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スーパーマリオラン、一瞬でブーム終了…任天堂に深刻な失望感広がる

文=編集部
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スーパーマリオラン、一瞬でブーム終了…任天堂に深刻な失望感広がるの画像1「スーパーマリオラン」のプレイ画面

 任天堂が満を持して投入したスマートフォン(スマホ)向けゲーム「スーパーマリオラン」のブームは、一瞬だったようだ。また、社運を賭けて開発した新型ゲーム機「Nintendo Switch(スイッチ)」に対する株式市場の反応も冷ややかだった。

 スーパーマリオランは日本時間2016年12月16日、米アップルのスマホ「iPhone」やタブレット「iPad」向けに、150の国と地域で配信が始まった。出足は好調で、米調査会社アップアニーによると4日間で4000万ダウンロードを突破し、一時売上高は138カ国でトップに立った。だが、配信を開始して9日後の12月24日、そのすべての国で首位の座を明け渡した。

 スーパーマリオランが急速に勢いを失った理由について、ウォール・ストリート・ジャーナル(WJ)は1月2日、「『スーパーマリオラン』で遊びたい人は多いが、お金を出す人が少ないモバイルゲーム市場の厳しい現実を克服できなかった」と指摘した。

 スーパーマリオランは、最初の3ステージは無料で楽しめるが、その先へ進むには、1200円支払わなければならない「買い切り型」だ。これは大多数のモバイルゲームと異なる。買い切り型は、初速の売り上げが勝負となる。この時点での課金者の数でゲームの成否が決まる。

 モバイルアプリ動向調査会社、米Newzooによると今年1月4日現在、スーパーマリオランは配信開始後9000万ダウンロードされたが、課金者は3%強に当たる300万人にとどまった。

 一般には、無料ゲームをダウンロードしたユーザーが課金に応じるのは5%程度といわれている。それを考えると、スーパーマリオランの購入者は少ない。やはり1200円(海外版は約10ドル)の値段がネックになったとみられている。

買い切り型で売り上げを確保

 任天堂は自社のゲーム機だけにソフトを提供してきたが、この方針を転換。16年3月にスマホ向けアプリへの配信を始めた。スーパーマリオランは、マリオシリーズで最初のスマホ向けソフトである。

 社会現象にまでなったスマホゲーム「ポケモンGO」は、米国のベンチャー企業と任天堂の関連会社の共同開発だった。利益は両社に案分される。一方、スーパーマリオランは任天堂の自社開発のため業績に直結する。それゆえに投資家の期待は大きかった。

 配信前の16年12月12日、東京株式市場で任天堂の株価は一時3万180円と、3万円台の大台に乗せた。しかし、12月19日には2万4540円に下落、その後も2万4000円台に貼り付いたままだった。世界最大のスマホ市場である日本で、1200円の買い取り価格が敬遠されて3位にとどまったことが伝わり、失望売りにつながった。

 それでも、買い切り型ゲームは任天堂の収益を押し上げそうな気配だ。配信開始して半月の段階で課金に応じた人が300万人だったとすれば、単純計算で36億円の収入になる。米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」版の配信が始まれば、「スーパーマリオランの初年度の売り上げは300億~400億円程度になる」と予測するアナリストもいる。

 君島達己社長のモットーは「赤字のビジネスはやらない」である。買い切り型は、君島社長の考え方に沿った商品設計なのである。

スイッチは高すぎる?

 また、任天堂は今年3月3日にスイッチを発売する。スイッチは前社長、岩田聡氏の遺産である。15年3月、DeNAとの提携発表の席上、当時社長だった岩田氏は、まったく新しいコンセプトのゲーム機(コードネーム「NX」)の開発を進めていることを明らかにした。

 16年10月、NXがスイッチだと正式発表した。据え置き型と携帯型の両方として使えることから、「ハイブリット機」と報じたメディアもあった。

 任天堂はよく知られているように、創業家出身で3代目社長の山内溥氏が花札メーカーを世界的なゲーム機開発会社に変身させた。山内氏が後継者に抜擢したのが、ゲームを多数つくり「札幌の天才少年」と呼ばれた岩田氏だった。

 岩田氏は、「楽しさやおもしろさ」を追求して山内氏の期待に応えた。04年に発売した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」は、累積販売台数1億台を超えた。06年発売の据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)」も、累積販売台数1億台を超える世界的なヒット商品となった。

 だが、スマホの普及で、ゲームの主役はスマホの無料ゲームに移り、12年発売の据置き型ゲーム機「Wii U(ウィー・ユー)」は空振りに終わった。世界の累計販売台数1336万台(16年9月末時点)と任天堂の主力ゲーム機では過去最低となり、Wii Uの生産は終了することになった。

 任天堂はポケモンやマリオなど人気ソフトを多数有しているが、家庭用据置き型ゲーム機が経営の屋台骨を支えていることに変わりはない。スイッチは家庭用ゲーム機復活の切り札なのである。

 1月13日任天堂は、スイッチの販売価格を税別2万9980円とすると発表した。株式市場では「任天堂の株価(2万4000~2万5000円)が目安で、それより安ければ期待が大きいが、高すぎるとそれほど売れないかもしれない」といわれていた。市場予想を大きく上回る価格設定に失望感が広がった。

 案の定、1月13日の任天堂の株価の終値は、前日より1450円安い2万3750円まで下落した。16日も続落。前週(13日終値)との比較で845円安の2万2905円まで売られ、昨年11月以来の安値をつけた。

 1月14日に行われたスイッチの体験会には3000人のファンが集まったが、「販売価格にサプライズがなかった(割高)」と判定されているようだ。3月3日に同時発売されるソフトが8タイトルだけということも不安視されている。「ゼルダの伝説」「ドラゴンクエスト」「スーパーボンバーマン」「信長の野望」「ぷよぷよテトリス」など、人気シリーズの新作か、どこかで聞いたことのあるタイトルばかりが並ぶ。コントローラー「Joy-Con」で遊ぶという新しいゲーム機の特徴を生かしたタイトルは「1-2-switch」だけのようである。「販売時点でのラインナップとしては物足りない」という低い評価だ。17日の終値は前日比385円高の2万3585円と小康状態となったが、反発力は弱い。

スイッチが売れなければ買収される可能性も

 岩田氏の急逝を受けて、15年9月に君島氏が社長に就任した。君島氏は三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)出身で、任天堂では管理部門を担当してきた。ゲームに関してはズブの素人である。

 その君島氏がスイッチで勝負に出る。新型ゲーム機は、年末商戦をターゲットにして発売するのがセオリーだが、スイッチは3月3日の発売。発売時期に首を傾げる業界関係者は多い。

 山内氏と岩田氏が亡くなった今、もしスイッチが期待外れに終われば、任天堂が買収の標的になる可能性が出てくる。ポケモンやマリオなど人気ソフトの宝庫だから、米アップルなどの巨大IT企業をはじめ、こうしたソフトが欲しくてたまらないという企業は多いだろう。投資ファンドも虎視眈々と狙っているはずだ。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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