野村総研強制わいせつ事件、幹部を書類送検~隠ぺい目的の組織的脅迫行為も裁判所が認定
この支援者は名誉棄損裁判の中で、訴えられた女性以外の他の被害者については彼女たちの保護のために個人情報を出さずにいた。そのようなこともあってか、裁判所の判決において「(上海での事件以外は)被害について立証がされていない」「野村総研の体質的な酷さまで心証を受ける箇所については、そこまでの立証がされていないので、野村総研の主張を一部認める」という判決となり、訴訟費用割合で9割は支援者が勝利したが、1割のみ野村総研の要求が認容されている。
そんな民事裁判を野村総研が被害者女性や支援者に提訴している中で、実はY氏が「会社(野村総研)により被害者女性への謝罪を拒絶されていた」と供述しているとなれば、野村総研は事件隠ぺいのために恫喝的な民事訴訟を性的被害を受けた女性個人にまで行っていたことになる。東証一部上場企業の倫理観としては、批判は免れないといえよう。
●裁判所へ虚偽の主張か
また今回取材により、野村総研は警視庁の捜査がY氏に行われた後にも、裁判所へ「警察の捜査など受けている事実はない」という主張を行っていたことが明らかとなった。
これについて東京高裁の裁判で指摘された野村総研は、同社代理人でこの主張を行った森・濱田松本法律事務所の高谷知佐子弁護士、上村哲史弁護士、増田雅司弁護士の3名からなる弁護団を通じて「(裁判長からの質問は)野村総研が性犯罪の被疑者になっているのかを尋ねる質問であったので、そのような事実はないと説明した」という主旨の反論を行っていることがわかった。これは「性犯罪の加害者を野村総研とする捜査だと間違えていた、野村総研のY氏を加害者とする捜査だとは思っていなかった」という苦しい反論だ。このような誤解を大手法律事務所の弁護団がすることなど、ありえるのだろうか。都内の弁護士は次のように語る。
「裁判資料を見ましたが、弁護士が『性犯罪の加害者を法人かと間違えていた』などということはありえません。性犯罪の加害者が法人でなく個人なのは当然すぎます。ましてや森・濱田松本の弁護士3名が総がかりで間違えていたなどとは、まず考えられません。少なくとも捜査機関の捜査に対して真摯でなければいけない企業の態度として、あまりにも不適切ではないかと思います。大手上場企業、そして大手法律事務所弁護士の倫理観として大きな問題ではないでしょうか」
野村総研はこれまで、「犯罪の可能性について把握していなかったのか」との筆者の取材に対し、「当社社員がそのような犯罪に係わったという事実はない」との回答を寄せている。そして事実が明らかになり、警視庁などの捜査を受けた上でも、いまだに被害者女性側への謝罪なども一切行わないという姿勢をとっているのは、企業としてあまりに不誠実ではないか。
すでに野村総研は組織的脅迫を行っていた事実が裁判所で認定されており、その対応についての責任も問われかねない事態となっている。さらに、一連の脅迫行為の真の目的は、中国での特別背任未遂等の疑いのある事件隠ぺいではないかという疑問も広まっている。
今後の東京地検や警視庁の動きに期待したい。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)