筆者は、海外に出かけると必ず足を運ぶ場所がある。現地の人々の食生活がうかがえるスーパーマーケットだ。イタリアならパスタ売り場の広さに目を奪われ、香港に行くと「出前一丁」(日清食品)をはじめとするインスタントラーメンの陳列量に圧倒される。
いま筆者が拠点を置いているタイの首都・バンコクの量販店で驚いたのは、日本のお菓子の存在感だ。米菓からチョコレート、スナック菓子、ビスケット、ガム……実に幅広いカテゴリーに及んでいる。
日本のお菓子は、海外でこんなにも愛されている。「おいしさ、パッケージの美しさ・使いやすさは、タイ人にも支持されているのだ」。そんな思いを改めて強くした。
しかし、広大なお菓子売り場に並ぶ商品には、ちょっとした違和感がある。日本語が書いてあるから日本の製品かと思ったら、「なんちゃって日本のお菓子」が多いのだ。
商品名に「独特の味 雪の花」とある米菓を確認したところ台湾メーカー製で、また、「ジャパニーズライスクラッカー どうぞ」という商品はタイのメーカー製だった。このように、日本語を表記した他国製品が氾濫しているのだ。そのため、おかしな日本語のお菓子も非常に多い。パッケージは日本語表記で、EUROという名のタイのメーカーが作っているお菓子も存在する。
江崎グリコの「ポッキー」にそっくりな「ベツ」もタイ製だ。箱を裏返してみると、ご丁寧に「せいぞうねんがっぴいょうみきげん」というおかしな平仮名まで表示されている。「しょうみきげん」の「し」と「い」を間違えているあたりはご愛嬌だ。
なぜ、日本の製品ではないのにわざわざ日本語を表示し、日本の製品であるかのように装っているのか。
その理由は明らかだ。日本製品への信頼感が、タイの消費者の間でしっかりと根付いているからだ。筆者がタイ語を教わっているタイ人の教師たちも、口をそろえてこう言う。
「日本の製品は安心だし、おいしいからね」
自動車、バイクなど、重工業製品で培ってきた日本ブランドへの信頼感は、食品のような軽工業製品にも確かに継承されている。図々しくも楽しい「なんちゃって日本のお菓子」は、日本のお菓子への高い評価の裏返しだ。タイ・ローカルのメーカーや台湾、中国の海外進出組にとって、日本語はイメージアップの武器として機能している。
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