吉田氏は、経営会議などでは歯に衣を着せぬ発言で知られている。VAIOブランドのパソコン事業からの撤退やテレビ事業の分社化(ソニー全額出資のソニービジュアルプロダクツを設立)は、すべて吉田氏が中心になって取りまとめた。吉田氏の社長昇格は既定路線とみられていたが、「無配転落で平井氏の退陣、吉田氏の昇格の時期が早まるだろう」(同社関係者)との見方もある。
ソニーの株価は今後、下降線をたどる可能性も高い。9月18日の東京市場の寄り付き株価は258円安の1865円。1844円(279円安)まで下げ前場の終値は1914.5円(209円安)だ。出来高は午前中で5745万株。前日は1日で800万株だったことから、失望して持ち株を売った個人投資家がかなりいたことを数字が示している。
●示されない、具体的な再建策
平井氏は12年4月の社長就任の際、「(スマホ市場で)韓国サムスン電子、米アップルの2強に続く世界3位を目指す」と宣言した。規模(数量)を追求する方針で15年3月期も前期比28%増の5000万台を販売すると公言してきたが、計画を発表してわずか3カ月後の14年4~6月期時点で販売目標を4300万台に下方修正した。直近の世界シェアは3%、24%台のサムスン、11%台のアップルだけでなく6%台の中国・華為技術(ファーウェイ)にも引き離され、上位5位にも食い込めていない。
経営再建の柱としているスマホ事業で苦戦が続き、モバイル端末事業に携わる人員の約15%に当たる1000人を削減するが、人員削減などの費用は今回の業績予想には繰り込まれておらず、業績の一段の下方修正やスマホの販売台数の下振れが考えられる。
17日の会見で平井氏は「私が中心になって不退転の決意で業績を回復していくことが一番の責任」と強調し、引き続き社長として経営再建を進める考えを示しているが、具体的な再建策は示されず、証券アナリストの間には失望が広がった。大手電機各社の業績回復が鮮明になりつつある中、ソニー独り負けの状態がしばらく続きそうだ。
(文=編集部)