益が期待できなくなってくる。そこで、第一生命のノウハウを使って国債中心の運用からの脱皮を目指すことになった。
両社が提携するのは3分野。海外での投融資のほか、ベトナムでの生命保険事業や国内での生命保険の販売、新しい商品の開発でも協力を進める。今後、資本提携にまで進むかどうかが焦点となる。